【完結】ゲーセンダンジョン繁盛記 ~魔王に異世界へ誘われ王国に横取りされ、 そこで捨てられた俺は地下帝国を建設する~

アンミン

文字の大きさ
2 / 203

02・異世界からのスカウト

しおりを挟む

「……ンでこんな事になった」

俺、仁務博人《じんむひろと》は窮地に立たされていた。

四十歳を目前に脱サラを目指し―――
小さな地方都市、そこで役所が企画した、
『新規ビジネスプラン』とやらの公募に応募。

要はアレだ。
過疎化と少子化が進む地方において、
何でもいいから盛り上げるネタが欲しいって
ヤツだ。

そこで俺は―――
ビジネスホテルのような宿泊室に、
アーケード・家庭用・PC問わずゲーム機を置いた
フロアを用意。

つまり泊まれるゲームセンター、ネット喫茶の
ようなものを考えたのだ。

何がどう間違ったのか、それが通ってしまい……
協力と補助金を得て俺は動き始めた。

家庭用ゲーム機はいろいろと権利上の問題が
あったが、それ以外はスムーズに準備が進み、

さあ開業!
と同時に世界規模のパンデミック襲来・炸裂。

長引く感染対策に景気低迷……
お先真っ暗、というのが今の俺の状況だ。

なまじこだわって、軽食の自動販売機も導入
したため―――
赤字は増える一方。

唯一の救いは、自分が『新規ビジネスプラン』の
第一号とかで……
役所がうまくいかなかった事を隠したいためか、
停止を拒み続けているという事。

もちろん問題が無いわけじゃない。
このビジネスホテル、地上四階建てなわけだが、
今のところ俺一人だけで回している。

当初スタートした時は、それこそ雇用対策もあって
十名ほどいたものの……
赤字続きの事業で雇い続けられるわけもなく。

また、同施設に入っていたコンビニや
ドラッグストア、コスプレ喫茶も早々と撤退……

たまに来る清掃員や業者を除けば、実質俺一人で
ホテル・ゲームセンターの業務を行っていた。

「飲食店すら潰れまくってんのに……
 ホテル宿泊なんてまずねーよな。

 ああ、コ〇ナの無い世界に行きてぇ……」

「ではこちらへおいでくださいっ♪」

は?
何だ、今の声は。
女の子のようだったけど。

カウンターで突っ伏していた頭を上げるが、
誰の姿も見えず―――

「『ころな』とやらが無い世界に
 来てみませんかっ?」

「いや、行って何をしろってんだ?」

姿の見えない声の主に向かって会話を試みる。

普通ならおかしいと思う場面だろうが―――
何よりヒマだったのと、半ば思考が現実逃避に
向かっていたため、対応してしまった。

「えーと、アナタはこの塔のボスですよねっ?

 面白そうな道具や、美味しそうな料理も
 出て来ますし……
 こっちの世界でもそれをやって頂けたらなーと
 思いましてっ」

「……雇ってくれるっていうのか?

 まあ、どちらにしろここよりは将来性が
 あるだろう。
 話くらい聞いてみても―――」

「ありがとうございますっ!
 ではこちらの『世界』へっ!!」

その答えと同時に―――
俺の体は意識を手放した。



「……ここは?」

目覚めた時、俺は真っ暗な空間にいた。

不思議と怖くは無いが、状況の整理に脳を
フル回転させていると―――

目の前に、黒いマントをまとった―――
ロングの赤髪の女の子が現れた。

年齢は女子高生くらいに見え―――
というか、なぜか学生の制服を着ているので
そうにしか見えない。

ただ、その目は特殊なコンタクトでもして
いるのか、猛禽類もうきんるいか野生動物のそれを思わせる。

「この度はアタシの求めに応じ、どうも
 ありがとうございましたっ」

「いや何で過去系?
 俺は『話くらい聞いてみても』って
 言っただけだが?」

そこで彼女はキョトンとして首を傾げる。

「不思議そうな顔すんな!」

「ええぇ~……
 だってぇ、前向きだったじゃないですかぁ」

そこで俺は、恐る恐る緊急にして最大の疑問を
彼女にぶつけてみる。

「俺は、元の世界に帰る事が出来るんだよな?」

「魂だけで良ければ?」

「死亡宣告まで早過ぎるだろテメェ!
 そんな感じはしていたけど!!」

いろいろとすっ飛ばし過ぎだろうが!
怒る俺に彼女は多少、申し訳なさそうな
表情になり―――

「だって、こっちの世界に連れて来るなら、
 アタシにはそれしか出来なかったんですよぉ~」

「つーか、元の世界の俺はどうなってんだ?」

「ええとですね……」

彼女はメモ帳のようなものを取り出すと、

「えーと、心臓マヒで死んだ事になってます。
 それで施設の責任者も消えたという事で、
 あそこは取り壊され後に納豆工場が建てられて」

「そこまで知りたくもなかったけど、
 せっかくだからありがとう」

って事は……
もう俺が死んでから、あちらはだいぶ
経過しているって事なのか。

となると、今さら生き返ったところでなあ。
体もすでに火葬されているだろうし。

「事後承諾もいいところだが―――
 仕方がない、諦めるよ」

俺は彼女の申し出を渋々受け入れると、
そこで彼女の顔はパァッと明るくなり、

「ありがとーございますっ!!

 あ、申し遅れました。
 アタシはメルダと言いますっ」

「俺は仁務博人だ。

 それで、俺は何をすればいい?」

すると彼女はまたキョトンとした顔になり、

「え? ですから―――
 あっちにいた時と同じ事をしてもらえれば」

「あっちってさあ……
 同じモンがココにあるのか?」

そこでメルダはコホン、と咳払いし、

「ヒロト様には―――
 ダンジョン管理者として、『再現』スキルを
 付与いたしましたっ。

 ですので、たいていの物はこちらでも
 用意出来ると思いますですっ!」

ん? ダンジョン管理者?

「……ダンジョンって、魔物とか出る?」

「そうですけど?」

「つか魔物サイドなの俺!?
 ていうか、ゲーム機とか何の役に立つ!?」

魔物という事は少なくとも人間サイドでは
無いだろう。
それでゲーム機でダンジョン管理?
謎が謎を呼び謎を呼ぶ。

「あー、ダンジョン管理者はね。
 自分でクリア条件を設定出来るの。

 でも最近は―――
 どんな魔物やトラップを用意しても、
 似たり寄ったりで攻略方法が出来ちゃって
 いるのよ。

 それで新しい風を吹き込んで欲しいと思って、
 別世界の人間を呼ぶ事にしたの!」

そんな理由で呼び出されたのか俺。
怒りの感情より先に呆れてしまう。

「でも、人間が敵って事だよな?」

「人間だけってわけでも無いですよー。
 魔族同士で争っている事もありますし」

「んあ? 魔族?」

また初耳のワードが出てきたな。

「はいー。
 人間と同じくらい知能のある生物です。

 アタシ・メルダはとある魔族の長!
 魔王なのですよ!
 そこで新たなダンジョン管理者として、
 ジンム・ヒロトさんを呼んだというわけです!」

ようやくここで、大まかな事情を把握出来た。

要は、従来のダンジョンに危機感を覚え―――
新しい事をやってくれそうな人間を、別世界から
召喚したって事か。

「俺を呼ぶ時はヒロトでいい。

 そしてお前さんは今、結構ヤバめってわけか」

「スゴイですね!
 どうしてわかったんですか!?」

わからいでか。
ため息と一緒に次の質問へと移る。
自分の生存確率を少しでも上げるために。

「しかし、下手すれば殺されるって事だよな?
 俺自身は戦う事なんて出来ないぞ?
 ずっとダンジョンの奥で引きこもっていれば
 いいのか?」

「あ、それは大丈夫ですー。
 ダンジョン管理者にはダンジョンコアという
 物がありまして。

 それを破壊されない限り、傷付く事も
 死ぬ事もありませんから」

なるほど。
最深部をガチガチに固めておけば、すぐに
どうこうという事はなさそうだ。

「では、あちらの世界へ行く前に―――
 外見をカスタマイズしておきましょう」

「ん?
 まだメルダの世界じゃないのか?

 それにカスタマイズって……
 別に俺はこのままでも構わないが」

すると彼女は首をブンブンと左右に振って、

「こちらはまだヒロトさんの世界です。
 あちらへ行く前に肉体を再構築します。

 人間の召喚術ならそのまま出来たと思うん
 ですけど……(超小声)」

何かボソッと彼女がこぼした気がするが。
気が付かなかった事にしておいた方が、
精神衛生上楽だろう。

「それに、警戒される外見だとヒロトさんも
 困るでしょう?」

「うーん」

確かに、あちらからすれば俺の方が
異世界人だしな……
目立たない格好にするのは必要か。

「おし、そのヘンは任せるわ」

「わっかりましたぁ!

 では再構築後、転移を―――」

そこで俺の視界が歪んだ。
どうやら、再構築とやらをしているようだ。

意識が遠くなっていくような気がする。
目が覚めたら異世界なのだろうか?
と考えていると、

「……えっ!? な、なに?

 ちょっ、ちょっと待って!
 それはアタシが呼んだんだから!!
 それにまだカスタマイズ途中で……
 と、とにかく返しなさーい!!」

メルダの怒鳴り声と共に、俺の意識は深く
沈んでいった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...