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05・魔境の森の奥で
しおりを挟む「やっべーな……」
森の中を歩きながら、俺は独り言のように
つぶやく。
何とか追手から逃れたのはいいものの、
あの兵士の慌てようからすると―――
この森はかなりヤバい魔物がいる事になる。
だが、俺はその心配はしていなかった。
例えば、緑の地獄と称されるブラジルの
アマゾンだが……
実は危険な野生動物との遭遇率は極めて低い。
その場所を生息地としているという事は、
エサが豊富にあるという事。
そんな生態系を保つには、広大な自然と面積が
必要になる。
そのため、遭遇するのはよほど運が悪くないと
難しいのだ。
だから今俺が最も心配しているのは―――
脱水症状と飢え。
それによって動けなくなる事だ。
だが、水や食料がそう簡単に手に入るとは
思っていない。
動けなくなっても、多少休めば回復する。
だから最優先に確保すべきは、安全地帯。
木の樹洞、洞窟、岩山の裂け目でも構わない。
とにかく早くどこか、身を隠す場所を
見つけないと。
そして俺は、森の中をさ迷い続けた。
「おっ、アレは……」
一時間ほども歩き続けただろうか―――
うっそうと茂る木々の中、小高い岩山が視界に
入ってきた。
ちょうど下には入り口のように、人一人入れそうな
裂け目があり……
これなら、大型の動物はまず入って来れまい。
ひとまず俺は、中を調べてみる事にした。
……暗いな。
まあそれは当然だろう。
こんな森の奥深くの岩山の中に、しゃれた
照明なぞあるわけもなく。
闇に目を凝らし、外から差し込むわずかな
光を頼りに先を進む。
「……誰!?」
「!?」
思わず身構える。
まさかこんなところに人がいたのか!?
俺は入り口から入る光を妨げないよう、
体をずらした。
すると……
「子供……?」
「……えっ?
でもお兄ちゃんだって」
そこには、十人ほどの小さな子供たちが
固まっていた。
つーか今自分も子供だったっけ。
あちら側からのツッコミでそれを自覚する。
しかし、お城の中ではろくに鏡も見せて
もらえなかったからな……
自分が今どのくらいの年齢なのかはわからない。
だが、今目の前にいる子供たちはどう見ても一桁、
多くても10才くらいなのは間違いない。
その子たちから『お兄ちゃん』と言われるのは、
それより年上と見ていいだろう。
「君たち、どうしてこんなところに?」
気を取り直し、情報収集に努める。
「いきなり、知らないおじさんたちに
連れて来られたの。
馬車に乗せられて、それで……
ここにいるのはみんなそう。
馬車が走っている途中で倒れちゃったから、
その時、みんなで逃げたの」
人さらい、もしくは親に売られたって
ところか。
あのクソ王女も俺を……
『ペットにしても』とか言っていたし、
この世界、人間の売り買いは普通にあるのだろう。
そして馬車が転倒した機に逃げ出したと。
「お水はどうしてたの?」
「ここ、奥に湧き水があるから」
「食べ物は?」
「落ちている木の実とか集めて、それで」
口々に俺の質問に素直に答える。
しかし、まごう事無きサバイバル生活。
よく生きてこれたなー。
改めて周囲を見渡すと、離れた場所に一人、
体を横にしている子が見えた。
「あの子は……?」
子供たちの中では一番の年長者であろう少女が、
言いにくそうに、
「……昨日から、熱が出て休んでいるの」
それを聞いた俺は思わず、倒れているその子に
近付く。
「う……っ」
どうやら四・五才くらいの男の子のようだが……
熱い。完全に子供特有の熱出しだ。
姉の子供たちの面倒を見た事があるが―――
これはすぐ、ベッドか布団で休ませなければ
ならない状況。
薬も、栄養も必要だ。
だが、元いた世界の俺のビジネスホテルなら
ともかく……
ここじゃまともに休ませてやる事も出来ない。
何とかしなければこの子は死ぬ。
絶対死ぬ。
わかっている。
半ば無理やりこの世界に連れて来られた俺が、
この子を救う義理なんてない。
それでも―――
アラフォーだった人間として。
元の世界のモラルとして。
小さな命が失われるのは見過ごせない。
しかし何が出来る?
今あるのは湧き水と木の実、それが手に入るだけ。
俺自身、着の身着のままで―――
しかも体は子供。
わかっているのは、どうも聴覚が通常より
鋭くなっただけ……
くそ、どうにか出来ないのか……?
何がダンジョン管理者だ―――
地球にいた時より何も出来ないじゃないか!
「…………」
落ち着け、落ち着くんだ。冷静になれ……
俺は岩肌に手をかけて考える。
熱が出ている事自体は別におかしくはない。
これくらいの子供ならよくある事だ。
必要なのは薬、休息、栄養。
こんなところに薬は無い。
休息は、もっと休める場所を作るか移動させる。
何より栄養―――
俺が狩りでもして、何か動物性たんぱく質を
持ち帰れば……!
――――――――――――――――――――――
『ここをダンジョンに指定しますか?』
→はい
いいえ
――――――――――――――――――――――
……は?
いきなり俺の前―――
岩肌に、メッセージウィンドウのような物が
出現した。
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