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67・今後の運営と方針について
しおりを挟む「ではこれより―――
ダンジョン運営会議を始めたいと思います」
昼食後、子供たちを昼寝させた後……
俺とリナ、そして複数の大人組は、
デラックスルームがあるエリア、そこへ新たに
カスマイズで増築した一室……
会議室へと集まっていた。
メンバーは合計九名。
・俺とリナ
・パトラとコマチ
・クラークさんとミントさん
そしてハーレイドッグ子爵家の三人……
・ガド子爵様
・マリア子爵夫人
・アマンダ騎士
ローラさんはロイ様のお世話を、
プリムちゃんは子供たちの面倒を見るため、
それぞれの部屋で待機してもらっている。
議題は、ハーレイドッグ子爵家を交えての
今後の事。
病人もいるので、今のところそういう話は
落ち着いた後でとも思ったが、ロイ様の容態が
安定したのと……
また自分の狙いと目的を正確に知ってもらうため、
会議に参加してもらう事にしたのである。
「しかし方針と言っても……
取り敢えずヒロト殿の秘密を守る事と、
あの母娘に手を出す連中に圧力をかける―――
それでまとまったと言っていたではないか」
アマンダさんが率直に疑問を口にする。
「当面はそうですが、最終目標に向けての事も
話しておいた方がいいと思いまして」
そして全員が注目する中、俺は言葉を続ける。
「まず当初お話しした通り……
俺は人間・魔族どちらにも肩入れしません。
基本的にはこのダンジョン、そしてこの
ダンジョン産の商品を扱って利益を出し、
発展していきたいと思っています」
「まあ……確かにこのダンジョンの機能、
そして食事については堪能した」
「薬やポーションの類、熱を冷ます道具も
見ました。
入浴においては髪や体を洗う液体も……
この国のどんな王侯貴族であれ、
あのような物は手に入らないでしょう」
ハーレイドッグ子爵夫妻が、追認するように語る。
「商売や取引をするにしても、出来れば
どちらともやっていきたいと思っています。
ですが、中立という立場を簡単に保てるとは
思っていません。
それなりの武力が必要だという事も
わかっています」
武力無き外交は無し―――
軍事力の裏付けの無い発言は、ただの
意見表明だ。
「そちらはおいおい、パトラやコマチのような
人員を増やしていきます。
そしてまず第一段階として……
ダンジョンに入る冒険者に利益を与えるのです」
「確かにこのダンジョンであれば―――
持ち帰る品によっては、ベテラン冒険者より
稼げるかもしれん。
だが、それで本当に良いのだろうか?」
ガド様が、アゴに手を当てながら考え込む。
「と言いますと……」
アマンダさんが子爵の顔をのぞき込むように
聞き返すと、
「楽に稼げるダンジョンがある、それも
身の危険などない―――となると、
冒険者が集中するのは元より、それを
目当てに冒険者になろうとする者が
殺到するのではないかね?」
さすがにこの街を治める領主だ。
それがもたらす影響や結果は推測出来るらしい。
「それの何が問題なのですか?」
今度は奥さんのマリア様が口を挟む。
すると俺の妻であるリナも参戦して、
「つまり、冒険者ばかりになってしまう事を
心配しているのではないでしょうか。
こちらはそれでいいとしても―――
働き手が一つの職に集中してしまうのは
あまりいい事ではないと、父から聞いた事が
あります」
リナは宿屋の娘だったからなあ。
そのお父さんも当然、商売に関してはある程度
理解している部分もあったのだろう。
「お嬢さんの言う通りだ。
あまり特定の職に人が集中し過ぎると、
他の職が廃れたり、またその職がいずれ
立ちいかなくなった時に大混乱が起きる。
長い目で見れば、経済的な危険をはらんでいると
言わざるを得ない。
それは、『どちらにも肩入れしない』という
趣旨から外れるのではないか?」
人の上に立つだけあって、的確に矛盾点を
ついてくる。
商売はしたい。敵対はしない―――
しかし相手を経済破綻に追い込む、もしくは
そのような方針で動けば、それは明らかに
『敵』だろう。
「そうですね。
確かにそれだけ聞くと、人間側と敵対している
ように見えてしまうでしょう。
ではここで改めて俺の考えを伝えます。
方針は2つ。
1つは、『中間層の強化』―――
もう1つは、『独自商品の供給と流通の確保』
です」
「!」
俺が言わんとしている事を察したのか、
ガド様は一瞬表情を強張らせ……
それに構わず俺は、同席していた冒険者の方へ
顔を向ける。
「クラークさん、多分、冒険者で一番高い
買い物は武器でしょうけど―――
それはだいたいどのくらいの割合で
買い換えますか?」
筋肉質の戦士タイプの青年は少し考え、
「今の剣はもう5年来の相棒だな。
時々鍛え直してもらっているが。
そうそう買えるシロモノじゃ無いし、
あと2・3年はもたせるつもりだ」
次いで俺は、シーフ風の女性に視線を移し、
「じゃあ次はミントさん。
この街における冒険者と一般労働者の
割合って、どれくらいでしょうか」
「10人に1人、ってところじゃないかねぇ。
そもそもこの街出身の冒険者ってほとんど
いないと思うよ。
もしそうなら、何かしら街の中で何らかの
職についているだろうし」
まあこれは想定通りだ。
誰が好き好んで、危険なダンジョンや―――
魔物討伐、常にリスクのある肉体労働を選ぶ
かという話。
つまり冒険者とは、少数で選択の余地の無い
『職業』、という事である。
俺は再びガド様の方へ向き直り、
「子爵様。
これから、『大金持ち』とまではいかなくても、
そこそこ余裕のある冒険者が増えるでしょう。
彼らは独自の商品を持っており……
それらは冒険者を通してしか買う事は出来ない。
するとどうなりますか?」
彼は両手を両ひざの上に置いて、
「なるほど―――
フトコロに余裕のある者が増えれば、
それなりの経済効果は見込める。
そして冒険者しか手に入れる事の出来ない
品であれば、流通は限られる。
もともと冒険者は職業として安定せず、
信頼も薄い。
他の者がなろうとするにはハードルが
高過ぎる。
ましてや『稼げる場所』を口外する者など
おるまい」
「冒険者に関しては、口コミと言うか
紹介制にしようと思っています。
当面はクラークさん、ミントさんに、
ダンジョンに入ってもいい冒険者を
選別してもらおうかと」
「まあ妥当であるな」
「眷属にはしないの?」
巨乳の魔狐と、メイド姿の銀猫が俺の言葉に
反応するが、
「それはよほど信頼した人しかしたくない。
ゆくゆくは組織の中の、幹部になって欲しい
人とか―――」
実際、これは本音だ。
口止めのための側面もあるが、そもそも自分に
そこまでの管理能力があるとは思えない。
それにいったん仲間になってもらったら、
それなりに報いたいしな。
「ふむ、すると―――
私たちはお眼鏡に叶った、という事かな」
「そのようで」
ガド子爵様の言葉に俺が返すと……
室内は苦笑交じりの笑いに包まれた。
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