【完結】ゲーセンダンジョン繁盛記 ~魔王に異世界へ誘われ王国に横取りされ、 そこで捨てられた俺は地下帝国を建設する~

アンミン

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74・別れの日

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「妻と息子が世話になった。
 では今後とも、よろしく頼む」

エンテの街―――
そこのスラム街の一角の宿屋で、精悍せいかん
顔つきをした身分の高そうな男が一礼する。

「いえ、こちらこそよろしくお願いします」

俺が返礼をしたのは……
ガド・ハーレイドッグ子爵様。
そして奥方のマリア様と護衛のアマンダ様も、
同様に頭を下げる。

一緒にいたロイ様はアマンダ様に抱かれ、
泣き疲れて寝ていたが……
これには理由がある。

熱を出した彼が運び込まれて五日目。

容態がぶり返す様子もなく、晴れて『退院』と
なった少年は、屋敷へと戻る事になった。

そして見送りに出たのは俺とパトラ、
二人だけ。

実はロイ様が帰る日になって―――
ダンジョンにいた子供たちが、彼やマリア様、
アマンダさんと離れるのを泣いて嫌がり
駄々だだをこね、またロイ様もギャン泣きで、

ハーレイドッグ子爵家の面々は元より……
俺やリナ、ローラさんにプリムちゃん、
クラークさんやミントさんまで加わって何とか
なだめ―――

ようやく子爵家の方々は帰途についたのだった。

ぬし、大丈夫かの?」

「まあ、ある程度覚悟というか予想は
 していたから……

 取り敢えず下に戻って休もう」

そして俺はパトラと一緒に宿屋―――
その地下にあるダンジョン・休憩エリアへと
戻っていった。



「あ、ヒロト様」

「どうも」

エレベーターから出ると、ちょうどそこで
戦士とシーフ、冒険者の男女と出会い、

「お疲れ様です、クラークさん、ミントさん」

「みんなはどうしているかや?」

その質問に、やれやれという感じで苦笑し、

「今しがた、ようやく寝たところです」

「たった5日だけど、子供同士だもん。
 そりゃあ仲良くなっちゃうし、
 別れも辛いモンよ。

 田舎のチビどもを思い出しちゃったなあ、
 アタシも」

しみじみと語るミントさん。
そういえば、彼女は田舎から出て来たって
言ってたっけ。

二人とも孤児って言ってたし……
育った環境が似ているから、思うところも
あるのだろう。

「ここじゃ何ですから……
 ロビーでお茶でも」

俺の言葉に冒険者二人組は目を輝かせ、

「そうですね」

「ゴチになりまーす!」

そこでパトラがついっ、と俺から離れ、

「では主。
 わらわは子供たちの様子を見て
 まいりますゆえ」

と、彼らと交代するように廊下の奥へと
消えて行き、

「あ、ヒロトお兄ちゃん!」

入れ替わりのように、妻であるリナが
やってきた。



「あ~うまっ。
 このちょことかいう菓子、たまらんねえ」

「このすなっく、という棒もなかなか。

 ヒロト様の世界じゃ、子どもたちはこういう物
 食べているんですか」

ミントさん、クラークさんが俺の用意したお茶と
お茶請けを愉しみつつ―――

リナは俺の隣りに寄り添いながらお茶を飲み、
情報共有する。

「ええ、まあ。それより……
 子供たちの件、お疲れ様でした。

 しばらくしたらハーレイドッグ子爵家が、
 人員を寄越してくるはずなので」

「元騎士なら問題無いかな」

「冒険者登録した方が無難だけど……
 身元保証がハーレイドッグ子爵家なら
 大丈夫か」

自然に受け入れる彼らに、俺の方で不安や
疑問をぶつけてみる。

「騎士より強い冒険者の人っていないんですか?
 あと徒党を組んで、悪さをする人とかは」

すると二人とも微妙な表情になり、

「そこまで強いとなると、フツーに仕官か
 どこからか引き合いが来ていると思う」

「その日暮らしから抜けられるんだから、
 そりゃ冒険者なんてバカバカしくて
 やってられないよ。

 群れる連中はいない事も無いけど、
 信用出来るヤツって少ないからね。
 アタシとクラークのように、10年来の
 付き合いとかじゃ無けりゃ」

なるほど。
強くなればどこかの貴族に雇われるし、
そもそも根無し草の集団みたいなもの。
そこに強固な信頼関係を築くのは無理があるか。

「ともかく、一段落しましたので―――
 今日はここでゆっくりお休みください」

「じゃあ今日のところは……」

「お世話になりまっす」

そういうクラークさん・ミントさんの様子は、
どこかよそよそしく、

「ていうか、2人とも―――
 もうここにずっと泊ってもいんですよ?
 せっかく拠点が出来たんですし。

 宿代だってバカにならないでしょう?」

そう言うと彼らはばつが悪そうに、

「そうしたいのはやまやまなんですけどね。
 俺たちが駆け出しの頃から、世話になっている
 宿屋がありまして」

「たまに顔見せないと、心配されちまうし」

そこで、元宿屋の娘だった嫁さんが割って入り、

「ウチは小さな村の宿屋でしたけど……
 拠点にしてくれている人たちって、決まって
 いましたしね」

あー、そういう事か……

常連ともなれば、そこでの人間関係も
あるだろうし―――

確かに無料で泊れる場所が出来たからって、
それまでお世話になっていた宿屋を引き上げる、
というのは不義理だよなあ。

「それなら、今までの恩返しも含めて……
 商品とかをここから提供してもいいのでは?」

「え? でも」

「冒険者以外には高く売るって」

意外そうに聞き返す冒険者の男女を相手に、
俺は片手を振り、

「それはあくまでも、他の商売をなるべく
 価格破壊で邪魔しないためです」

あと、恨みを買わないようにというのもある。
可能な限りトラブルや衝突を避けようとする
日本人気質でもあるが。

「クラークさん・ミントさんがここで購入
 した物を、どういう値段で提供するかは
 お2人次第ですよ。

 それに、物を売るだけが恩返しの方法でも
 無いですし」

それを聞いた二人の顔は、パアッと
明るくなり―――
恩返しの方法について相談に乗る事になった。

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