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140・勇者Side14
しおりを挟む「おいしーい!
夢にまで見た和食……!
ラーメン、餃子、チャーハン……!!」
「弥月ちゃん、それ中華」
言葉の通りラーメンセットを頬張る
ツインテールの女子高生に、私はツッコむ。
「あぁ、米がうめえ……!
っ! んぐぐ」
「落ち着け頼音。
ほら、水」
ごはんをのどに詰まらせた幼馴染の友人に、
熊谷さんが水を差し出す。
「すまねえ、琉絆空。
でもやっぱり俺って日本人だったんだなあ」
「コンビニのお弁当がここまで美味しいとは。
改めて日本では食生活が豊だった事を実感
するよ」
島村さんの言葉に武藤さんが続き、
「王宮の料理も美味しいけど、庶民の口には
なかなか合わなかったのよ。
こうしてコンビニの料理を食べている方が、
ずっと落ち着くわぁ」
白波瀬さんも丼ものの食事をかきこみながら、
満足そうに語る。
ここは王宮内にある、女性騎士団の拠点。
いつもの勇者同士の定例会の際に、私・
武田裕子は事情を説明し―――
それぞれ時間を作ってもらって、みんなをここへ
連れて来た。
私たちが召喚された時にいた少年……
ジンム・ヒロトがまだこの世界にいた事。
彼は王女様を信用していない事。
明らかに元の世界へ戻す雰囲気では
なかったので、移送途中で逃げ出した事。
元は魔王メルダに召喚されていて、
ダンジョン管理者として、地球の施設を
再現出来る能力を持っている事。
今は各地にダンジョンを持っている事など……
それを全員と共有したのだ。
「でも武田さん。
その子、魔王に呼ばれたのだとしたら、
どうして魔族領に行ってないの?」
ストレートの長髪を持つキャリウーマンふうの
女性が、詳しく聞いてくる。
「魔族領でクーデターが起きたようです。
今は別の魔王が彼女の魔族領を支配しており、
魔王メルダはヒロト君のダンジョンに
身を寄せている……というか……」
「??
何か歯切れ悪いね、武田ッチ」
加奈ちゃんが首を傾げ、それを見た
女性騎士団長が代わりというように口を開く。
「あー、その。何だ。
今現在、魔王・メルダは―――
ヒロト殿の伴侶となっていてな」
「あ?」
「へ?」
ブラウンの短髪に切れ長の目をした、
ルラン女性騎士団長の言葉に……
島村さんと熊谷さん、大学生二人が思わず
間の抜けた声を出す。
まあそうだよね。私も最初聞いた時、何が何だか
わからなかったもん。
しかも―――
「今、ヒロト殿にはそのメルダと、こちらは
人間の少女だが……
リナという妻もおる。
他にも人間の協力者がいるが」
続けての彼女の説明に加奈ちゃんと葵さんが、
「え、待って。
チラッとしか見なかったけど、あの子
まだ小学校高学年くらいだったんじゃ」
「いっても中学生くらいでしょ!?
え? もしかして黒髪黒目の容姿って
ここじゃモテるとか?」
混乱する女性陣に、私は補足する。
「結婚と言っても、子供の言う事ですし」
そこでようやく日本人組に納得の表情が浮かぶ。
私は続けて、
「そのヒロト君ですけど―――
最初は誰かわからなかったくらい、外見が
変わっていました。
魔王メルダさんに、好みの外見に
変えられたとかで……
真っ白なセミロングの髪をしていて、
女の子かと思ったくらいですから」
「まあどちらかと言うと、『食われた』
みたいだったが……ゲフンゴホン。
そんな事より―――
勇者殿たちは今後どうするのだ?」
ルランが本題を切り出し、場が一瞬沈黙する。
「逃げた、っていうのは……
『元の世界に戻す気配が無かったから』
って言ってたんだよな?
もし誤解があるんだったら、
俺がカミュ王女様に話を通しても」
島村さんが妥協策を提案するも、すぐに
白波瀬さんがため息をつき、
「あなたって本当にバカ?
こんな見ず知らずの世界で、一人逃げる
選択をしたって事は……
それを決断させるくらいの何かがあったって
事でしょ?
『何をされるかわからない』
『最悪、殺されるかも―――』
それくらいの事でも無ければ、子供一人の身で
見知らぬ土地で逃げ出すなんて……
リスクが大き過ぎるわ」
それを聞いてさすがに反論出来ず、
島村さんは黙り込んだ。
ヒロト君もそこまでは言ってなかったけど、
『殺されるかも』が理由だとすれば、
無理も無い話だと思う。
「彼は、もし逃げるつもりがあるのなら
受け入れる準備があると。
すぐには答えられない、と言いましたが、
万が一の事があれば、避難先はあるのだと
いう事は覚えておいてください。
またくれぐれも―――
ヒロト君の事は国には内密にお願いします」
私の言葉に安堵する女性陣。
男性陣は若干困惑の色も見えるが、大方
受け入れたようだ。
「ところで、あの……
女性騎士団はそのジンム君とどういう
関係なのでしょう?」
熊谷さんがおずおずと聞いてくる。
彼女たちは軍人であり国家に忠誠を誓う組織。
それがどうして、いわば国に逆らうような真似を
しているのか、不思議に思っても仕方がない。
ルランさんはコホン、と咳払いして、
「我々は何も裏切ってなどいません。
不可解な勢力やそのトップの理解に努めるのは
軍人として当然の事。
また、万が一の時は民や王族を避難させる
経路を確保した事になります」
あくまでも国のためだと女性騎士団長は
強弁する。
「……わかったよ。
でも俺はまだ、あの王女様がそこまでの
悪人とは思えねぇんだ。
何か隠しているっぽいのはわかるけど、
いずれ話すとも言っているし―――
少し考えさせてくれ」
そこで勇者たちの中で同意が形成され、
ひとまず話は落ち着いた。
「しかし……」
「? 何でしょうか、武藤さん」
あまり会話に参加しなかったアラサーの
彼が発言した事で、そちらに注目がいくが、
「いや、トイレがね。
武田さんの部屋の地下にも、これと同じ
施設があるんだよね?
出来れば自分の部屋にも作ってもらえ
ないかなあ、と」
「あー!
それなら私の部屋にも!」
「そうねー。
アタシも欲しいわ、これ」
そして弥月ちゃん、白波瀬さんも食い付く。
「あはは……
次、ヒロト君が来たら聞いておきます」
こうしてみんなで笑い合い―――
勇者同士の情報共有は終わった。
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