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160・勇者Side16
しおりを挟む『というわけで―――
聖教会がやらかした』
『ただ負けて帰ってくるだけなら
いいんだけどな』
大学生くらいの青年二人が、モニター越しに
報告してくる。
島村さんに熊谷さんだ。
「各自、ダンジョンが出来て良かったです。
これで大勢の避難経路が確保出来たわけ
ですから」
私、武田裕子は自分の管理者部屋で、
他の勇者の人たちと連絡を取り合う。
『でもこれ便利だねー。
もっと早く作ってもらえたらなー』
『それもそうだけど……
事と次第によっては、すぐに放棄しなければ
ならないというのが何とも』
弥月ちゃんに白波瀬さんが、
同じようにモニターの向こうから話す。
『問題は、魔族がやって来た場合―――
どれだけの規模で来るか、だが。
自分の反射ならたいていの
攻撃は防げると思う。
ただ任意発動なので、長期はもたないだろう』
武藤さんが眉間にシワを寄せながら語る。
もし魔族が攻め込んで来たら、という
シミュレーションを、勇者の間で話し合って
いたんだけど、
弥月ちゃんが探索で敵の接近や
位置を把握、
白波瀬さんは守護で全員を強化、
それを受けた島村さん・熊谷さんが―――
軽減と強化上昇、
それに神速で戦場をかき乱し、
けが人が出たら私が聖女スキルでカバー、
王都の入口など、重要拠点は武藤さんの
反射で防衛して……
王都の住人が退避するまでの時間を稼ぐ。
それが私たち勇者が立てた作戦だった。
『だけど、もし聖教会が勝ったら?』
「その心配は無いと思います。
以前、魔王・メルダに聞いたのですが……
王国軍・聖教会の連合でも勝てなかったのに、
ましてや勇者もいない状態で、魔族側が
負ける事はあり得ない、って」
熊谷さんの問いに私は答え、
『……それでさー』
『武藤さん。
その子がアンクちゃん?
いや、別にいいんですけどね。
ただ勇者の会合ともいうべき時に、
部外者と一緒に話をするのはちょっと』
女性陣が指摘する通り―――
武藤さんのいる画面には、彼の片腕に抱き着く
ように、一人の少女が写っていた。
『妻のアンクです!
夫をよろしくお願いします、
勇者様の方々♪』
まだ十二・三才に見えるその少女は、
黄色に近いブロンドの髪を振りながら
笑顔で挨拶する。
『いやぁ~……
俺は武藤さんが一番大人と思って
いたんですけど?』
『いくらここが地球では無いからって、
モラルというものがですね』
残りの男性陣がからかい半分で、
武藤さんを責めるも、
『い、いや……!
遊びのつもりは無いから……!
彼女は必ず幸せにしますので!!』
困惑しながらも、本気だと宣言する武藤さん。
『あ~、何だ、その。
お幸せに……』
『王都防衛についての話も終わりましたし、
俺たちはこの辺で』
そして島村さん、熊谷さんが回線を閉じ、
『ああ!
ま、待ってくれ2人とも!!』
彼は画面に向かって手を伸ばすが、
彼らの画面はそれでブラックアウトし、
『ねーねーアンクちゃん♪
付き合い始めたきっかけとか聞かせて♪』
『もー聞いてくださいよ!
お兄ちゃんったら、全然私の事を
女として見てくれなくて……!』
『それをどうやって落としたのか、
ぜひ聞きたいなー』
慌てふためく武藤さんをよそに、妻である
アンクちゃんは他の女性陣と話し始め、
もちろんそこに、私も加わり―――
情報を『共有』する事になった。
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