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174・王宮にて
しおりを挟む「また、ここへ戻れるとは思わなかった……
ヒロト殿、心より感謝いたす」
クレイオス王国王都・ネーヴェ―――
そこの謁見の間で、俺は国王陛下と対峙
していた。
「もう王都内は落ち着いているでしょうか」
「うむ。
ダンジョンから追放した荒くれ者どもが
隠れていたようだが……
王都が解放され、人間が相手だとわかったら
大人しくお縄についたようだ」
十万もの避難民をダンジョンに収容出来た
ものの、やはり治安に問題が生じ―――
勝手に食事の出る自販機を独占し金を取る者、
ショバ代をせしめる者などが出てきたため、
その度にペナルティを設定し、ダンジョン内から
魔族が跋扈する王都へ追放していた。
「まあ、いい薬になったでしょう」
「ははは、人間の国で生きている有難みを
知ったであろうよ」
俺と国王は軽口を叩き合い……
やがて周囲に静寂が戻ると、
「本題に入ろう。
娘、カミュがそなたにした仕打ちは聞いた。
だがそれでも、そなたはこの国を救って
くれた。
こちらで出来る事は何でもしよう。
言ってくれ」
「……お礼なら、ハーレイドッグ子爵家、
そして女性騎士団に。
彼らが全面的に俺を信頼し、また
いろいろと動いてくれたからこそ、
今回の避難は成功したようなもの。
それに、すでに王家や貴族の方々には
眷属になってもらいました。
後は今まで通りで構いません」
そう―――
あの時、ダンジョン内にクレイオス王国の
国民を避難させ、落ち着いてきた頃を
見計らって、
王侯貴族に対し、眷属になる事を一応
打診したのだ。
すると国王が真っ先に同意してくれたため、
家臣である貴族たちも次々と眷属となり、
実質、クレイオス王国は……
俺の支配下に置かれてしまったのである。
「ですが、本当に良かったのですか?
俺、眷属となる条件をちゃんと説明
しましたよね?」
「ああ、しつこいくらい言っておったのう。
のうヒロト殿―――
貴殿は、少し自身の能力を過小評価
しているのではないか?」
俺が首を傾げると、陛下は続けて、
「国防と食料。
この二つのためならば、王族というものは
悪魔にだって魂を売る。
貴殿は今回、国民を完全に守ってみせたのだ。
それも、あの料理を出す魔導具―――
あれさえあれば、飢饉もしのげるであろう。
そんな能力を持つヒロト殿と交流を持てると
いうのであれば、この命とて惜しくはない」
さすがにトップオブトップ……
その覚悟は見事としか言いようがない。
「だが、その上で聞きたい事がある。
ヒロト殿は魔王エバンスとの勝負に、
あの不思議な魔導具で決着をつけようと
申し出たそうだな?
何か勝算あっての事か?
出来るならそれを聞かせて欲しい」
まあそうだよな。
せっかく王都奪還、それに安全が確保されたと
いうのに、こちらからわざわざ支配権を賭けて
勝負を申し込んだんだ。
ほとんど死に体のエバンス軍に、そんな事を
提示しなくても良かったはず。
俺は一息つくと口を開き、
「まあ、この際―――
勝負そのものは問題ではないので」
俺の言葉に、周囲はいったん沈黙した後、
ざわつきが広がっていった。
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