かけがえのない君に告ぐ

春原しずく

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序章 運命の夜

第四話

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男の手、あるいは硬く屹立したペニスに身を変えながら、スライムは美美子の体を犯す。本人の意に反して濡れてしまった秘部を下着の上から幾度もなぞっては、少女の欲を果てなく高める。
「あぁ……。駄目……」
細い息を頼りなく吐き出しつつ、美美子は悶えた。「コンビニなんかに行かなければよかった」と強く後悔したものの、それももはや意味のない行動に過ぎない。いかに悔やもうが反省しようが、過ぎた時間は巻き戻せないのである。
硬く尖ったクリトリスを布越しに優しく愛される。とてつもなく丁寧な愛撫を受けていると、指の先も足先も力を失ってしまう。
かろうじて十数歩ほど歩き、高く茂った樹木の幹にしがみついたが、一度発情した雌の本能を鎮めることなどできるはずがなかった。
焦らすように試すように触れられるたびに、「お願い! もっと、ちゃんと触って!」と懇願したくなった。
月に二回ほどしかしないが、オナニーの経験はそれなりにある。成人向け描写を含む少女漫画などを読んだあと、腰の底がむずむずしてきて、ついつい指遊びをしてしまうのだ。
中に異物を挿入するのはさすがに控えていたのだが、今夜はじめて、「硬くて熱いものを挿れたい。挿入したい。子宮ごと犯されたい。……精液が欲しい」と願ってしまった。
「ん、っ……。んん…………、っ…………」
腰が揺れる。はじけんばかりに膨張した熱塊を求めて、浅ましく身をくねらせる。
決定的な刺激を与えてほしくて、何度も何度も腰を振る。いまはまだ遠慮がちに動くのみだが、このまま焦らされつづけてしまったら──。
──そこまで考えがめぐったときだった。
「この……、乙女の敵っ!」
いったいどこに隠していたのだろう。少女が身の丈ほどもある広刃の長剣を片手で振り上げながら、美美子たちのほうに向かってきた。
「嘘……」
しかし、残念ながら、これは嘘でも夢でも幻覚でもなかった。
さきほどまでスライムと向き合っていた金髪美少女が、迷わず突進してくる。瞳に憎悪を宿らせながら、美美子とスライムのいる方向へと走ってくる!
「嫌! やめて! 私、私……」
「死にたくない!」という声が、胸のうちでとどろいた。
けれど、少女は突撃を止めない。ものすごい走力で駆けてきては、
「あんたなんか滅んじゃえ!」
真顔で叫びつつ、剣を美美子の肉体めがけて──振り下ろした。余分な動作を一切省いた、完璧な攻撃だった。
血のにおいが風に乗る。
「あ、死んだ」と、美美子は思った。大きくふくらんだ胸の底にて、無力感とも諦念ていねんとも呼べる感情が兆す。
しかし、……しかし、いくら待っても痛みを感じない。深く刺されたはずなのに、体は無傷のままだ。
獣のような叫びを放って死したのは、美美子でなく、スライムだった。なんとも不思議な話なのだが、剣による攻撃の影響を受けたのは、くだんのスライムだけだったのである。

蛍火ほどの光を発してしばらくしたのち、怪物は消滅した。跡形もなく消えてしまったのである──自身の流した大量の鮮血とともに。

【続く】
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