かけがえのない君に告ぐ

春原しずく

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第三章 光は去らず

第二十一話

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家の中で、私はほぼ孤立無援こりつむえんだった。でも、助けてくれる人もいた。
私には姉がひとりいるんだ。白葉しらはっていう、年の離れた姉がいるの。
母親が暴力を振るうと、必ず姉が止めてくれた。「ともえを責めてもなにも変わらない。お母様の心の傷が癒えるわけない!」と言っては、私を守ってくれたの。
それに使用人の中には、陰で私を助けてくれる人もいた。もちろん、見て見ぬふりをする連中のほうが多かったけれど、私を守るために動いてくれた人もいたんだよね。
……ん? どうして児相じそうに相談する人がいなかったんだって?
あのね、新月家しんげつけ……というか、月姿八態げっしはちたいの当主ってね、めちゃくちゃ権力があるの。だから、事件事故を揉み消すことくらいはお手の物ってわけ。訴えたところで、事実をひねり潰されるのがおちなんだよ。
それがわかっているから、誰も、母を警察に突き出さなかったんだよ。月姿八態のご当主様を裁くことのできる存在なんて、なかなかいないんだよね……。
家の中にも外にも、母親を止めるストッパーはなかった。姉が守ってくれたのは確かだけれど、彼女のいないところで暴力を受けることもしょっちゅうあったし。
「年が経つにつれて、母親の心の傷も癒えるかもな。そしたら暴力を振るわれる回数も少なくなるかも」って、私は期待していた。
でも、駄目だった。
年々、母の暴力はひどいものになっていった。
まるで拷問みたいな目に遭わされることもね、多くなってきたんだ。
そして、十一歳の誕生日を迎えた明くる朝、──私ははじめて殺された。
……うん、そう。
私は母に殺されて死んだの。首を絞められて、酸素が足りなくなって死んだんだ。
けど、皮肉なことに、私は不死者ふししゃだった。「どんなひどい目に遭っても絶対に生き返る」という特性を、生まれつき持っていた。
──それからのことは、あまり覚えていない。ただ、ほとんど毎日のように殺されたことだけは覚えている。泣きながら、嘆きながら、母が私を殺したことを……覚えている。
そして、何回も殺されていく中で、私の怒りは増していった。父親と同じM性だって、ただそれだけで暴力を振るわれたんだもん。たまったものじゃないよね。
……だから、私は逆襲した。自室でこっそり技を磨いては、母親に復讐する機会を虎視眈々こしたんたんと狙ったの。

そして、とうとう、その機会にめぐり合った。
二人きりになったときにね、母に──術を使ったんだ。「ある幻覚を見せる術」をあの人に使ったんだよ……。

【続く】
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