治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう

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2章

休む暇なく

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「ただいま戻りました、聖女様」

 俺はようやく治療院に戻ってきた。
 あれからギルドに向かって終了を報告、報酬がしっかりと支払われたことを確認してようやく、戻ってきた。
 久々の街の外での依頼で疲れてしまった。主に精神的に。

「聖女様?」

 だが、部屋に入っても聖女様はいなかった。
 姿が見えないため不安に思ったが、よく考えたら俺が帰ってきた報告なんてそこまで重要度が高くない。
 なので少しの寂しさを感じながらも後回しにして、装備解除をするためにとりあえず自室に戻る。

「ふぅ......」

 俺は装備を雑に脱ぎ、インナーのままになる。

「あぁ、そういえば普段使いの服がないんだった。いつか買いに行かないと......」

 と、ベッドに座ってゆったりとしていた時、ノックの音が聞こえた。
 聖女様だろう。となると自室にいたのか?

「ロードさん、今大丈夫ですか?」

「あぁ、少し待ってください」

 俺はさっき脱ぎ捨てた装備のローブをもう一度着る。まだぬくもりが残っていた。
 が、気にすることなく整えると、立ち上がってドアのほうを向いた。

「どうぞ」

 俺は聖女様にそう、声をかけた。
 すると「失礼します」という声とともに、ガチャリというドアの音が響いた。

「......あんまり変わってないですね」

 聖女様は周囲を見回して、一言呟いた。
 部屋が俺が入る前と比べてそこまで変わっていなかったからだろう。

 だが、元から宿暮らしだったから俺の持っている家具なんてない。
 金もなく、時間もなかった。
 けれど、ここに家具を運んでも良いというなら何か買ってみてもいいかもしれない。
 休みがあるのであれば、だが。

 なんとなく直感だが、俺には休みというものがないと、そう言われているような気がするのだ。
 それは前パーティーの時もそうだったし、治療院に来た今もそこまで変わらない。
 魔物強化の原因も特定し、解決に至った。
 怪我人が減って、確実に休めるはずなのに。

「それで、用件は何ですか?」

「あぁ、そうでした。ロード様に、正式に聖者様としての活動をしてもらおうかな、と」

「これまでと、何かが変わるんですか?」

「そうですね。そもそも聖者と聖女という肩書は、教会の教皇様の承認よって決められるんです。なので、今までは治療院の信者の治癒術師、という扱いだったのが、正式に教会所属の治癒術師になる、って感じですかね?」

 確かにそうだ。今まで聖者なんて言われて崇めたてられたのもほかの人が言っていただけで、教会の正式なものではなかった。


 ――――うん?


「ちょっと待ってください、教会の教皇様の承認、ってことは」

「近々、呼び出しがあると思います」

 なんてことないように聖女様は言う。
 確かに、混乱は収まったから、治療院自体は持つだろう。
 だが......

「まさか、七神教の総本山の......」

 否定してほしかったが、それほど俺を取り巻く世界は都合よくはないようだ。
 直感、外れてほしかったと思っている俺を置いて、聖女様は一言......

「はい。宗教国家セブンスの首都、セントリアに行きます」

 何でもない風に、そう言うのだった。
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