英雄教科書

大山 たろう

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四章 空は夜に、少女は黒に

二人は仲良し。ナカヨシだから――――

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「それで、試験は無事合格、トップに入ったと」

「ソフィア先生、その通りです」

 今は結果をソフィア先生に報告しているところだった。
 するとソフィア先生ははぁ、とため息を吐いた。

「一応、私の方から推薦してみるような形になったから、多分来ると思うのよね。ただ、確証は得られてないから別の方法も考えて置いたら?」

「ありがとうございます」

 二人はソフィア先生に見送られながら、その場を後にした。


「ソフィア先生の言う通り、この作戦が失敗しちゃったらどうしようもないね......来年まで待つ?」

「それは嫌。来年まで待てるほど私の精神は強くない」

 ガイアは堂々と言ってのけた。が、その内容は少し寂しいものだった。

「ま、まぁ、まだ失敗したわけじゃないし、期待してていいと思うよ!」

「ん。けど、もし失敗したら――――」

 ガイアはもうすでに、先を考えていた。

「王城に忍び込んで、直接英雄に教えてもらおう」

 ガイアは、何でもないと言った様子でそれを言ってのけるのだった。
 きょとん、とするエアリ。周囲に人がいないことを確認してから、エアリはこそこそと話した。

「そ、そんな犯罪予告みたいなこと言わないでよ! それに、王城なんてもぐりこめるわけないよ!」

 もちろん、王城とて張りぼてではない。国の政がすべてそこで行われていると言っても過言でないほど、重役がそこに集中している。
 当たり前だが、そんな重要人物を集めておいて兵が守っていませんなんて、そんなことは絶対にないのだ。

「もちろん。その時は強行突破」

 ガイアにとって、犯罪かどうかはそこまで問題としていなかった。

「まずいよ! 犯罪者になったら石を取り返した後も大変だよぉ」

 エアリは確かにその先を見据えていた。
 石はあくまで遺品として、形見として持っておきたいと言っておきながら、その後に日常に戻れないほどのめりこんでしまって良い理由にはならない。

「ん、そう。今のは悪かった」

 ガイアは謝罪の言葉を述べる。しかし、その目線は必ず、という目線だった。
 エアリも薄々察してはいた。ガイアにとって、ライズ先生という存在が大きくなりすぎてしまったことは。
 ガイアにとっての、理想だったから。

「ガイアちゃん。絶対に、石をもって、日常に戻るんだよ」

「......ん、分かった」

 エアリは念を押す。これだけしても不安なくらいだ。
 先ほどからガイアの表情はピクリとも動いていない。もともと顔に出にくいというのもあったが、大体は聞く価値がないと割り切っているからだ。
 だからこそ、エアリは自分の言葉が価値がないと思われているのではないか、と不安になっていた。

「大丈夫。ライズ先生の望んでないことはしない」

 ガイアはそれを察したのか、そう答えていた。
 エアリはそれでも不安だったが、これ以上どうしようもないことはわかっていたため「うん」と言って戻ることくらいしかできなかった。

 二人の間に微妙な空気が流れた。
 確かに開いた距離。けれどそれを二人とも埋めようとはしない。

 そのまま二人は一言一句交わすことなく、自身の部屋へと戻るのだった。
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