廻れマワれ

大山 たろう

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1-2:食べて、噛んで噛み砕いて

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 淡々と食事を腹に流し込む。
 栄養バランスはきっと良いんだろう、けれど香辛料がたくさん入っていて、あまり好みではない。それでもただ、腹を満たすだけ。そう納得して作業のように口に運んでいく。

「ねぇ、光っち」

 ふと、声をかけられた。

「土の人、どうしたの?」
「今日、訓練一緒にしない?」
「いいよ、何かやりたいことでもあったの?」
「いやー、私、光っちみたいな臨機応変な戦い方の人苦手だからさ」
「あー、確かに」

 土の人は確かに、土魔法を使った腰を据えた防衛線においては強いけれど、ことその戦法が通用しなくなった途端に苦手――もっと言えば、楽に殺せるほどに弱くなる。
 それに比べ私は光魔法、臨機応変に魔法と近接を切り替えて戦うスタイルを得意とする。確かに練習相手としては……最適なんだけど。

「分かったよ、じゃあ今日は一緒にやろう」
「ほんと! 助かる!」

 と、そこで苦笑いをしている自分に気付いた。
 私は少し考えて、頬を掻く。
 ウキウキとお礼を言う姿を見て、私はそこに違和感を抱いていた。
 それが何なのか、少しずつ分けて、噛んで、噛み砕いて――ゆっくりと、口を開いた。
 咀嚼した言葉は、案外するりと声に出た。

「戦うの、楽しい? 『勇者』って、そんなに嬉しい?」

 戦いとは、つまり奪うこと。難しい本に一貫して書いてあって、日々の訓練で嫌と言うほどに感じさせられ、考えさせられる。
 私にとって、楽しくも嬉しくもないものだった。
 ただ、心を殺して作業のようにしているだけだった。

 だからこそ、嬉しそうな土の人に、自分との違いを見たのだろう。
 土の人は、口にリスのように膨らんだ頬の中の食べ物を一度飲み込んで、そして口を開いた。

「まぁね。その結果出来ることが増えるのって、やっぱり悪い気持ちはしないよ。それに誰か笑顔になってくれるなら、本望じゃない?」

 その言葉に、納得はしなかった。ただ、土の人だなぁ、と感じただけ。
 確かに、土の人の力は攻め入る力というより守る力。奪う力というよりも救う力。私のものとは在り方が、そもそもの用途が違っていた。
 彼女は間違えてない。そしてきっと、私もまた。
 前提が違うから、回答が違うのもまた正しいのだろう。と、自分に無理やり言い聞かせる。も、確かな違和感として心に残った。

「そう、それなら良いの」

 何が良いのか、やはりそれが分からないけれど、口から癖のように、流れるようにその言葉が漏れた。
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