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一章 入学と探索者
迷宮探索1-1
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目を開ける。
目の前に広がるのは一階層である薄暗い洞窟。
日光など存在しないと言わんばかりに影が世界を塗りつぶす。
そんな暗闇の世界で寂しく光る青い水晶の光が、わずかな視界を与えてくれている。
息を大きく吸い込む。少し冷たく、湿っぽい空気が肺いっぱいに溜まる。
息を吐きだす。肌に感じるじめじめとした空気も新鮮だ。
耳を澄ませても、誰もいないと言わんばかりに静寂だけが広がっている。
俺は、こんな何もない世界に、三年も心を囚われていた。
他人なら馬鹿だと一蹴しそうなものだ。
しかし、後悔などなかった。
むしろ俺は今、進んだ果てに死が訪れたとしても、俺は後悔などしないと確信していた。
それほど、俺の心が満たされる感覚があった。
だが、まだ足りない。
いうなれば、好きな小説をまだ買っただけなのだ。
俺は、迷宮に潜って、潜って、潜って......
誰も見たことのない景色を見たい。
拓海は、そう目標を立てた。
歩く、歩く。
洞窟で暗く、湿っていて足場が悪いが、わずかな水晶の明かりが、かろうじて足元を照らしてくれているおかげで、何とか進むことができている。一階層とはいえ広大な広さがあるらしいので、迷子にならないよう、来た道を確認しながら用心深く進む。
少し視線を前に向けると、そこには三年前異形の生物として紹介され、今では専門の研究所が発足するほどに未知の塊である、スライムである。
しかし、スライム。雫型ならよかったが、残念なことに一階層のスライムはぐちゃっとした、形をかろうじて保っているタイプしかいない。
だが、このタイプのスライムは、魔石を体から引っ張り出してしまえば息絶える。
これが一階層のスライムに対する最も有効な戦術で、そして時間も一番かからない方法だとデータベースに乗っていた。
俺はこのドロドロスライムに触れたくないのだが......と思ったものの、うじうじしても何も始まらないので、服の袖をまくってスライムの体に手を突っ込む。
手さぐりにスライムの中をあさっていると、コツッという感覚がしたので、その付近を探す。
―――――見つけた。
俺は見つけた核をつかみ、引き上げる。
すると、形を保てなくなったのか、平べったくなってスライムが死亡し、黒い霧となって霧散する。
その後、黒い霧の一部は空中に霧散し、一部が俺に吸い込まれる。
すると達成感を味わう間もなく脳内に通知が響く。
・スライムを倒しました。経験値2を獲得。
・lv2になりました
そう、ここからが運命の分かれ道。今日の俺の本題だ。lv1からlv2になるときの上昇幅からある程度今後の上昇幅を推測できる。
深呼吸をした後、意を決して俺は唱える。
「ステータスオープン」
しかし、現実というのは時に残酷なものだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
藍染 拓海 人間 男 無職 lv2
HP10/10
MP20/20
筋力10
体力10
敏捷10
知力10
魔防10
器用10
幸運10
スキル
スキルポイント 2
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺は茫然とした。それもそうだ。
ステータスがMP、つまり魔力値以外変動していないのだ。
つまるところ、俺のステータスの才能は......
「魔力極振りって、流石にそれはないだろう......」
一度迷宮から出て、どうしたものかと考える。
普通の人ならば、探索者をあきらめろ、と言われるほどに酷い偏り具合なのだが、幸か不幸か、拓海は迷宮に関しては普通ではなかった。
拓海は思考をめぐらせる。
問題点は、基礎ステータスと呼ばれる、筋力、体力、敏捷、知力、魔防、器用の値が変動しないと分かったわけだ。
上位にめり込む探索者は、ほとんどがいくつかの基礎ステータスの上昇値が5を超える。俺はMPだけなら破格の才能だが、そのほかがだめだ。絶望すぎる。
例えばMPをつかう魔法であれば、基礎ステータスの知力の影響を受けやすい。
しかし、その値が変動しないとなると、どこかで補強しないといけないのか。
ステータスを上げるスキルは何だったかな......
ああでもない、こうでもない、と考えていると、いつの間にか家まで帰ってきたようだ。
しかし、解決策は一向に浮かばない。
「今日は寝られそうにないな......!」
疲れ切った体とは正反対に、拓海の眼はギラギラと輝いているのだった。
家に帰ってすぐに自室のパソコンから探索者データベースをあさる。
そこには、モンスター情報から魔法、スキル獲得条件など多種多様な探索者に必要となりうる情報が格納されている。
探索者ギルドの発足から、今まで情報が更新され続けられているこの情報庫に、今回はお世話になろう。
サイトを開くと、慣れた手つきでスキルの項目を見る。
開くと、千は優に超えるであろうスキルの名前と、隣に表示条件が記されている。
まずはこのスキル......は取得条件満たしてない。このスキルは......だめだ、知力ステータス頼りだ
ひたすらに、ひたすらに......打開策を考えるのだった。
目の前に広がるのは一階層である薄暗い洞窟。
日光など存在しないと言わんばかりに影が世界を塗りつぶす。
そんな暗闇の世界で寂しく光る青い水晶の光が、わずかな視界を与えてくれている。
息を大きく吸い込む。少し冷たく、湿っぽい空気が肺いっぱいに溜まる。
息を吐きだす。肌に感じるじめじめとした空気も新鮮だ。
耳を澄ませても、誰もいないと言わんばかりに静寂だけが広がっている。
俺は、こんな何もない世界に、三年も心を囚われていた。
他人なら馬鹿だと一蹴しそうなものだ。
しかし、後悔などなかった。
むしろ俺は今、進んだ果てに死が訪れたとしても、俺は後悔などしないと確信していた。
それほど、俺の心が満たされる感覚があった。
だが、まだ足りない。
いうなれば、好きな小説をまだ買っただけなのだ。
俺は、迷宮に潜って、潜って、潜って......
誰も見たことのない景色を見たい。
拓海は、そう目標を立てた。
歩く、歩く。
洞窟で暗く、湿っていて足場が悪いが、わずかな水晶の明かりが、かろうじて足元を照らしてくれているおかげで、何とか進むことができている。一階層とはいえ広大な広さがあるらしいので、迷子にならないよう、来た道を確認しながら用心深く進む。
少し視線を前に向けると、そこには三年前異形の生物として紹介され、今では専門の研究所が発足するほどに未知の塊である、スライムである。
しかし、スライム。雫型ならよかったが、残念なことに一階層のスライムはぐちゃっとした、形をかろうじて保っているタイプしかいない。
だが、このタイプのスライムは、魔石を体から引っ張り出してしまえば息絶える。
これが一階層のスライムに対する最も有効な戦術で、そして時間も一番かからない方法だとデータベースに乗っていた。
俺はこのドロドロスライムに触れたくないのだが......と思ったものの、うじうじしても何も始まらないので、服の袖をまくってスライムの体に手を突っ込む。
手さぐりにスライムの中をあさっていると、コツッという感覚がしたので、その付近を探す。
―――――見つけた。
俺は見つけた核をつかみ、引き上げる。
すると、形を保てなくなったのか、平べったくなってスライムが死亡し、黒い霧となって霧散する。
その後、黒い霧の一部は空中に霧散し、一部が俺に吸い込まれる。
すると達成感を味わう間もなく脳内に通知が響く。
・スライムを倒しました。経験値2を獲得。
・lv2になりました
そう、ここからが運命の分かれ道。今日の俺の本題だ。lv1からlv2になるときの上昇幅からある程度今後の上昇幅を推測できる。
深呼吸をした後、意を決して俺は唱える。
「ステータスオープン」
しかし、現実というのは時に残酷なものだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
藍染 拓海 人間 男 無職 lv2
HP10/10
MP20/20
筋力10
体力10
敏捷10
知力10
魔防10
器用10
幸運10
スキル
スキルポイント 2
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺は茫然とした。それもそうだ。
ステータスがMP、つまり魔力値以外変動していないのだ。
つまるところ、俺のステータスの才能は......
「魔力極振りって、流石にそれはないだろう......」
一度迷宮から出て、どうしたものかと考える。
普通の人ならば、探索者をあきらめろ、と言われるほどに酷い偏り具合なのだが、幸か不幸か、拓海は迷宮に関しては普通ではなかった。
拓海は思考をめぐらせる。
問題点は、基礎ステータスと呼ばれる、筋力、体力、敏捷、知力、魔防、器用の値が変動しないと分かったわけだ。
上位にめり込む探索者は、ほとんどがいくつかの基礎ステータスの上昇値が5を超える。俺はMPだけなら破格の才能だが、そのほかがだめだ。絶望すぎる。
例えばMPをつかう魔法であれば、基礎ステータスの知力の影響を受けやすい。
しかし、その値が変動しないとなると、どこかで補強しないといけないのか。
ステータスを上げるスキルは何だったかな......
ああでもない、こうでもない、と考えていると、いつの間にか家まで帰ってきたようだ。
しかし、解決策は一向に浮かばない。
「今日は寝られそうにないな......!」
疲れ切った体とは正反対に、拓海の眼はギラギラと輝いているのだった。
家に帰ってすぐに自室のパソコンから探索者データベースをあさる。
そこには、モンスター情報から魔法、スキル獲得条件など多種多様な探索者に必要となりうる情報が格納されている。
探索者ギルドの発足から、今まで情報が更新され続けられているこの情報庫に、今回はお世話になろう。
サイトを開くと、慣れた手つきでスキルの項目を見る。
開くと、千は優に超えるであろうスキルの名前と、隣に表示条件が記されている。
まずはこのスキル......は取得条件満たしてない。このスキルは......だめだ、知力ステータス頼りだ
ひたすらに、ひたすらに......打開策を考えるのだった。
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