魔力極振りの迷宮探索

大山 たろう

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二章 体育祭編

体育祭騒乱

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 体育祭当日。

 「あなた、十階層を攻略した報告を受けた後から一度も迷宮について話していないと思うのだけど、進展などあったかしら?」
 そう問いかける生徒会長。
「あなた、予知でわかっているんでしょう?」

 「いいえ、今日はまだ予知を使っていないの。有事に備えてね?」

 「そうでしたか。まぁ、進展などはなく、ひたすら十階層でゴブリンと戦闘をしてました」
 俺の二次職の選択肢は散々だった。
 なにせ名前が歩く魔力タンク一つだけなのだから。
 まぁ、スキル習得がなかった代わりだろうか、MPの伸びが以前の倍になっているのは少しうれしいのだが、いい加減基礎ステータスも伸びてはくれないだろうか......

 あとは、魔力回復増加が上がったのと、魔力譲渡がレベルアップして、遠隔譲渡と魔力ロス減少が入ったようだ。
 まぁ......そんなもんか。
 「そう......狩り、とは言わないのね。そういうところ、ちょっと好感持てるわ」

 俺は一つ、決めたこととして、命を懸ける者同士での戦いを、俺のほうが強いからと言って、レベリングとか、狩り、とは言わないことにした。特に人型だからその感情が少し強くなっている。

 「人型を狩りに行くとか言ったら、もう狂った人みたいじゃないですか?」

 そう笑いながら言うと、会長は少し微笑み、
 「ええ、そうね。」
 そう、返すのだった。


 「体育祭を、開始します!」

 太陽が照り付ける青空の下で、その言葉とともに体育祭が始まった。

 俺の分体ドッペルゲンガーは既に配置についている。

 感覚共有でそこを見ると、こそこそとしている影があった。こちら側には保護者は立ち入り禁止と書いてあるはずなので、おそらく敵だろう。

 「会長、怪しい人影を補足」

 「了解、引き続き監視よろしく」

 「わかりました」

 俺は耳に着けたワイヤレスイヤホンを通して感覚共有の結果を伝える。もし俺が見ていないときに戦闘がおこれば、分体ドッペルゲンガーが俺に魔力譲渡をしたのちに戦闘行動を開始する。

 俺はあくまで表の顔として体育祭に参加すればいい。

 そう思って、俺は最初の競技である100m走の集合場所へ向かう。

 このまま何もなければいいんだが......

 そう考えたのがフラグだったかのように、魔力が増える感覚がした。


 これはわかるように勘違いではすまない量を流してくれている。俺は未だ残るロスを考え、渡された分より少し多めに魔力を譲渡する。

 そして俺は会長に連絡をする。

 「戦闘開始したようです」

 「わかったわ。ここまでは予定通りよ。これから予知のズレがどれほど出るか......」

 「ちなみに敵は野良なんですか?」

 相手も犯罪集団か、少人数なのかを聞いていないので聞く。

 「まぁ、あなたなら当日だしズレは少ないか......今回犯罪を起こそうとしているのは、大規模犯罪者集団、血の盟約、その下っ端ってところかしら。ちなみに狙いはこの学校に在籍する判明している三名の唯一職の身柄確保よ。危害を加える可能性を否定できないから、護衛は全員を条件にしているけど」

 「判明?俺は恐らく判明していないでしょう。ならばあと一名は?」

 「あなたの言う勇者君がほんとに勇者、しかもエレメンタル、極光の勇者よ。勇者は最初から最終職に到達しているっていうから、洗脳でもして投入するんじゃない?」

 「エレメンタルとか本格的にあいつ主人公だろ......」

 「まぁ、あなたは種目があるのでしょう?また変化があれが連絡を頂戴」

 「了解」

 そう短く返すと、俺は電話を切る。
 とりあえず、走るか。





 100m走だが、なんと二位を取ることができた。
 最近迷宮でずっと動いていたから足腰が強くなったのか、それとも度重なる戦闘で瞬発が鍛えられたか。

 ともあれ、よい結果を残せたのならば十分だろう。

 俺はクラス席へと戻る。

 「拓海!運動できたのかよ!」

 「拓海くん、すごかったよぉ~」

 真っ先に駆けつけてくれたのは、徹と司だ。

 まぁ、一位でない分きゃーきゃーいわれることがないので少々残念だが、冷たい目線を浴びせられないだけ良しとしておこう。

 取り合えず、俺は席でゆっくりするか。

 「拓海、電話来てるぞ」

 「え?あぁ、ありがと」
 確認すると、電話が振動していた。誰からかと思うと、会長からだった。あっちからかけてくるなんて、何事だろうか。

 そう思い、席を外し校舎の柱に隠れると、電話に応じる。

 「会長、どうしましたか」

 「まずい、予知を使ったら大きなずれが発生していた! 最初の一人が帰ってこない場合、大人数で攻めるつもりだったみたいだったの!」

 これほど焦る会長は珍しい。それほど緊急事態だから仕方ないのだが。

 「援軍は?」

 「来ないわ。装備を整えてきているのはあなただけ。他はせいぜい護身用だけよ。」
 
 「探索者ギルドに連絡は?」

 「もうしているわ。だから、時間を稼いで。そっちの一人は本体のあなたが。大人数のほうに分体ドッペルゲンガーを向かわせて。そうでないとあなた、身バレどころか死ぬわよ?」

 「.......わかりました」
 そう言って電話を切ると、すぐさまバッグを持ちトイレへと走る。

 トイレの個室に入ると、服を着替え、指輪とナイフ、そして仮面をつけると、ある魔法を発動しておく。

 そして分体ドッペルゲンガーのもとへ向かうと、交代をするという意思表示を込め前に出る。そして、電話をなげ渡す。

 「電話で聞いてくれ!」

 それだけで察してくれたらしい分体ドッペルゲンガーは、携帯を落とさずに受け止めると、携帯をいじりながら別の場所へと走り去っていった。

 「貴様、何者だ」
 俺はそうテンプレの言葉を吐く。
 すると敵であろう黒ずくめの人は、こちらへ距離を詰めてきた。

 俺はバックステップをしながら、魔弾を放つ。

 しかし、黒ずくめは左に体を寄せ、回避してしまった。

 そのまま、黒ずくめは、首筋目掛けナイフを振るう。

 俺はそれをすんでのところでナイフで受け止める。

 しかし、圧倒的にステータスの優っている黒ずくめが、徐々に首筋へとナイフを押し当てていく。

 鍔迫りあいだとステータスの伸びがない俺が圧倒的に不利だ。

 俺は刀身の方向を敵の顔へと少しずらすと、顔すれすれの長さで魔法刀身を起動すしながら、右から魔弾を構える。

 これが、手を使わなくても魔法を使える魔法、リモートマジックだ。

 拡散と操作、それだけの魔法なのだが、これは自分から魔力を拡散させ、それを操作で文字にする、という方法で遠隔起動などを可能にした。

 そのリモートマジックは、先ほどトイレで書いておいた。
 しかし、魔力を継続消費する上に、精度が大抵悪くなるため、あまり人気ではない魔法だ。
 これには黒ずくめも顔を恐怖に染め、後ろへ下がる。

 が、遅い。

 俺は後ろに下がる直前、力が弱まった一瞬でナイフを前に突き出す。その瞬間、頭に魔法刀身が突き刺さる。

 うめき声をあげたかと思うと、後ろに倒れ、頭部から勢いよく血が噴き出る。

 俺は、人を殺した。
 それは、事実だ。例え相手が犯罪者集団だとしても、俺は人間に刃を向け、未来を奪ったのはまぎれもない真実だ。

 しかし、俺は後悔などしない。
 彼が無実の人の未来を奪うためにやってきたのだから、守るために刃を振るったのだ。
 そう、自分に言い聞かせ、正当化する。

 すぐに会長に電話を入れ......ようとしたところで、気づく。

 「分体ドッペルゲンガーに渡したじゃねぇかよ!恥っず!」

 俺は急いで分体ドッペルゲンガーの戦闘地へと向かう。

 しかし、残念なことに秘密裏に処理はできなかったようだ。

 今の戦闘地域は、グラウンドのど真ん中。先ほどまで100m走をしていた白線が消えかかるほどの激戦を、俺の分体ドッペルゲンガーと会長、そして護身武器を持っていた生徒と、あれは......保護者か。

 皆が善戦しているので、脅威に感じる演出で引いてもらおう。

 分体ドッペルゲンガーもその考えに至ったようで、俺の反対側へと姿を隠す。

 そして、リモートマジックを起動すると、片方五十、二人で百発の魔弾を構える。

 俺と分体ドッペルゲンガーは時計を見る。
 時計を見る、見て、見て......

 分針が動いた。

 その瞬間、俺と分体ドッペルゲンガーは魔弾を撃ちだしていく。まばらに打ち出すことによって数がいると錯覚させる。

 向こう側からは、「やべぇ!もう来やがった!」だの、「何人来てんだよ!」だのと声が聞こえる。

 作戦が功を奏し、敵が前線を下げていく。中にはそのまま逃げだそうとするものまでいた。

 追い打ちをかけようか悩んだが、どうやら援軍が到着したようで、前線が下がった学校の向こう側で戦闘が開始された。
 金属と金属がぶつかり合う音が鳴り響く。

 今のうちに、俺は姿をくらますか......そう考え、さっと校舎裏に身を隠す。

 そのままトイレで着替えると、トイレの個室に隠れている風を装って隠れておく。

 数分後、校内放送で、安全確保の連絡が入った。

 なので、俺はトイレから出て、みんなのもとへ向かう。

 やはり真っ先に駆けつけてきたのは徹と司だった。

 彼らはいつもより大きな声で、
 「拓海、どこ行ってたんだ、ケガしてねーか!」

 「いなくってしんぱいしてたんだよぉ」

 そういったので、俺も大きな声で、

 「いやぁー、トイレ行ってたらドンドン大きな音がするからさ、こりゃやべぇってトイレの個室にずっと隠れてたのよ! もー怖いったらありゃしない!」
 
 そう、大きな声で話す。すると、みんなも興味を失ったのか、それぞれとの友達との会話を始めていく。

 俺は小声で
 「助かった」

 というと二人は

 「今のやっぱり嘘か......」

 「打ち合わせといてよかったねぇー」

 そう笑いながら小声で言った。



 「結果から言えば、大金星ですね。負傷者も戦闘した人だけ、誰も拉致されなかった。すべて、あなたのおかげよ」
 そう、会長に手放しでほめてもらった。

 「これでもうばれる心配はなくなったわけですね。」

 俺は安心しながらそう言うと、会長は何をバカなことをと言い答えた。

 「これで連中は何もなくても堂々入ってくるし、文化祭だってあるのよ?」

 「なんと、そこに俺が加わるのは決定事項なのですね」

 「当たり前じゃない、これだけの働きを見せておいて、次回からは個人の都合で行きませんなんて聞くと思った?」
 くそ、だから手放しで俺をほめたのか!

 俺はやるせない気持ちとこれからの不安を抱えつつ、生徒会室からクラスへと戻った。
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