Dal Segno ~異世界転移した俺は、自分の願いを叶えるために何度でもやり直す~

大山 たろう

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第一章

1-1 長い旅路の始発駅

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「――――て、――――きて」



 遠くから、声が聞こえた。



「起きて―!」



 耳元で、そう叫ばれて俺の意識は急速に覚醒した。

 ふっ、と、何かを忘れているような気がして......そうだ、スキル。



「『ステータス』」



 俺は隣で覚醒を促してきた女子にも聞こえないくらいの小声でそうつぶやいた。

 女神がそれを言わなかった以上、これであっているはずだ。

 そしてその期待を裏切らずに、目の前に半透明ウィンドウが開かれる。



 ステータスが表示された。

 基礎能力値だとか、レベルだとか、職業だとか、そんなところに目を向けたい気持ちはやまやまなのだが、先にスキルを確認する。



 そこに書かれていたのは二つ。



 固有スキル

 死神lv1



 ギフト

 時間操作lv1



 あぁ。これは確実にこっちだ。

 俺はそれをタッチし、使えるスキルを見て確信した。

 そしてまた小声でつぶやく。



「『書き込み』」



 ・現在地点を『書き込み』ました



 ・自動的に地点1を『読み込み』地点に設定しました



 そのログが半透明ウィンドウとして、ステータスの横に表示された。



 これはゲームのセーブ的なチートだろう。何度でも繰り返して、正解を探し続ける。セーブ地点を書き込めるあたり、このスキルは結構良心的で使い勝手も良さそうだ。

 女神の言葉は『すぐに使え』だったのだろう。なにせ最初の最初さえ記録出来ていれば、そのあとでどれだけしくじったって元に戻せるわけだから。

 さて、次は――――



「おーい! 起きてるー!」



 耳元で大声を出され、俺の意識はステータスから強制的に現実に戻された。

 大声を出された左を向くとそこには大きな双眸が。

 ――――女子!?



 反射的に慣れていない俺は少し距離をとった。

 絶対誰でもそうする、ふと気づいたら至近距離に女子がいたんだから。



「ど、どうしたの」



「どうも何も、起き上がってからもぼーっとしてるから、大声だしたんだよ! ここどこかわからないし、みんな起きてから動いたほうがよさそうだし!」



 はきはきと目の前の女子はそう話した。



 ......まぁ、クラスメイトは交流がほぼなかったせいで、ほとんどの人の名前を憶えていないから、暫定的に女子Aとでもしておくか。



 周囲で起きているのは女子Aと委員長、それから男子数名か......



 次に周囲の環境を確認する。

 床も壁も天井も、あちこちが石、石、石。

 木の温かみがない、石の要塞のような場所だった。

 地面には隙間のない大きな一枚の岩というべきサイズの上に、白い線で......魔法陣が書かれていた。これが異世界召喚の魔法だったりするのだろうか。



 そして扉は二枚。正面と真後ろに一枚ずつ。逃走経路なんて今考えたところで無駄だろうけれど、一応考えておく。



「みんな起こした方が......いいよね、男子を起こしてくるから、女子をお願い」



「うん、わかった!」



 そう言って女子Aは飛ぶようにして立ち上がり、寝ている、というより倒れている女子たちに片っ端から声をかけ始めた。



 俺も、仕事しないと。



 真っ先に起こしに行ったのは、男子の委員長。

 彼を起こしておけば、きっとあとは大丈夫だ。



「おーい、おきてー」



「ううん......? ここはどこだ......?」



「わからない、だけどとりあえず倒れている人たちを全員起こさないと」



「あぁ、なんとなくわかった、協力しよう」



 男子の委員長は成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群という三拍子が揃っている。

 金髪のイケメン、脱いだら筋肉、テストは上位の委員長を起こしておけば、あとは男子を勝手に起こしてくれるだろう。

 決して、決して俺がさぼりたいわけではない! ただ単純に、彼らが起こされるときに、カリスマ性にあふれた彼が最初に視界に入るほうが安心できるだろうと思っただけ! 決してさぼりたいわけではない!



 とか考えている間にも、委員長(男)がたくさん起こしてくれている。

 これでまず最初の試練としては突破だろう。



 人口建築物の中にいることから誰かが意思をもって召喚したことは推測できるから、誰かが来るまで待機か。

 と、ここで持ち物の確認をした。



 携帯電話が一つ。当然圏外。

 財布には使えないポイントカードの山。所持金が五百円程度。

 有線のイヤホン。

 モバイルバッテリーが一つ。携帯をフル充電二回できることを売りにしていた。

 家の鍵。シャーペンとボールペンが一本ずつ。



 ......あぁ、使えねぇ。

 俺はこの世界で初めての後悔をした。

 持ち物が全く使えない。携帯とかどう使うんだ、ポイントカードとか使い道ないだろ、お金も二本で発行された物、当然異世界では意味がない。バッテリーも携帯電話の無能と同時に使い物にならなくなった。

 家の鍵、シャーペンとボールペンはまだ刺せる、が自衛手段としては乏しすぎる。

 あぁ、どうしようもねぇなぁ......



 召喚された国が隷属を強いてくるような国だったら、現在読み取り方法がわかっていない以上、面倒になることくらい容易に想像できる。



 と、そこで扉が音を立てて開いた。正面のほうだ。

 俺はすっと、皆が混乱しながらも立ち上がっている中、後ろの方へと移動した。



「よく聞いてほしい、私はここ、クリスタ王国の国王、アーサー・フォン・クリスタ。今この世界はある危機に直面している。異世界より召喚されし勇者たちよ、どうか我々を助けてほしい」



 異世界テンプレをどれだけ回収するのか、という質問を置いて、俺は少し考え込んでいた。

 このある危機、というのが女神の言っていた最悪の事態とイコールで考えて良いのか。

 確かに、こっちに来てからわかる、と言っていたが、なんか違う気がするんだよな......



「魔王軍が我々の大陸に攻め込んできており、このままいくと人間族が滅んでしまう。解決のためには魔王軍を倒すしかないのだ。どうか、我々に力を貸してくれ」



 この言葉を聞いた瞬間、俺は察した。

 あぁ、これ絶対違う、と。



 そりゃそうだろう。女神がたかだか人間ごときが滅ぶ程度で最悪の事態だなんて大げさな言葉使わないだろう。それに女神という世界を管理する存在が片方に入れ込むということもあるのかは疑問だ。それならば、人間の危機と女神の最悪はそれぞれ別と考えたほうが良いだろう。



 俺はそう結論を出していたが、神とも会っておらず、ラノベとかで読んだことがない人達はほとんどがパニックに陥っていた。



 家に帰して、だの、俺たちを早く解放しろ、だの、ここはどこだ、だのと四方八方から国王に質問を飛ばしている。あーあー、そんなことしたって答えっこないだろうに......



「落ち着いて聞いてほしい。まず、ここは皆からしての異世界、まったく別の世界だ。そして解放を望んでいるようだが、現在は王国が庇護している状態だ、何の後ろ盾もなく、全く知らない異世界を歩いていけるというのであれば、解放を考えよう。そして最後。帰る手段を知っているのは恐らく魔王だけだ」



 いくつかの質問には真面目に答えていた。

 これが国王のなせる技なのだろうか。

 ともあれ、一つずつ精査していこう。

 全く別の世界、のあたりは問題ないだろう。そして王国が守っているけど、一人で生きていけるなら解放も視野に......いや、考えるだけか。そして最後、人間族が呼び出しているのに魔王しか帰還方法を知らない、か。どうもきな臭く感じてきた。



 が、まぁパニックになっている彼らは脳が回転していないのか、「とりあえず魔王を倒せば返してくれるんだ」と結論を出しているようだった。

 この中で正常な判断をできているのは......委員長二人とオタク男子一人。そして全く頭に入っていないであろう人が女子A。大丈夫だろうか。



「俺たちにそんな戦うような力はないですが」



 男子委員長がそう質問を飛ばす。

 国王はその質問を待ってましたと言わんばかりのテンポで話を始めた。



「いや、おぬしたちには神から力が与えられている。『ステータス』と唱えてみるのだ」



 そう、国王が教える。

 周囲の人たちは口々にステータスを見始めた。



 俺もこの機にじっくりと見ることとしよう。
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