Dal Segno ~異世界転移した俺は、自分の願いを叶えるために何度でもやり直す~

大山 たろう

文字の大きさ
9 / 23
第二章

2-2 やはり俺のマイナス好感度はまちがっている。

しおりを挟む
 戦闘訓練だ。

 運動場のような場所についたかと思うと、動物園で見たゴリラを彷彿とさせるボディを持った男が「武器を取れ」と木箱を指さして言ったため、俺は、というよりみんな走って木箱のほうへと向かった。

 皆が群がっている木箱の中身を覗くと、そこにあったのは剣だった。

 皆が一本ずつ取って空いたのを見てから、俺は木箱の中から剣を取り出した。



 よく見ると刃の部分が潰されていて、切るというより殴る武器のようになっていた。

 刃がつぶれているとはいえ、鉄と木をメインで作られたであろう剣のため、運動不足の俺には結構な重量として体にのしかか......らなかった。きっとステータスの恩恵か。



 まじまじと刃の部分を見ていると後ろから「早くしろ!」という怒鳴り声が聞こえてきたため、俺はすぐに剣を持って教官......ゴリラ教官のもとへと向かった。



「とりゃ、とりゃ!」



 どうやら最初から対人戦はさすがにしないらしく、ゴリラ教官の動きを真似ながらカカシのような物を叩く練習から始まった。

 ゴリラ教官は怖いが、何も問題を起こさなければ怒られない。頑張って怒られないようにせねば。



「そこ、気が抜けているぞ!」



 ゴリラ教官が持っていた木剣をこっちに向けてきた。たぶん今口から「うひっ」なんて言う情けない声が漏れたと思う。向こうで折原さんが笑いをこらえているから。



 どうやらゴリラ教官は女子には優しいらしく、折原さんが笑っているのは咎めないようだ。俺は咎めるのに。解せぬ。



「ほら、気が抜けていると言っただろう!」



 俺の隣の地面が爆発したと勘違いする音を立ててクレーターを作った。

 そこにあったのは木剣とゴリラ教官のたくましい腕。



「ウィッス」



 心を無にすることに決めた。











 翌日。戦闘訓練から始まった一日だった。

「今日の訓練は終わりだ!」というゴリラ教官の声が聞こえ、俺は意識を覚醒させた。よくあるスマホRPGのオート周回みたいな挙動をしていた自信がある。



「剣を片付けたら、昼食だ。食堂へ移動しろ!」



 それくらい、大きな声を出さなくても聞こえるのに......

 クラスメイトもへばってほとんど無駄話をしていない。

 今会話できているのはそれこそ男子委員長と一部の運動部だろう数人だけだった。



 俺は剣を預けると日影に移動した。



「はぁ......」



 空気が都会に比べ格段においしい。向こうは蒸し暑いし、どこか蓋をされているような気分になる。

 こっちはそれに比べて快適だ。蒸されている感覚はないし、光を遮る電柱の一本すら立っていない。その代わり電柱がないからこその不便もあるけど。



「おい、ちょっと顔貸せや」



 空を眺め、ぼーっとしていた時に見たことがあるようなないような顔の男三人に取り囲まれた。



「はぁ、どこまで」



「黙ってついてこい」



 脇腹を何か固いもので叩かれ、俺は情けなく「ぐふっ」と呻いた。

 脇腹を見ると、先ほどまで使っていた、刃の潰された剣がそこにあった。

 どうやらさっきの戦闘訓練の後に騙して隠し持っていたらしい。

 逃げ道もなく、逆らえば暴力。

 今すぐに逃げたい気分だけど、『読み込み』くらいしか現状を変えられない。

 でもまだ、『読み込み』を使うべきじゃない。まだ完全にクリア不可能になったわけじゃない。

 そう考えて、俺は三人に渋々といった様子を見せながら三人の命令に従った。



「お前、調子に乗りすぎてないか」



「はぁ......」



 そう言われても、心当たりが一つしかないから「乗りすぎ」というには少し違う気がする。



「心当たりがないってか、あれだけ折原さんと話しておいて!」



「あっ」



 そっちか。折原さん、やっぱりモテてたんだ。そりゃ印象が悪い俺が折原さんと話してたら標的にされるわ。



「今気付いたみたいな声出しやがって!」



 三人は訓練の後だというのにまだ元気が残っているようで、俺へ殴る、蹴る、剣で突くといった暴行を繰り返す。



 痛い、痛いっての!



 丸まって体を守ろうとするものの、隙間やわき腹を狙って執拗に攻撃してくる。



「十時君!?」



 その時、声が聞こえた。



「お、折原さん、どうしてここに」



 折原さんがどうやら来ていたようだ。



「あなたたち三人、同じクラスメイトとは思えない」



 そう、冷たい一言を発した。

 いつも明るく、暖かい空気を纏った彼女から飛び出した強烈な言葉。

 男子三人は「ひぃ」と情けない声を出しながら走っていった。



「大丈夫!?」



 攻撃されたところが青くなっている。こりゃいてぇ。

 と思っていたら、折原さんが手を当てたところが光り、傷がみるみる治っていった。



「回復......魔法?」



「そうだよ、治ってよかった......」



 折原さんは俺の両手を掴んで離さない。そして足に泥が付くこともためらわずに泣き崩れてしまった。

 なんか、ここまでしてもらって、そのうえで泣いていると俺が泣かせたみたいで罪悪感が芽生えるなぁ......



「大丈夫だから、もう心配しないで」



 主人公ならぎゅっと抱きしめてあげるシーンだけど、そんな度胸も勇気もない俺は、そうやって折原さんに言い聞かせることしかできなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない

戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――! 現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、 中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。 怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として 荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。 だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、 貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。 『良領主様』――いや、『天才王子』と。 領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、 引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい! 「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく! ――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚! こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています 是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

暗算参謀は王国を追放される――戦わずして勝ち続けた男の失脚譚――

まさき
ファンタジー
現代日本から異世界へ転生した主人公。 彼に与えられた唯一の能力は、瞬時にあらゆる数値を弾き出す「暗算」だった。 剣も魔法も使えない。 だが確率と戦略を読み解くことで、王国の戦を幾度も勝利へ導いていく。 やがて王国の戦略顧問として絶大な信頼を得るが、 完璧すぎる功績は貴族の嫉妬を招き、巧妙な罠により不正の罪を着せられてしまう。 証明できぬ潔白。 国の安定を優先した王の裁定。 そして彼は、王国を追放される。 それでも彼は怒らない。 数字は嘘をつかないと知っているからだ。 戦わずして勝ち続けた参謀が、国を去るその日までを描く、 知略と静かな誇りの異世界戦略譚。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~

九尾の猫
ファンタジー
亡くなった祖父の後を継いで、半農半猟の生活を送る主人公。 ある日の事故がきっかけで、違う世界に転生する。 そこは中世日本の面影が色濃い和風世界。 しかも精霊の力に満たされた異世界。 さて…主人公の人生はどうなることやら。

レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった

あめとおと
ファンタジー
異世界に転移した主人公が得たスキルは【地図作成】。 戦闘能力ゼロ、初期レベル1。 冒険者ギルドでは「外れスキル」と笑われ、 新人向けの雑用クエストしか回ってこない。 しかしそのスキルは、 ダンジョンの隠し通路、未踏破エリア、消えた古代文明の痕跡まで“地図に表示する” という、とんでもない能力だった。 生き残るために始めた地味な探索が、 やがて世界の秘密と、国家すら動かす大冒険へ――。 これは、 戦えない主人公が“冒険そのもの”で成り上がる物語。 同作品を「小説家になろう」で先行配信してます。

処理中です...