Dal Segno ~異世界転移した俺は、自分の願いを叶えるために何度でもやり直す~

大山 たろう

文字の大きさ
19 / 23
第二章

2-1 俺の目も腐ったものじゃあなかった。

しおりを挟む
 
 そして巻き戻る世界が完全に記録された地点と同じになったところで、世界は再び、正しく時を刻み始めた。

「――――はぁっ、はぁっ」

 一人、息を荒くする。
 もう、少し慣れてきたまであるこの『読み込み』。だけど、ペースが明らかに速すぎる。もうこの問題に使えないんだけど......

 焦る気持ちを抑え、前の通りに行動する。
 ここで逸れたら、情報がすべて無駄になる。それだけは回避しないと。

「それでは、ここに血を」

 そう言って用意されたのは二本のナイフと三枚の紙。全く同じ文面がそこに書き記されていた。三度目ともなるともう慣れたものだ。これが最後になればいいんだが......
 慣れた国王を見ながら、俺もナイフで指を切る作業へと入る。
 ぴっ、とナイフについていた血を払い、指で血をつけた。
 両者の血が紙に付着したその瞬間。そこに置かれていた紙から黒い魔法陣が現れたと思うと、すぐに消えてしまった。

「これで契約は終了です。一つはそちらで控えておいてください」

 そう言って高身長の男は俺に契約書を手渡してきた。
 とりあえずその契約書を制服のポケットに突っ込む。やっぱり消えている。

「それでは、最初に依頼、と行きましょうか。異世界人の知識をこちらに提供していただく代わりに、衣食住の保証と戦闘訓練、そしてこちらの世界の知識をお教えするというのはどうでしょう」

 もはや国王を置いて高身長の男が話を持ち掛けてきた。こいつが、今回の鍵。

「それはこちらとしても願ったりかなったり、ですね、よろしくお願いします」

 そう言って、高身長の男と握手を交わした。全く同じように。

 そして翌日からの座学も同じ結果が出されたためにトイレに逃げ込んだ。
 はぁ、次は戦闘訓練か。ことを起こすならここだが......
 今朝に一応、長身の男の姿はちらっと確認した。
 様子もおかしいところなんて特になく、前日と特に変わらなかった。
 まぁ、そりゃあ前回と同じなんだから、行動が変わるほうがおかしいが。


 トイレの中で思考整理をする。

 襲撃してくるのは魔王軍幹部。目的は異世界召喚者一行を戦闘不能、もしくは殺害すること。
 死体を確認してないのは長身の男と講師の女性。さっきまでいたが、こっちも前回とそこまで変わらなかった。
 ならば今回は過激に、どちらかを殺害して襲撃が起きるかどうか確認......? いや、死んだのを確認できるかもしれない。そうなったら結局襲撃の未来は変わらない。
 それなら答えは一つ。襲撃回避だ。


「スキルも試し打ちできたでしょうから、これから......そうですね、スキルを使わない訓練をしてから、昼食、そしてスキルを使って戦闘をしてみましょう!」

 その一声を聞いて、前から歓声が上がった。

「ほーら、何そんなに固くなっちゃってるの!」

 折原さんの声。いつもなら誤解される表現だ、とか考えていられたのだろうけど、今はそんなに楽観視してはいられない。

「あ、ごめんね。すぐに行くよ」

 そう声をかけておけば、彼女は先に行く。そう知っている。

「お時間、いいですか」

「......えぇ、どうぞ」

 このタイミング、この聞き方に対してこう答える。そう知っている。
 が、これからは知らない。
 それは、今回聞くことは前とは違うからだ。


「先生、どうして魔王の力量差を知ってるんですか」

 それは少し前――――死体を探していた時から疑問に思っていたことだった。
 しかしそのあと二度と彼女と会うことはなかったので、結局謎が謎のままだったのだ。
 そう思うと、この先生もう少し何か隠してそうだけど......

「......伝承よ」

 先生は、悩んだ末にそう答えた。

「それにしては、やけに実感がこもっているようでしたが」

 追及をしてみる。
 思えば彼女は、この火力でこれだけしか、と言っていた。その言葉は、実際に見たことがないと出てこない。

「まぁ、そういった言葉が飛び出してしまったのよ、結構詳細に書かれていたから」

「そうですか」

 うむ、やはり理由付けは弱かったらしい。期待外れ、と言った表情だろうか。見るからに落胆の表情を浮かべていた。
 二週目と違い、何を言おうと、そこから先は言ってくれなさそうだ。
 しかし、それだけでいいだろう。

 彼女は、きっと言えないのだ。
 もしスパイなら、言えないということそのものを隠してくる。
 が、彼女はその言葉を繰り出す速度と言い、言い訳しているようにしか見えない。
 本当に答えたくなければ、もっと突き放せば良い。

「ありがとうございました」

 俺はお礼だけ言うと、部屋を出た。



 戦闘訓練。同じように教官を倒しても構わないだろう。が、問題はそのあと、三人からのリンチを受けて死亡した場合、俺が死体から復活するまでの時間で襲撃が始まってしまう。俺が連れ去られた時にはもうすでに何もかも終わっていたのだろう。
 ま、そりゃMPが回復するまで死体のままなので動けませんなんて言っていたら、間に合うはずもない。

 となると、ここで復活というカードを切るべきではない。
 しかし、ここをトイレに逃げ込んでやり過ごすとどちらにしろ襲撃が始まる。


「一回戻るか」

 先ほどはぐらかされたが、別件なら話を聞いてくれるだろうか。

「すみません、もう一ついいですか」

「はぁ、なに?」

「これから、魔王軍の襲撃が王城にあるって言ったら先生......信じますか?」

 その瞬間、空気が数段冷えたような錯覚に陥った。

「それをどこで知ったの?」

「......信じてくれますか?」

 俺のスキルの情報はばれていない。最悪『予知』とか適当に嘘ついて協力をお願いしたいが......

 俺の中では白、こちら側の人間だと思ったからの相談だった。
 が、動きは鈍い。俺の見る目がなかっただけか......? と冷や汗をかいていた。

 先生が口を開いた。

「わかったわ。一度だけ信じましょう。どうすればいいの?」

「そ、それがわからないんで......異世界召喚されたメンバーを、何か理由をつけて王城から出せないですか? 例えば、買い出しとか」

 もし目標が王城、そして目的も政の妨害だけならそれでいいんだが......もしかしたらそれに巻き込まれる形で襲撃を食らっているかもしれないし。
 正直国王は知らん。

「それなら、街を探検してみようとか、適当に戦闘訓練の教官と話をつけて街に行かせるわ」

 良かった.....しかし、状況は何も変わっていない。二週目は俺が本を読んでいたとはいえ、昼寝の時間――――あと二時間程度だろうか。しかも連れ去られるのが、何もかも終わるのがその時間だから、正直一時間程度だろう。

「すぐに。もうすぐ来ます」

「......分かったわ。すぐに話をつけてくる」

 そう言って、先生は飛び出すようにして戦闘訓練をしているところへと走っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

処理中です...