終わる刻、始まりの場所

七海月紀

文字の大きさ
35 / 51

34話

しおりを挟む
 こうの話をまとめると、力の暴走で一度死んでしまったようを生き返らせたあと、煌は長い眠りについた。人一人の時間を巻き戻すためには、たくさんの力が必要で、そのために煌自身の生命を維持するための力まで使ってしまった。その後昏睡状態が長く続き、次に気付いたときには体は眠ったままで意識だけがはっきりした状態だったそうだ。そのときには燁はすでに煌の側にはいなかった。
「それで、煌が言うには燁なら煌の居場所がわかるんじゃないかって」
 煌の元へ夢渡ゆめわたりをした翌朝、居間に皆を集めてともえは煌とのやり取りを話した。
 煌が燁の夢の中に来ることができたのは、二人が元々一人だったということもあるけれど、燁の中にどうやら煌の力が相当量流れ込んでいるからだったようだ。燁の時間を戻すときに流れ込んだのだろう。
「だから、力の気配を辿れば煌の元にたどり着けるはずだって」
 どうする?と巴は小さく首を傾げて、長椅子に座る燁を見る。燁の隣には寄り添うようにあおいが座り、その肩を抱いている。
 燁と蒼は、一見すると蒼のほうが燁に執着しているように見えるが、実はその思いは燁のほうが大きい。燁にとって蒼が何よりの心の支えであることを巴は知っている。
「……でも、今は煌に会いに行ってる場合じゃないよな?」
 探るような燁の言葉に巴は微笑む。
「それが、そうでもなさそうなんだ。陸、アレ持ってる?」
「おう」
 呼ばれた陸が取り出したのはアレ……フォース増幅装置だった。
「これ……この前回収した分ね」
 それは先日燁を除く三隊長が回収してきたものだった。相手の男の生命力が残りわずかだったのが気がかりだ。
「そうそう。これは、この間皆が持ってきてくれたやつで、こっちがその前に地軍が持ってきてくれたやつ」
 二つは良く似ているけれども少しだけ違って見えた。
「地軍が回収してくれた方がどうやら廉価版れんかばんで、隊長たちが持ってきてくれた分が最新型みたいなんだ」
 それはつまり、このフォース増幅装置が結構な範囲に出回っている可能性が高いということか……
「これらの製造元の目星がついた。君たちには今度はそちらに飛んでほしいんだ」
 巴の言葉に、火群四軍の隊長たちの間にピリッとした空気が流れる。
「それと煌にどんな関係が?」
 燁の問いに巴は少し複雑な表情をしながら答えた。
「多分そこに煌がいる」
 製造元だと思われるのは、今や大財閥とも言われる企業の一つだ。その元をたどっていくとある施設に行き着いた。
「それが燁と煌がいた施設だよ。ただ……」
「ただ……?」
 らんが巴の言葉を繰り返す。
「ただ、製造元はわかったけど、作っている場所まではわからなかった」
 小さく息を吐きながら巴は言う。
「それを燁に探させるのか?」
 蒼の声は少し険があるが、巴はそれを甘んじて受け入れ、燁と彼の肩を抱く蒼をまっすぐに見つめて言う。
「燁にしかできないことだよ」
 そう、これは他の誰にもできない。燁にしかできないことだ。
「もっと時間があれば、地軍が見つけることもできたかもしれないけど……今はそんな時間がないんだ」
 ……
「大丈夫だよ!」
 一瞬重い沈黙が落ちたところに、燁の明るい声が響いた。
「大丈夫だよ。オレの中に煌の力があるんだろ?だったら、大丈夫」
 なにか強い確信があるかのような口ぶりに、それまで硬かった他の隊長たちの表情もわずかに緩む。
 いつだってそうだ。燁の明るさや笑顔に、救われる。たとえそこに今は根拠がなかったとしても、燁は必ずやり遂げるだろう。彼らの良く知る燁は、そうだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...