魔法学校のアリス~いじめを受けて退学した少女は、新たな魔法学校で花を咲かせる~

イズミント(エセフォルネウス)

文字の大きさ
6 / 12

第6話 幕間~その頃のクレス達とワルジール魔法学校~

しおりを挟む
【Side クレス】

「クレス、俺だセイルだ。 イリスも一緒だ」
「ああ、入ってくれ」

 私、クレス・エトワールはイリスが呼んだかつての勇者でアリスくんの父親であるセイル・パリカールとオルクスの宿屋で合流した。
 これから出す話題は、当然ワルジール魔法学校関連だ。

「久しぶりだな。 こうしてお前の顔を見るのは。 カティアとエイスは?」
「我が妻のカティアは、早速捜査に向かっているさ。 エイスは王都での仕事で忙しいようだ」
「エイス先輩も真面目だからねぇ」
「全くだ。 カティアの行動力の早さといい勝負だぜ」

 まず、セイルはかつてのメンバーだった我が妻のカティアと【タンカー】だったエイスについて尋ねたようだ。
 カティアはイリスの報告を聞き、早速捜査をしてくれているが、エイスは王都で騎士団長をしている関係上、来れないようだ。
 イリス曰く、エイスは真面目だったからな。

「で、早速本題になるが……」
「ああ、うちの娘がフリスク一派にいじめられたんだってな」
「ええ。 ミーナちゃんやジャック君から聞いて、クレームを何度も入れたけど、聞く耳持つどころかもみ消されたのよ」

 再会もそこそこに、早速私は本題を切り出す。
 セイルも察したようで、すぐにイリスから聞いた内容を言い、イリスも続いた。
 ここに来るまでに、その内容はイリスから聞いているセイルだが、改めて表情を歪めた。

「王家へと経由しても平気でもみ消しを行うあたり、フリスクの背後には王家に匹敵する力を持つ存在がバックにいると考えていてな」
「なるほど、カティアはそれを調査していると……」
「そういう事だ。 彼女の調査は信頼できるからな」

 私がカティアがすぐに捜査に入った理由に、王家を経由してのクレームももみ消しにできるという事から、フリスクの背後に王家の力に匹敵する存在がバックにいる可能性を示唆した。
 セイルも流石は元勇者なだけあり、その理由に納得した。

「可能性としたら、【奴】だろうが……」
「ブラッド・クーデルカ元第三王子だな? 奴はあまりにも酷い思想を抱えているから国王によって【深淵アビスの地】へと送られたそうだが……」
「だが、6人目の仲間……、アイリスがその場所を自力で脱出したのを目撃したらしい」
「アイリスが!?」

 まさかのセイルからの情報。
 深淵の地へと送られたはずのブラッド・クーデルカが自力で深淵の地を脱出した様子を我らの6人目の仲間のアイリスが見たと言う。
 本来、そこに送られた場合は二度と脱出が出来ないはずなのだが……。

「となると、確実にフリスクの背後にいるのはブラッドの可能性が……」
「ありえそうだ。 奴は全ての女性を自分の物とし、世界も自分が管理すべきという歪んだ考えだったからな。 フリスクの初期魔力至上主義もブラッドにとっては最適な思想なのだろうな」
「とにかく、カティアさんの捜査の結果を待つしかないわね」
「そうだな。 彼女の捜査力を信じるしかないな。 どうやってあの【深淵アビスの地】を脱出したかも含めて」

 ここで予測を言い合ってもどうにもならない。
 ブラッド・クーデルカがフリスク一派のバックにいるのかを含めて、我が妻のカティアを信じるしかないだろう。

「俺達の方でも動いてみる。 娘のアリスを頼むぞ、クレス」
「ああ、任せてくれ」
「お願いね、クレス。 おやすみなさい」

 そう言って、セイルとイリスは私の部屋を出た。
 これから私が立ち上げた魔法学校に入る予定のアリスくんとその友人たちを預けるんだ。
 責任をもって、卒業させないといけないな。

 そう考えながら、私は紅茶を飲み干すのだった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【Side ワルジール魔法学校】

「アリスさんとミーナさんとジャック君が退学したのね」
「ああ、そうらしい。 フリスクに校長が変わってから、退学者が一気に増えたな」

 一方のワルジール魔法学校では、フリスクが校長になってから、初期魔力で校内ナンバー1とナンバー2になった男女がアリス達の退学について触れていた。
 余りにも多すぎる退学者に自分達は、無力感で一杯だった。

「特にアリスさんは、フリット校長に気に入られた子だったからね。 余計にフリスク一派に目を付けられたんでしょうね」
「らしいな。 失禁事件もあったようだしな……。 初期魔力が低いからってここまでするのかと思ったが……」
「元々、努力をする子だったからね、アリスさんは」

 一組の男女は、アリスがフリット校長時代には努力している様子を気に入られた事もあってか、フリスク一派からは不快感を露にしていた。
 だからこそ、初期魔力が低いと分かれば、トイレに行かせずに失禁させるなどのいじめをフリスク一派は行ったのだ。

「それでどうするの、キルス? 私はこのままここで燻るのは御免こうむるわよ」
「愚問だな、ルリルラ。 俺もここを退学するさ。 そのための準備もようやく終わった所だ」
「準備?」
「ああ、ここでのナンバー1とナンバー2の俺達は何としても退学を阻止するはずだ。 それをさせないための……な」

 キルスという男子にこれからどうするのかと聞くルリルラという女子生徒。
 彼女自身は、このままフリスクの思想に毒されたワルジール魔法学校で燻るのは嫌なようだ。
 だが、キルスもここの退学を決意しており、そのための準備がようやく完了した所だ。

「なるほどね。 どんなのかは楽しみにしてるわ。 さて、私も準備をしておかないとね」
「そうした方がいい。 【クーデルカの聖魔女】と呼ばれたイリスさんのクレームすらもみ消す輩だ。 クーデターでも企んでるだろうしな」
「その一端を担いたくはないからね」

 イリス・パリカールのクレームすらもみ消し、いじめはなかったとして処理するフリスク一派の事だ。
 キルスはクーデターを起こすのではと予測していた。
 その一端を担いたくないルリルラも、早急にワルジール魔法学校を退学するための準備を始めるのだった。

 これが、フリスク一派に支配されたワルジール魔法学校の崩壊の序曲なのである……。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません

紫楼
ファンタジー
 母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。  なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。  さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。  そこから俺の不思議な日々が始まる。  姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。    なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。  十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...