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04 少女の事情と追放の末路
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「まさか『追放』という禁忌を犯す冒険者パーティが現れるとはな」
「父さん……」
モニカの話から少しして、エヴァンが表情を歪めたままこう言った。
レクスもフェリアも、そしてアリスもどういう意味かを察したようだ。
「確か冒険者ルールでパーティー脱退は対象者……この場合はモニカとココアがギルドに申し出しない限りパーティ内で勝手に脱退はできない決まりだったな」
「そうね。 確か対象者が死んでいる場合は遺体、もしくは遺品をギルドに持ってこないと脱退手続きできないとも言ってたわね」
「じゃあ、モニカちゃんが言ってたのは……」
「ルールの穴を突いて、あらゆる理由を付けて偽りの報告をしようとしていたんだろうな。 少しギルドに行ってくる」
エヴァンが何か気になったようで、すぐにギルドに向かうと言って出ていく。
そして残されたのはレクスとアリス、そしてフェリア。
さらにモニカとまだ目覚めないココア。
追放という内容を聞いて重苦しい空気になっているが、三人は敢えて話を続ける。
「お兄ちゃん、お義父さんの言ってたルールの穴って?」
アリスが気になっていたルールの穴とされる内容をレクスが説明する。
「多分、凶悪なスライムに溶かされるか、捕食系の魔物に食べられるかだ。 この場合、遺体も遺品も残らない可能性があるから生死の確認が出来ないんだ」
「そういう事なのね。 つまり、モニカちゃんとココアちゃんが捕食で死んでくれれば面倒な手続きをしないで済むと……」
「おそらくそうだと思います。 向こうはわざわざギルドに私達を同伴で脱退手続きをするなんてしたくはなかったのでしょう。 何故なら私とココアはギルドを介してそのパーティーに入ったのですから」
「ギルドを介して?」
ルールの穴とされる内容にフェリアも理解し、モニカもそうであると否定はしなかった。
ただ、モニカとココアが彼女達を追放したパーティにはギルドを介して入ったという事にフェリアは首を傾げる。
そこに再びレクスが説明をする。
「パーティに加入申請するにはパーティリーダーに直接掛け合うか、スカウトされるかで加入の同意をした後でギルドに手続きを行う事でようやくパーティに入ることが出来るんだ。 でも、先にギルドを介してのパーティ加入は加入先のパーティの同意なしで強制的に加入手続きがされるんだ」
「じゃあ、そのSランクパーティは?」
「どうも向こうは即戦力を欲していたようでした。 ですが、ギルドを介して弱い私達が入ったことで不快感を示したようです」
「ただ、ギルド曰くSランクパーティ維持の条件は弱者を育てる事が必須項目の一つだ。 ギルドの顔にもなる以上、それの拒否は許されないはず」
モニカ達を追放したSランクパーティは常に即戦力を欲していたそうだ。
だが、ギルドが弱いモニカ達をパーティに加えた事でそのSランクのパーティメンバーは不快感を露にしたらしい。
それでもレクスが言うには、Sランクパーティを維持する必須条件の一つにモニカ達などの弱者を育てるというのがあるようだ。
「という事は、それを拒否した形となる場合は……」
「モニカ達を追放したSランクパーティはランクダウンは避けられない。 必須条件の一つを拒否した上に追放だからよくて2ランクダウン、最悪4ランクは落とされるだろうな」
「そうであればいいのですが……」
レクスとフェリアの話を聞きながら、モニカはそうあって欲しいという願望と自分自身への不安を過らせた。
「ん……」
「あっ、ココアちゃんが目覚めるよ」
「ココアッ!!」
「あ、あれ……、姉様? ここは……?」
しばらく目が覚めていなかったココアが、ようやく目が覚めたようでたまらずモニカは彼女を抱きしめた。
ココアはキョロキョロとしながら驚いているような様子だ。
「ここはオルフェス男爵領の中心地の町【シルト】よ。 私達、助かったのよ」
「そっか、私は姉様をポイズンスライムから庇って……」
「ポイズンスライムかぁ……。 厄介な魔物に出会ったわね」
「確かBランクのスライムだったな」
「ええ、毒素で動けなくした獲物を取り込んで溶かし尽くす凶悪なスライムなのよ。 これでようやく読めたわ。 あのパーティはあなた達をポイズンスライムの餌食にしてからあることなす事報告しようとしたのでしょうね」
「え……!? そんな……じゃあ私達は……」
「ココア、今はここの領主様がギルドに行ってくれている。 打開策はあるはずよ」
「う、うん……」
思い出したかのようにココアが語った魔物の名前を聞いて、全てを察したフェリアがSランクパーティの所業を予測した。
先ほど言った冒険者のルールの穴を突く形でモニカ達を遺体や遺品無しで死なせるつもりだったようだ。
それを聞いたココアが絶望の表情を浮かべるが、モニカが領主のエヴァンがギルドに向かった事を告げて打開策はあるからと落ち着かせる事で、ようやく安堵したようだ。
「戻ったぞ」
そんな時、ギルドに向かっていたエヴァンが戻ってきた。
「お帰り父さん、ココアちゃんも目覚めたよ」
「そうか。 それはよかった」
「それで、どうだったの?」
「ああ、二人が生きている事をギルドネットワークで拡散してくれた。 これにより彼女達を追放したSランクパーティは何らかの罰が下されることになるようだ。 後、ギルドのスタッフがこっちに来て向こうの脱退手続きを進めたいようだ。 あんな事件があったからな」
「そうですか……」
「ギルドネットワークで広まっているから、隠しようがないな。 奴らは他の町での冒険もできないんじゃないか?」
「うん。 あんな事したからねぇ」
エヴァンから聞かされた内容に二人は安堵する。
後ほど正式な脱退手続きをすることと、彼女達を追放したSランクパーティの厳罰が決定されたようだ。
モニカとココアの生存と彼女達が追放されたという内容がギルドネットワークで即時に拡散されたので、追放したSランクパーティは今後肩身の狭い思いを強いられるだろう。
レクスとアリスはそう考えていた。
「父さん……」
モニカの話から少しして、エヴァンが表情を歪めたままこう言った。
レクスもフェリアも、そしてアリスもどういう意味かを察したようだ。
「確か冒険者ルールでパーティー脱退は対象者……この場合はモニカとココアがギルドに申し出しない限りパーティ内で勝手に脱退はできない決まりだったな」
「そうね。 確か対象者が死んでいる場合は遺体、もしくは遺品をギルドに持ってこないと脱退手続きできないとも言ってたわね」
「じゃあ、モニカちゃんが言ってたのは……」
「ルールの穴を突いて、あらゆる理由を付けて偽りの報告をしようとしていたんだろうな。 少しギルドに行ってくる」
エヴァンが何か気になったようで、すぐにギルドに向かうと言って出ていく。
そして残されたのはレクスとアリス、そしてフェリア。
さらにモニカとまだ目覚めないココア。
追放という内容を聞いて重苦しい空気になっているが、三人は敢えて話を続ける。
「お兄ちゃん、お義父さんの言ってたルールの穴って?」
アリスが気になっていたルールの穴とされる内容をレクスが説明する。
「多分、凶悪なスライムに溶かされるか、捕食系の魔物に食べられるかだ。 この場合、遺体も遺品も残らない可能性があるから生死の確認が出来ないんだ」
「そういう事なのね。 つまり、モニカちゃんとココアちゃんが捕食で死んでくれれば面倒な手続きをしないで済むと……」
「おそらくそうだと思います。 向こうはわざわざギルドに私達を同伴で脱退手続きをするなんてしたくはなかったのでしょう。 何故なら私とココアはギルドを介してそのパーティーに入ったのですから」
「ギルドを介して?」
ルールの穴とされる内容にフェリアも理解し、モニカもそうであると否定はしなかった。
ただ、モニカとココアが彼女達を追放したパーティにはギルドを介して入ったという事にフェリアは首を傾げる。
そこに再びレクスが説明をする。
「パーティに加入申請するにはパーティリーダーに直接掛け合うか、スカウトされるかで加入の同意をした後でギルドに手続きを行う事でようやくパーティに入ることが出来るんだ。 でも、先にギルドを介してのパーティ加入は加入先のパーティの同意なしで強制的に加入手続きがされるんだ」
「じゃあ、そのSランクパーティは?」
「どうも向こうは即戦力を欲していたようでした。 ですが、ギルドを介して弱い私達が入ったことで不快感を示したようです」
「ただ、ギルド曰くSランクパーティ維持の条件は弱者を育てる事が必須項目の一つだ。 ギルドの顔にもなる以上、それの拒否は許されないはず」
モニカ達を追放したSランクパーティは常に即戦力を欲していたそうだ。
だが、ギルドが弱いモニカ達をパーティに加えた事でそのSランクのパーティメンバーは不快感を露にしたらしい。
それでもレクスが言うには、Sランクパーティを維持する必須条件の一つにモニカ達などの弱者を育てるというのがあるようだ。
「という事は、それを拒否した形となる場合は……」
「モニカ達を追放したSランクパーティはランクダウンは避けられない。 必須条件の一つを拒否した上に追放だからよくて2ランクダウン、最悪4ランクは落とされるだろうな」
「そうであればいいのですが……」
レクスとフェリアの話を聞きながら、モニカはそうあって欲しいという願望と自分自身への不安を過らせた。
「ん……」
「あっ、ココアちゃんが目覚めるよ」
「ココアッ!!」
「あ、あれ……、姉様? ここは……?」
しばらく目が覚めていなかったココアが、ようやく目が覚めたようでたまらずモニカは彼女を抱きしめた。
ココアはキョロキョロとしながら驚いているような様子だ。
「ここはオルフェス男爵領の中心地の町【シルト】よ。 私達、助かったのよ」
「そっか、私は姉様をポイズンスライムから庇って……」
「ポイズンスライムかぁ……。 厄介な魔物に出会ったわね」
「確かBランクのスライムだったな」
「ええ、毒素で動けなくした獲物を取り込んで溶かし尽くす凶悪なスライムなのよ。 これでようやく読めたわ。 あのパーティはあなた達をポイズンスライムの餌食にしてからあることなす事報告しようとしたのでしょうね」
「え……!? そんな……じゃあ私達は……」
「ココア、今はここの領主様がギルドに行ってくれている。 打開策はあるはずよ」
「う、うん……」
思い出したかのようにココアが語った魔物の名前を聞いて、全てを察したフェリアがSランクパーティの所業を予測した。
先ほど言った冒険者のルールの穴を突く形でモニカ達を遺体や遺品無しで死なせるつもりだったようだ。
それを聞いたココアが絶望の表情を浮かべるが、モニカが領主のエヴァンがギルドに向かった事を告げて打開策はあるからと落ち着かせる事で、ようやく安堵したようだ。
「戻ったぞ」
そんな時、ギルドに向かっていたエヴァンが戻ってきた。
「お帰り父さん、ココアちゃんも目覚めたよ」
「そうか。 それはよかった」
「それで、どうだったの?」
「ああ、二人が生きている事をギルドネットワークで拡散してくれた。 これにより彼女達を追放したSランクパーティは何らかの罰が下されることになるようだ。 後、ギルドのスタッフがこっちに来て向こうの脱退手続きを進めたいようだ。 あんな事件があったからな」
「そうですか……」
「ギルドネットワークで広まっているから、隠しようがないな。 奴らは他の町での冒険もできないんじゃないか?」
「うん。 あんな事したからねぇ」
エヴァンから聞かされた内容に二人は安堵する。
後ほど正式な脱退手続きをすることと、彼女達を追放したSランクパーティの厳罰が決定されたようだ。
モニカとココアの生存と彼女達が追放されたという内容がギルドネットワークで即時に拡散されたので、追放したSランクパーティは今後肩身の狭い思いを強いられるだろう。
レクスとアリスはそう考えていた。
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