追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第二章】ユウカ・バーレン

【第六話】ラウド・ウォーリア②

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「そっちは耳がいいだけで頭が最悪に悪いね。獣だから私の言いたいことが上手く伝わらなかったのかな?」


ラウドの表情はもう真っ赤だった。

火を噴くように怒り顔で怒鳴り散らし、ユウカも負けじと言い返す。

そんな二人の言葉の乱戦は無駄に続き続け、収まる気配を全く見せなかった。

恭司はそんな中、一人落ち着いた態度で自分の分のコーヒーを手に取り、口に含む。

もはや三人というよりは二人+一人のような立ち位置だが、恭司は全く気にしてない。

コーヒーのほろ苦さを一人で味わいながら、二人のやり取りに目を向ける。


(多分、普段からこんな感じで絡むから、友達出来ないんだろうなぁ……)


カップを机上の皿に戻しつつ、恭司はユウカに目を向けながら、内心でしみじみと呟いた。

完全に蚊帳の外に置かれている恭司は、そのまま背景に徹しながら、自分以外の人間と話すユウカを側で観察することにしている。

恭司と話している時のユウカではなく、普段のユウカを見るための良い機会だと思ったのだが、その効果はテキメンだった。

ユウカはなんだかんだでヒートアップしているのか、恭司のそんな様子にも気付いていないようだ。

つまり、

これが、恭司がいない時の素のユウカなのだろう。

呼吸するように毒舌を吐く姿を見て、恭司はただなるほどなと頷いた。


(他人からの悪意に対して、反応がひどく敏感になっている。多分、小さい頃からずっと敵意ばかりを向けられて育ってきたんだろうな。反撃を繰り返すうち、それが自分の中で当たり前になったってとこか)


恭司はユウカの様子をそう読み取った。

ユウカは空気を読めないのではなく、読まない人種だ。

相手からどう思われても構わないという意識が強いためだろう。

言葉には常にトゲが剥き出しになり、他人に対して攻撃的な姿勢を崩さない。

その理由がこれなのだと、恭司はようやく真に納得できた。

アベルトから元々言われていた内容ではあったものの、実物を見てようやくしっくりきたのだ。

恭司以外の人間と話すユウカはひどく閉鎖的で、他人の意見をほとんど聞かない。

他人から言われるものは基本的に全て無視か防御か迎撃で跳ね返す性質がある。

この状況を見るに、ユウカはおそらく、そもそもの話で友達が欲しいということ自体思えなくなっているのだろう。

他人からの言葉に対し、受け入れるという選択肢は彼女には無いのだ。

ふと、恭司の頭の中に、アベルトから言われた話が本人音声で再生された。


『願わくば、あの娘を信頼してやってほしい。あの娘の友達になってやってほしいんだ』


アベルトはひどく真面目な顔で、恭司にそう話したものだった。

あの時は何故、親が殺人鬼相手にそんなことを頼むのかと思ったものだが、ユウカが普段からこんな感じで外部の人間と絡んでいたのでは、その理由も分からないではないなと思った。

 確かにこの調子では、ユウカは一生を独りで過ごすことになりかねないだろう。

例え、世界中を敵に回す危険人物であろうと、アベルトにとっては、娘を独り身から解放する大チャンスでもあったというわけだ。

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