追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第二章】ユウカ・バーレン

【第六話】ラウド・ウォーリア⑦

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「え……?」


ユウカはいきなりで驚いたのかビクッと体を揺らし、後ろを振り返った。

恭司は冷静な笑みを浮かべ、小さめの声で話しかける。


「ユウカ、そろそろ時間だ」


そういう設定だということくらい、ユウカにもすぐに分かった。

もちろん、特に差し迫った用事など無い。

用事があることにして撤退するための方便だ。


「……誰だお前は」


しかし当然、ラウドにそんなことは関係ない。

完全に敵意剥き出しの眼光を恭司に向け、事前に予想した通りの問いかけをしてきた。

本当なら今さらだが、ラウドにとっては恭司などその他大勢の認識でしかなかったのだろう。

そんな男が自分たちの間に横から入り込んできたとあっては、当然注目するに決まっている。

本来、それが嫌だから会話に参加しなかったのだが、それはもう仕方がない。

せめて、相手の記憶に残らないよう配慮した対応をする必要がある。


「おい、何を黙っている。名前を聞いているんだ」

「貴様に名乗る名などない」


いや駄目だった。

普段よっぽど出ることの無い返答の仕方をしてしまった。

ラウドの目には訝しさが溢れ、さらには痛々しいものを見るような憐れみも含まれている。

興味は引いただろうが、求めていた展開とは違った。


「恭司……」


ユウカは申し訳なさそうな顔で恭司を見る。

事の大きさ、恭司の言わんとしていることは分かったのだろう。

だが、

肝心の殺気は引っ込んでいない。

申し訳なさそうにはしているが、それは『分かった上でも尚やる』という意味だ。


「…………名を名乗らんというのならそれでも構わん。だが、我々の戦いに横入りする理由くらいは答えてもらおうか。お前は今、貴族の人間に対して楯突こうとしているのだぞ?」


相変わらずの威圧と脅しはあったが、ラウドは意外にも名前に興味を持ってはこなかった。

第一条件クリア。

全く狙ってないが、あの痛々しい言い回しにも一応意味はあったということだ。


(まぁ、それでも、やっぱり目立つことは避けなければならないのだが)


それに、介入もした以上、ユウカにこのまま戦わせるわけにもいかない。

ユウカは怒るだろうが、これは恭司だけでなく、ユウカのためでもあるのだ。

今までどうだったかは知らないが、ユウカの立場で貴族と揉めれば、恐らくどんな理由があっても穏便な解決にはならない。

悪ければ犯罪として扱われる可能性だってある。

それも、ユウカだけが悪く扱われるような、普通はあり得ない結末になる気配がひどく濃厚だ。

恭司は今の世の中についてほぼ知らないことだらけだが、傍若無人なラウドの態度を見て、貴族の権力に対する優位性をはっきりと確信している。

アベルト側の力については未確定だが、問題は起こさないのが一番良いに決まっているのだ。

恭司はこの中で一人、どうしようかと思考を巡らす。

覚悟を決めて動き出しはしたものの、結局状況が待つことを許さなかっただけで、具体的な策は何も用意できていないのだ。

必要に駆られたから動いただけ。

最悪このまま走って逃げなければならない。

しかしその時、

この状況の中で、3人のもとに近づいてくる人影があった。


「ねぇ。何やってるの、ラウド」


その人は、女性は、近づくや否やすぐにそう尋ねてきた。

幼さの残る、可愛らしくも落ち着いた声だった。

恭司はそちらに目を向けると、小さい女の子がラウドの後ろに立っている。

体は小学生のようで、表情に乏しい少女だった。

元々ラウドの席で、ラウドの前に座っていた娘だ。


「め、『メルディ』……」


ラウドはそんな『メルディ』という少女を前にして、バツの悪そうな、ドギマギした態度を見せた。

まるで、少し恐れているかのように見える。
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