追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第三章】閑話休題

【第八話】お風呂事件簿①

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朝、眼が覚めると、時刻は8時を示していた。

普段は5時か6時には自然と目がさめる恭司が、今日は普段より2時間以上遅く目覚めてしまった。

やはり、恭司にとってもあの一件はひどく疲れる内容だったのだろう。

なんせ、まだ日の登ってない早朝からアベルトと会話し、初めての街に買い物に行って、貴族と初めて会ったかと思えばすぐにあの一件が起きて、その後帰ったら再びアベルトと対峙し、最後はユウカに精一杯のフォローを施していたのだ。

恭司からすれば、戦闘一つこなす方がよっぽど楽なものだ。

いっそのこと、何も考えずにアベルトの傀儡となる方が負担自体は少ないのかもしれない。

こういうことは本当に全く慣れていないのだ。

昔の自分は物事一つ一つに対してもっともっとシンプルに考えていたのか、どうやらメンタル的にも能力的にも、こういう心理戦に素養はほとんど無いらしい。

恭司は大きくため息を吐いた。


「ユウカはもう起きてんだろうな。我ながら情け無いザマだ」


恭司はベッドから足を出すと、立ち上がってグンと体を伸ばした。

今日は特に用事は無いはずだから、ゆっくり休めるはずだ。

ここ最近ずいぶんと濃い1日が続いていたから、羽根を伸ばすには丁度いいかもしれない。


「ユウカでもからかいに行くか」


恭司は勝手にそう決めると、階段を下りて1階のリビングに向かった。

恭司より早く起きたユウカが先にいるはずだ。

ユウカはいつも6時か7時くらいに起きる。

恭司はリビングのドアノブに手をかけると、そのまま中に入っていった。

しかし、


「あれ?」


ユウカの姿はそこには無かった。

リビングはもぬけの殻で、シンーーと静まり返っている。

食器棚も昨日の状態から何も変わっていないし、誰かがいた様子も無い。

もしかしたらまだ起きていないか、自室でダラダラしているのかもしれないと、恭司は勝手に当たりをつけた。

そして、

いないならいないで、恭司はいつも通り、コーヒーの準備に取り掛かる。

アベルトの持ってきた上等なインスタントはまだ残っているし、どうせなら2人で飲みたいと思って、コップは二つ用意した。

コップの位置はいつも通りの隣り席だ。

昨日の夜で気まずい雰囲気は既に解消されただろうし、恭司としてもユウカとは今後も仲良くやっていきたいから、変に距離を開けないよう配慮したつもりだ。

コーヒー自体も、冷めるといけないのでまだ淹れないことにする。

だが、

そうすると、ただ何もせず待っているのも手持ち無沙汰だった。

朝ご飯を作っても良いが、それも結局コーヒーと一緒で、先に作ると冷めてしまう。

なので、

恭司はユウカの部屋にまで様子を見に行くことにした。

恭司がこの家に来てからもうそれなりに経つが、ユウカの部屋にお邪魔するのは、実は初めてのことだ。
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