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【第六章】クレイア

【第十二話】実技訓練④

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「まぁ、別に個人だったとしても出てなかったと思うけどねー。どうせ大会の主役は貴族たちで、他の人間なんてせいぜい盛り上げ役のかませ犬扱いだし」

「そんな感じなのか……。やっぱり貴族様ってのは強いんだな」

「そりゃそうだよ。あいつらはそれぞれのユニークな特異スキル持ってる上に、子供の時から戦闘や学術の修練に明け暮れてるんだから」

「そういえばラウドの時に言ってたな。面倒くせぇ……」

「そこについては同感だよ」


ユウカはそう言いながら体操着を持って、教室を出て行った。

恭司は手ブラのままその後を付いていく。

行き先は次の授業がある『格技場』だ。


「あっ、ちなみに、言った通り参加するにしても、チーム組めるのは『ランキング40位以内』の人間のみって制限もあるからね。恭司って今はBクラス最下位だから、まずはそこを目指さないと」


ユウカは恭司を後ろにして廊下を歩くと、エレベーターの前に来て格技場のある階数ボタンを押した。

他のクラスメイトたちは既に向かった後らしい。

他に教室に残っている人はいなかった。


「あぁ、なるほど……。その辺も含めて一度アベルトさんと打ち合わせしなきゃだな。イベントのこともあるし……」

「ボルディスの長男だっけ?大変だねぇ……。てか、そもそもそのイベントっていつあるの?」

「まだ未定だが、大会のことを考えると1ヶ月後って所だろうな……」


恭司は残念そうに俯く。

授業にイベントに大会と、厄介ごとばかりで考えるだけで鬱になる。

アベルトが用意したイベントは『LOVE祭り』という、恋人限定のペアタッグ戦のバトルロワイヤルだったと思うが、兎にも角にもマトモに用意する時間がない。

まるでわざとそう仕向けているかのようだ。

恭司は何度目かのため息を吐き出すと、到着したエレベーターにユウカと共に乗り込む。


「お父さんも変なとこでイジワルだよね。大会にしてもあと『半年くらい』しか残ってないし。あっ、そろそろ格技場着くよ」


最後に微妙に気になることを言って、ユウカはそのまま意識を授業に引き戻した。

出来ればまだ話していたかったが、エレベーターが止まって扉が開いたため、2人はエレベーターから降りる。

そこには、縦にも横にもただただ圧倒的に広い空間が広がっていた。

床には全て畳が敷き詰められ、その下からは相当分厚くて重厚な地盤を感じる。

この規格外に広い空間こそ、『格技場』だ。

次の授業は『実技訓練』で、教室ではなくこちらで行われることになる。


「もう流石に慣れてきたけどやっぱり広いな……」


恭司は少し遅れて意識を授業に戻しつつ、格技場の全体をザッと見回した。

このやたら広い格技場に今いるのはBクラスの人間だけのようだが、格技場が広すぎてBクラスの総勢40人がとても少なく見える。

面積に対して人数が噛み合っていない。

ただ、クラスメイトたちはその全員がそれぞれの武器を手にして待機しており、意外と雰囲気は殺伐としているようだった。

曲がりなりにも『武芸科』ということだ。

『実技訓練』ということはそういうことなのだろう。

少しだけ楽しみになってきた。
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