追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第六章】クレイア

【第十二話】実技訓練⑤

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「ちなみに、実技訓練はランキングを上げるいいチャンスになるよ。『実技』って名の通り、この授業では先生主導でマッチング決めて公認のランキング決定が執り行われるの。初っ端からラッキーだね」

「いや、いきなり過ぎて付いていけねぇよ……。数学とか国語とか、もっと普通の授業挟んでからでもいいと思わないか?」

「歴史があったじゃない」

「あんなトラウマメイキングの時間のどこが普通なんだ」


普通じゃないと感じるのは全校で恭司だけだろうが、ユウカはツッコまなかった。

授業の始まりまで数分を切っている。

そろそろ着替えないといけない。


「てか、俺まだ体操服ねぇんだけど……」


恭司はそこで体操服をまだ持っていないことに気がついた。

支給されるのか買わなければならないのか、それすら知らない。


「あー、体操服は特に指定の物とかないからねー。完全に個人の自由に任されてるの」

「つまり買っておかなきゃならなかったんだな?」


先日の街での買い物を思い出す。

出来ればそれも言っておいてほしかった……。


「まぁ、ぶっちゃけ指定が無い分、そのまんまでもいけると思うよ。これが体操服ですって言い張っちゃえばいいんだよ」

「いや制服は指定なんだからバレバレだろ……」


とはいえ、参加するにはそれしかないのが現状だった。

普通に考えれば参加せずに見学するのが妥当なのだろうが、参加するしないはともかく大会までもう半年しかない。

大会参加の最終決定はアベルトが行うものの、その時になってそもそも参加自体出来なかったというのは避けたい事態だ。

参加するしないの判断をアベルトが正当に下すためにも、「40位以内」という前提条件はせめてクリアしておかなければならない。

つまり、

ランキングを上げられるチャンスはなるべく有効に活用するべきだ。


(それに、クラスメイトたちの実力を確認するいい機会にもなるか……)


恭司は改めてクラスメイトたちを見回す。

手に持っている武器はそれぞれ個性的なものが多く、各自こだわりがあるようだった。

剣や槍、弓など、種類も豊富だ。

家柄なのか実力なのか、高価そうなものも数多く見受けられる。

いかにも武芸科らしい光景だが、恭司はそこで、とあることに気がついた。


「俺、武器も持ってきてねぇ……」


武芸科としてあるまじきことだが、自分の武器について完全に失念していた。

学校に行ったことがないは言い訳かもしれないが、今ここに至るまで全く気づけなかった。

経験が無かったとしても、武芸科である以上、こういう授業があることは事前に想定出来たはずだ。

覚悟が足らなかったと、そう自覚せざるを得ない。

恭司は自分の不甲斐なさと申し訳なさの入り混じった表情で、ユウカを見る。

こうなってしまってはもうユウカに借りるしかない。

しかし、

そんなユウカは腕を組んで仁王立ちしたまま、手ぶらで威風堂々と言い放った。


「大丈夫!!借りられるよ!!」

「お前もか」


ユウカも忘れていた。


仕方がないので恭司は先生に言って2人分の木刀を借りることにした。

ユウカ曰く、武芸科のある学校なのだから武器くらいレンタルできるはずということだ。

まぁ、そもそも武芸科に通う生徒が武器を忘れることなど早々ないとは思うのだが……。

兎にも角にも恭司は先生のもとへと向かう。

先生は格技場のど真ん中で集合の笛を鳴らす直前だったが、恭司が転校生ということもあってそう邪険にされることもなかった。

日焼けした肌にムキムキの体でいかにも体育教師という見た目だったが、意外と中身はちゃんとした優しい性格の先生のようだ。

だからこそ、

恭司の姿を見て普通に聞かれた。


「体操服は?」

「これが体操服です」


引かれた。

やはり無理があったらしい。

恭司は木刀を2本持ってユウカのもとに戻ると、ユウカは親指を立ててニカッと笑う。


「ナイスファイトッ!!」

「やかましいわ」


そうして、恭司は制服のまま、借りた木刀で授業に参加することとなった。

ユウカはその間に着替えていたのか、既に体操着姿となっている。

どこにでもありそうな普通のジャージ姿だ。

相変わらずファッションにはまるで興味がないらしい。

似合っているが納得出来ない。

そして、

そんな中、面倒事を片付けた先生は改めて笛を吹き、生徒たちを集合させた。

授業開始の合図だ。

ようやく2時間目の『実技訓練』が始まる。
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