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【第六章】クレイア
【第十三話】ククル・ウィスター<1>⑤
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「ッ!!」
突如現れた殺気。
自分を殺すと明確に感じた殺意。
『久しぶり』の感覚。
恭司は咄嗟に先生から借りた木刀を手にし、その場から離れた。
ものの一瞬で遠くまで移動したそれは、ユウカが模擬戦で使っていた『瞬動』に他ならない。
瞬動で数メートルの距離をあっという間に移動した恭司は、木刀を構えて殺気の出所を探る。
「誰だ……」
それは低くて威圧的な声だった。
普段の恭司なら絶対に出さない声だった。
敵を前にした戦士の顔。
殺し合いを日常としてきた戦人の表情。
ギルス・ギルバートなどではない。
『三谷恭司』がそこにいた。
まだ殺気も何も出てはいないが、それは間違いなく伝説の殺人鬼のそれだった。
恭司は注意深く周りを見回すが、周りにはただのクラスメイトたちしかいない。
クラスメイトたち……。
そう、クラスメイトたちしか……いなかった。
「………………」
思わず黙ってしまう。
いきなり瞬間移動のような動きをした上に木刀を構えて周りを見回す動きをした恭司のことを、クラスメイトたちはかなり訝しんだ目で見ていた。
痛い子を見るような目だった。
正直かなり引かれていた。
事態の理解には数瞬ばかり時間が必要だったが、兎にも角にも状況を繕わなければならない。
恭司は冷静に木刀をしまい、何事もなかったかのようにスッと立ち上がる。
「テヘペロ」
恭司を見る痛い子目線が、今よりももう一段階上がった。
「いやいや何してんの?ギルス君??」
ふと、よく見知った声に話しかけられた。
目を向けると、案の定、ユウカが訝しげな顔をして立っている。
対戦はもう終わったらしかった。
「早いな。もう終わったのか」
恭司がユウカを送り出してから、時間としては3分くらいだ。
対戦の進行の時間なども加味すると、ほとんど秒殺に近い倒し方をしてきたらしい。
「まぁ、相手ザコだからね。それより、これはどういうこと?ギルス君??」
「ギルス君」にやたらとアクセントがかかっている気がするが、あまり気にしないことにした。
今は確かに緊急事態だ……。
「いやお恥ずかしい限りなんだが……ゴキブリを見てつい興奮してしまったんだ。虫が嫌いでな……」
クラスメイトたちから失笑が起きた。
ユウカはかなり怪しんだ様子だったが、本当のことをこの場で言うわけにはいかない。
あの殺気は完全に恭司1人を狙ったものだった。
ユウカにすら気付かれないくらい、精密で局所的なものだった。
思わず漏れ出たような、事故に類するものではないのは確実だ。
『敵』は確実に何かの意図を持ってやってきている。
慎重に対処する必要があった。
突如現れた殺気。
自分を殺すと明確に感じた殺意。
『久しぶり』の感覚。
恭司は咄嗟に先生から借りた木刀を手にし、その場から離れた。
ものの一瞬で遠くまで移動したそれは、ユウカが模擬戦で使っていた『瞬動』に他ならない。
瞬動で数メートルの距離をあっという間に移動した恭司は、木刀を構えて殺気の出所を探る。
「誰だ……」
それは低くて威圧的な声だった。
普段の恭司なら絶対に出さない声だった。
敵を前にした戦士の顔。
殺し合いを日常としてきた戦人の表情。
ギルス・ギルバートなどではない。
『三谷恭司』がそこにいた。
まだ殺気も何も出てはいないが、それは間違いなく伝説の殺人鬼のそれだった。
恭司は注意深く周りを見回すが、周りにはただのクラスメイトたちしかいない。
クラスメイトたち……。
そう、クラスメイトたちしか……いなかった。
「………………」
思わず黙ってしまう。
いきなり瞬間移動のような動きをした上に木刀を構えて周りを見回す動きをした恭司のことを、クラスメイトたちはかなり訝しんだ目で見ていた。
痛い子を見るような目だった。
正直かなり引かれていた。
事態の理解には数瞬ばかり時間が必要だったが、兎にも角にも状況を繕わなければならない。
恭司は冷静に木刀をしまい、何事もなかったかのようにスッと立ち上がる。
「テヘペロ」
恭司を見る痛い子目線が、今よりももう一段階上がった。
「いやいや何してんの?ギルス君??」
ふと、よく見知った声に話しかけられた。
目を向けると、案の定、ユウカが訝しげな顔をして立っている。
対戦はもう終わったらしかった。
「早いな。もう終わったのか」
恭司がユウカを送り出してから、時間としては3分くらいだ。
対戦の進行の時間なども加味すると、ほとんど秒殺に近い倒し方をしてきたらしい。
「まぁ、相手ザコだからね。それより、これはどういうこと?ギルス君??」
「ギルス君」にやたらとアクセントがかかっている気がするが、あまり気にしないことにした。
今は確かに緊急事態だ……。
「いやお恥ずかしい限りなんだが……ゴキブリを見てつい興奮してしまったんだ。虫が嫌いでな……」
クラスメイトたちから失笑が起きた。
ユウカはかなり怪しんだ様子だったが、本当のことをこの場で言うわけにはいかない。
あの殺気は完全に恭司1人を狙ったものだった。
ユウカにすら気付かれないくらい、精密で局所的なものだった。
思わず漏れ出たような、事故に類するものではないのは確実だ。
『敵』は確実に何かの意図を持ってやってきている。
慎重に対処する必要があった。
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