追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

文字の大きさ
95 / 134
【第六章】クレイア

【第十四話】ククル・ウィスター<2>①

しおりを挟む
格技場を出て一足先に教室へと戻った2人は、荷物だけ置いてすぐに人気のない所へと移動した。

恭司にはどこが適当か分からなかったため、移動先は完全にユウカのチョイスだ。

他に人がおらず、目立たなくて内緒話ができるというのが条件だが、恭司は愕然としていた。


「トイレは無いだろ……」


連れてこられたのはグラウンドに設置された男女共用トイレだった。

さすがスーパーエリート校なだけあって外でもちゃんと綺麗で清潔なのは有り難いが、いくらなんでもここは無いだろうというのが正直な感想だった。

男女共用なあたりに配慮は感じるが、他になかったのかと思わずにはいられない。

授業直前ということも加味すれば、まるで不良中学生のようだ。


「仕方ないじゃない。他は監視カメラやら人混みやらで、とてもじゃないけど内緒話なんて出来ないんだよ」

「そうは言っても、ここはなぁ……」


思わず便器の方を見つめる。

男性も女性も問題なく使用できるこのトイレは、ある意味で普通のトイレよりデリケートな場所だった。

そんな所に2人暮らししている男女の2人が同時に立ち入るということは、ある意味では非常に危険な行為とすら言える。

例え当人たちにそんなつもりは一切なかったとしても、邪推する人間は後を絶たない。


「だから仕方ないんだよ。今は次の授業の移動時間だから、こんな遠いトイレにわざわざ人なんて来ないし、監視カメラもここなら心配ないから一番安心なの。不埒で違法な奴も、この学校は恐ろしく厳密にチェックしてるしね」

「あー、そうなのか……」

「てことでほら、グチャグチャ言ってないでさっさと話す。急がないと、次の授業始まっちゃうよ」

「あ、あぁ……。まぁ、そうだな」


恭司は納得出来ない気持ちを抱えつつも、ユウカに押されてとりあえず話すことにした。

殺気を感じた辺りからここに至るまでの経緯について、なるべく手短に説明する。

要点を絞ったため全部ではないが、言いたいことはある程度伝わっただろう。

ユウカは神妙な顔付きで頷いた。


「なるほどねぇ……。ククルさんか……。恭司の懸念、少し可能性あるかもしれないね」

「ホントか?」


ユウカは慎重に頷いた。


「私はこのBクラスをとても気に入っているし、卒業までずっと在留し続ける気でいるけど、そんな私でも、このBクラスで油断できない人が2人いるのね。1人は担任のクリスで、そして後のもう一人こそが、そのククルさんなんだよ」


ユウカの言葉には真剣味が満ちていた。

それだけ、その2人については本当にそうだということなのだろう。

だからこそ、

恭司には疑問だった。


「クリス先生のことは確かに何となく分かるが、何でククルさんもなんだ?俺が言う前からそうだったってことだろ?」


ユウカは頷く。


「理由は2つあるよ。1つは、私と同じで手を抜いてまでこのBクラスに居続けていること。そしてもう一つは……」

「…………」

「彼女が、『クレイア』の一員かもしれないからだよ」


久しぶりのワードを聞いて、恭司はハッとなった。

『クレイア』については、アベルトから少しばかり話を聞いたことがある。

ユウカの母親が束ねる犯罪組織で、武力を用いた反社会行動を起こし続けている団体だ。

そして、

恭司やユウカと同じ技を使う集団とも聞いている。

三谷恭司と同じ技を使えるということは、恭司にとっても決して他人事ではない事案だ。

むしろ自分が撒いた種である可能性を考えると、完全に当事者といっても差し支えない。

そして、

クレイアはユウカが世間からこうまで嫌われている原因でもあり、ユウカがこんな性格になってしまった原因でもあるのだ。

要は事の根本的発端。

放置する理由はどこにもなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...