追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

文字の大きさ
98 / 134
【第六章】クレイア

【第十四話】ククル・ウィスター<2>④

しおりを挟む
「まぁ、最終的にどうするにせよ、今は目立たず騒がず近づかないが一番だね。下手に接触して正体バレたりしたら大変だし」

「あ、あぁまぁ……そうだな。それがいいな」


恭司は気を取り直し、冷静に答える。

今しがた頭の中に芽生えた考えは、ユウカには言わないことにした。

そのやり方は、確かに近付かないより楽で簡単に済むものかもしれないが、今の社会に生きる人間には少々理解されにくい手法だ。

それはユウカに対しても例外ではない。

例え記憶は無かったとしても、恭司の持つ倫理観や考え方は当時の時代のものだ。

人殺しなんて普通だったあの時代には、『利己の目的の達成のために人を殺すことが間違っている』なんて考え方は存在しなかった。

倫理観など存在しないに等しかったのだ。

だからこそ、

記憶は無くても恭司はそんな考えを当たり前になぞってしまう。

癖や習慣は記憶以上に人格形成に関わっていて、そればかりはなかなか変えられないのだ。

恭司の考え方はこの時代にそぐわなくて、それが間違っていると分かっていても、すぐにそれを変えることは出来ない。

しかし……


「……恭司?」

「いや……なんでもない。それで行こう」

「??」


『利己の目的のために人を殺すことが間違っている』この時代では、やはりユウカの考えの方が正しいのだろう。

恭司は脳を沈黙させた。


「よし!!そろそろ次の授業が始まるな!!教室へ戻ろう」

「え?う、うん……」


急に明るくなった恭司の様子が疑問なのか、ユウカは訝しそうな表情で頷く。

いつも仲良しな2人だが、今だけはお互いの気持ちが分からないでいた。

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
ーー

教室に戻ると、他のクラスメイトたちは既に次の授業の準備に取り掛かっていた。

服も当然ながら制服に着替え終わっている。

そして、

ユウカもまた、いつの間にか制服姿になっていた。


「……いつ着替えたんだ?」


恭司は純粋に尋ねかける。

素で疑問だった。


「乙女の秘密だよ」

「乙女感をイマイチ感じねぇな……」


恭司はツッコミながらも、詳しいことは聞かないことにした。

下手をすれば薮蛇になるかもしれない。

負わなくていいリスクは避けるべきだった。

恭司は疑問を頭の隅っこに追いやって、無心のまま机を隣のユウカの席にくっ付ける。

次の授業もユウカに教科書を見せてもらう必要があるためだ。

2人はそれぞれ席につく。


「さて、それでは次の授業を始める。全員席につくように」


と、そこで、

タイミングよく教室のドアを開けて担当教員が中に入ってきた。

何とも影の薄そうな先生だ。

まるで背景の一部として生まれてきたような印象さえ受ける。

担当は国語のようだが、恭司は既に眠りそうな心地だった。


「実技訓練の後にコレはキツいな……」


思わずボヤく。

隣を見ると、ユウカも似たようなものだった。

まだ始まってもいないのに船を漕ぎ始めている。

恭司はため息を吐くと、ユウカと机をくっ付けたまま、2人は揃って机に突っ伏した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...