追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第六章】クレイア

【第十四話】ククル・ウィスター<2>③

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「私が家に引きこもる前……入学してすぐくらいの時だったかな。その時に言われたんだよ。『三谷恭司“様”のことは好きですか』って……」


ユウカはククルとの絡みのあった当時を思い返した。

聞いた恭司は苦笑いだ。


「このご時世に俺のことを『様』とはまた……ずいぶん直接的だな」

「今思えばホントにそうだよね。まぁ私その時恭司のこと知らなかったから『何のこと?』って返しちゃったんだけど……その時のククルさんのしてた表情が未だに忘れられないんだよね……。なんか鬼気迫るっていうか、鬼の形相っていうか……」

「…………」

「逆にククルさんが恭司に恨み持ってて、それで親族の私に知らないのか!ってキレてたっていう線も考えたけど、それなら様付けなんてしないだろうし、やっぱり恭司の大ファンなのかなって……」

「…………」

「それからはちょこちょこ話しかけてくるだけで、特に意味のあることとかは言ってなかったけど、まぁ単純に私に話しかけること自体がおかしなことだからね。それで色々と警戒してるってわけ」

「なるほどな……」


確かに懸念を超える事実は無いものの、怪しむには十分な事柄だった。

様付けも、ユウカが恭司の親族だから一応付けただけの可能性もあるし、聞いた感じ『ファン』というのはユウカの主観だ。

決定的な事実とは到底言えない。

しかし、

恭司にとっては完全にマークする対象だ。


「……ちなみに、俺の特徴っていうのは、一般的にはどれくらい公表されているものなんだ?」

「……?さぁ……私が知らなかったくらいじゃない?」

「なんて参考にならないんだ……」


恭司は考える。

それほど『三谷恭司』に強い関心があるのなら、ククルは把握し得る限りの三谷恭司の情報や特徴を知っていると見なして良いだろう。

恭司を見て、もしかしたら正体に勘付いている可能性もある。

さらには、

三谷恭司を通じてユウカに興味を持っているのだから、ユウカの親族という設定にしているギルス・ギルバートのことも当然気にしているはずだ。

単純に考えて、ユウカが三谷恭司の親族なら、ユウカの親族であるギルスも三谷恭司の親族となるからだ。

そこにギルスの特徴と三谷恭司の特徴が一致していれば、ククルとしてはまず間違いなく無視はしないだろう。

というより出来ないはずだ。

『ファン』なのか『憎悪』なのかは分からないが、このご時世に恭司のことを様付けで呼ぶ時点で、ククルは何かしら『三谷恭司』に強い関心があるのは間違いない。

そうなってくると、

これからはククルによって恭司の身辺を調査される可能性も出てくるし、ちょっかいや罠を仕掛けてくる可能性も否定し切れなくなってくる。

何なら攻撃してくる可能性だって十分にあり得るだろう。

そうなればもう、

それは厄介というレベルを悠に超えた事態だ。

対処はどうしたって必要になる。

『殺しておく』というのも1つの手かもしれない。

恭司は心が冷えていくのを感じた。
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