追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第七章】本性

【第十五話】殺戮⑦

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「…………………………え?」


三谷の基本技が一つ『喰斬り』ーー。

足に溜めた力を一気に解放して放たれる突きの技。

パンッと空気の破裂する音が鳴ったかと思うと、恭司の姿は既に敵の後ろにあった。

木の枝の先からは大量の血がボタボタと流れ落ち、細々とした肉や骨が枝一杯にこびり付いている。

ーー敵の胸には、恐ろしく大きな穴が空いていた。


「ば、バカな……。この……三谷の技を納めし……俺が……」


敵の男は最期にそれだけ口にすると、糸が切れたように地に伏した。

穴の空いた胸から、血が洪水のように溢れ出している。

何をどうしたってもうこの傷は塞がらない。

最初にして最後。

スタートにしてクライマックス。

戦闘開始から1秒も経たない時間の中で、決着はまごうことなき一瞬で着いた。

ユウカは木の枝を構えた姿のまま、唖然として動けない。


「嘘……。『喰斬り』で……あんなことが……」


恭司は前にユウカの『喰斬り』を見てこの技を思い出した。

だが、

技におけるクオリティは間違いなく圧倒的に違う。

ユウカの『喰斬り』ではこうはならない。

あんなに遠くから、敵の胸に1秒足らずで大穴を開けることなど、ユウカの『喰斬り』では絶対に有り得ない光景だ。

技としてのーー完成度が違う。


「き、恭司……。今のは……」

「ん?あぁ。喰斬りだ。ユウカも実戦使用している所を見るのは初めてか。まぁ、この技は当たればほぼ即死だからな。ホイホイ使ってる訳ねぇか」


恭司はそう言うと、当たり前のようにユウカの元へ歩み寄っていった。

まるで特に大したことなど起こっていないかのように、

まるでいつも通りのことが普通に起きただけであるかのように、

恭司は普段通りの顔でユウカの元に向かって歩く。

ユウカはそれが、本当に恐ろしかった。


「恭司……」

「ん?どうかしたのか?」


恭司は平常運転で尋ね返してくる。

『喰斬り』が突きの技なのに何故『斬り』と名付けられているのか、ユウカはこんな時に思い出していた。

『喰斬り』は突きで相手の身体に刀身を潜り込ませた後、中身を喰うように抉り斬る。

どんな回復も間に合わなくさせるために、一度の突きで回復不可能なくらい喰い散らかす。

残酷で、無残で、実用的。

コレが、三谷における『基本技』。

ユウカは瞬時に意識を切り替えると、“いつも通り”の笑顔で微笑み返した。
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