追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第七章】本性

【第十五話】殺戮⑧

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「家の前、血で汚れちゃったじゃない」

「あー、そうだな。悪かったよ」


頭を描きながら「やってしまった」とばかりに返答を返す恭司。

ユウカも何とか合わせるべく、木の枝を再び構え直した。


「じゃあ、“残り”もさっさと片付けないとだね」

「あぁ。そうだな」


そう言うと、2人は辺りの木々を見回した。

ーー空気がザワついたのが分かる。

元よりクレイアのような犯罪者集団が、ターゲット相手に1人で来るなどとは考えていない。

アレは敵の実力を見るための囮だろう。

2人は背中合わせになりながら、丘を挟んだ左右の木々をそれぞれ睨み付けた。


「アレを見てさっさと逃げなかったことだけは褒めてやらなきゃな。だが、こうなった以上はタダで返すわけにはいかない。1人も逃がさねぇ」


すると、

恭司の太腿が再び膨らみ始めた。

さっきのソレを見た人間からすれば、まるで死の宣告だ。

アレが弾けた瞬間に誰か死ぬーー。

そう思わざるを得ないほど、さっきの一瞬は強烈すぎた。

恭司は並居る木々の内の1本に目を向けると、切っ先をそちらに構え、重心を落とす。

誰が死ぬかは決まったらしい。

木々の向こう側で何かが動いた気配があったが、もう遅い。

ーー三谷の基本技が一つ『喰斬り』。

パンっと空気の破れた音が聞こえたと思えば、恭司の姿は既にそこにはなかった。

森の奥のそいつを殺したのだろう。

技の発動と同時に恭司は森の中へと消え、場が一瞬静寂に包まれる。

それは正しく、この場が三谷恭司の処刑場と化したことを示していた。


「恭司……」


丘に1人取り残されたまま、ユウカは不安げに呟く。

敵が怖いわけではなかった。

むしろその逆だ。

怖いのは恭司……味方だ。

このたった数分の間で、

ユウカを取り巻く世界は一気に変わってしまった。

ずっと同じ生き物だと思っていた男が、まるで全く違うモノに変わってしまったと感じてしまったのだ。

人を殺しても何とも感じない、正真正銘の化け物。

生物としての、在り方が違う。


「ひ、ヒィィイイイッ!!!!」


すると、

突如として、どこからか悲鳴が聞こえてきた。

おそらくは、この緊迫感に誰かが耐えきれなくなったのだろう。

続けて場を移動するような音が響く。

だが、

それは唐突に聞こえなくなった。

さっきまで大音量で耳に流れてきたそれが、急にパタリと止んだのだ。

どういうことが起きたのかは、誰の目にも明らかだった。

ーー化け物の、処刑が始まったのだ。


「う、うわあああああああああ!!!!」


今度は別の所から悲鳴が聞こえた。

連鎖的に恐怖が移ったのだろう。

ガサガサと移動するような音が響く。

だが、

それも間も無くしてすぐに止んだ。
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