追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第七章】本性

【第十七話】クレイアの諜報③

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「本当にうるさい奴だ。やはり、厄介事の処理は武力行使に限るな」


その瞬間、

トイレの中に目を塞ぐような突風が吹き荒れた。

室内にもかかわらずいきなり現れた突風は、トイレ内のガラスや便器を破壊し、強烈な恐怖感を演出する。

そして、

途端に溢れ出す存在感に、肌を震わす殺意。

吹き荒れる死の波濤ーー。

ククルは額に冷や汗を浮かべつつも恍惚に表情を歪めると、武器を強く握り締めた。


「あぁ……!!いいっ!!イイですね、三谷様!!コレは流石の私も……!!イってしまいそうです!!」


その瞬間、

ククルから凄まじいほどの闘気のオーラが放たれた。

やる気も殺る気も満たされたククルは後ろ手の大鎌を振り上げ、一閃して構え直す。

暗闇に佇んでいた亡霊は、

その一瞬で1匹の悪魔と化した。


「さあ!!踊り狂いましょう!!もう我慢できないの!!」


すると、

気がついたらククルの大鎌の刃が恭司のすぐ隣にあった。

繰り出される横薙ぎの一閃ーー。

刃は恭司の胴体を刈り取ろうとしているが、恭司にはその軌道が見えている。

上に跳んで躱し、鎌は空を斬った。


「狂ってんのは見た目だけにしとけよ!!この狂信者がッ!!」


恭司は空中に躱したまま翻って天井に足を付くと、ククルに向かって突撃した。

ククルは横に跳んで避け、代わりにククルの後ろにあったトイレの個室がザクザクに半壊する。

一瞬でも判断が遅れていれば、ククルの体がそうなっていた。


「アハハ!!そうは仰いますが、貴方様もずいぶん楽しそうですよ!!」


ククルは狂ったように笑いながら、鎌を振っていくつかの斬撃を繰り出してきた。

直接ではなく空間を飛ぶその斬撃は、恭司でもその正体を知っている。

そう、

三谷の基本技が一つーー『大三日月』。

初っ端から三谷の技を繰り出してきた。


「しゃらくせえ!!」


恭司は刀を振ってそれらを撃ち落とす。

『三谷』同士のーー食い合いだった。


「アハハ!!流石にお強いですね!!滾ってしまいます!!」

「ほざくな!!その舌すぐにでも切り取ってやる!!」


2人の攻防は熾烈を極めた。

斬撃がトイレ内を縦横無尽に駆け回り、2人はその中で刃を交わし合う。

男女共用な分、多少はマシであるものの、所詮ここはトイレだ。

もちろん、こんなシビアな戦闘を行えるほど広くはない。

だが、

その中でも2人はお互いに上手く得物を振り回していた。

障害物がどこにあるのか全て把握しているのか、その太刀筋に迷いは無い。

全力で攻撃し、全力で防御している。

今は主に恭司が攻めていて、ククルがそれを凌ぐような形になっているのだが、ククルはそんな状況でも器用に大鎌を使いこなしていた。

実技の授業で見た通りの鉄壁の守備だ。

動きに無駄が無く、必要最小限で的確な動きを当然のように繰り出してくる。

やはり実戦慣れしているのだろう。

てこずりそうだった。


「私の舌はまだ切り落とされないのですか?このままだとどんどん言葉を紡いでしまいますよ?」

「ほざくなと言っているだろう!!舌と言わず首ごと斬り落とされたいか!!」

「まぁ、怖い!!レディにそんな乱暴な口を利くものではありませんわ!!」

「誰がレディだ!!」


恭司は益々技を放ち、ククルは強かにそれらを防ぐ。

刃と刃が交わる金属音がトイレの中で響き渡り、激しさは勢いを増す一方だった。

そして、

ククルはふと、後ろへ跳びずさる。

その背後にはトイレの出入り口があった。
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