追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第七章】本性

【第十七話】クレイアの諜報②

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入ってみると、微かに違和感を感じた。

見た目は変わっていない。

あの時のままだ。

しかし、

入ってみると分かる。

こそばゆく伝わる気配。

ピリつくような殺気。

馴染みのある感覚。

伏兵の臭いがするーー。


「……出て来いよ。流石に分かるぞ」


恭司はトイレの個室の方を見ながら、独り言のように言い放った。

ーー小さくクスリと笑う声が聞こえる。

すると、

個室の扉の1つがひとりでに開き、奥からククルの姿が現れた。

ククルは俯きながらも、クスクスと不気味な笑みを浮かべ、上目遣いに恭司を見つめてくる。

ーーまるでホラー映画にでも出てくる死神のようだ。

後ろ手に持っている大鎌がそれをより印象付けている。

そして、

ヒシヒシと感じる “経験者 ”の気配。

色々な意味で、ヤバい相手だった。


「こんにちは。また会いましたね、三谷恭司様」


ククルは口元を大きく横に広げ、不気味な笑顔で話しかけてきた。

相変わらずホラーじみた見た目だが、意外と隙は少ない。

鎌を後ろ手に持っているせいで僅かに見えているものもあるが、それは明らかに誘いだろう。

恭司は溜め息をついた。


「昼間あれだけ言ったのにまだ分からないのか?俺は三谷恭司じゃない。お前のくだらない妄想に俺を巻き込むな」


恭司は威圧的に対応する。

もう一息に“終わらせる”つもりとはいえ、自ら正体を明かす必要はなかった。

場合によっては万が一の可能性だってあるのだ。

駆け引きは苦手でも、慎重に対処するくらいは当たり前だった。


「クスクスクスクス。そんなことを仰って。聞いていますよ?私の可愛い部下たちのこと。ずいぶん手厚くもてなして頂いたみたいで」

「あの程度、三谷恭司でなくても誰でも出来る。戦力を見直した方がいいんじゃないか?」

「これはこれは有り難いお言葉。ですが、彼らは我々クレイアの中でも優秀な部類でして。おいそれと替えがききませんの」

「ふんっ。それは申し訳無かったな」

「いえいえ……。貴方様のお力を再確認出来ただけで十分でございます」

「…………」

「さて、“そんなこと”より、貴方様は私に御用件があって、ここに参られたのではありませんか?」

「…………何のことだ?」

「惚けずとも結構ですよ。部下たちの通信が途絶えた後……貴方様は20分足らずでここへ現れました。一直線に向かってこられたと考えるのが妥当でしょう?」

「確かにそうかもしれないが、そこにお前がいると想定はしにくいんじゃないか?」

「ええ。仰る通りですね。だったら尚のこと、一直線にここへ来られたことがより不思議になります。私でないとすれば、一体何をしにここへ来られたのですか?」


恭司は頭をボリボリと描きながら、自らの対応の甘さを嘆いた。

いや、正確には言い分は用意しているが、それが通じないと分かった。

恭司はククルの部下から奪った刀を構え、静かに闘気を放出する。
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