追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第七章】本性

【第十七話】クレイアの諜報①

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音もなくーー

姿もなくーー

ただ黒い影が、森の中を静かに飛び回る。

風のように速く、

雷のように激しく、

獣のような獰猛さで、

恭司は街に向けて駆ける。

何も思い出せていないのに、誰の名前も覚えていないのに、この感覚だけは覚えている。

敵と定めた者をどこまでも探し、いつまでも追い、必ず殺す矜持。

ーー狩りの感覚。

一族の名に賭けて、中途半端な結果では決して戻れない。

戻るつもりがない。

記憶に無くても分かっているーー。

いつもそうだった。

そんなことは当たり前だった。

放たれた矢の如く、獲物を狙う獣の如く、動き出したら止まれない。

結果になるまで帰れない。

森を抜けた恭司は、まだ日も明るいメルディアの街並みを、音も無く駆け抜ける。

200年ぶりの狩りの時間ーー。

少しでも昔を思い出したようで、実情の危機感とは裏腹に、気分は既に最高潮だった。


「ハハッ!!胸が踊る!!血が湧き立つ!!知ってるぞ!!この感覚……!!いつも感じてた奴だ!!」


脳ではなく心に残っている記憶。

血を欲する生来の生き様。

こればかりは変わらない。

変えられるわけがなかったのだ。

元々駆け引きなんて得意でも何でもない恭司の行動は、最初から違和感ばかりだった。

話せば矛盾が起き、考えても答えは出ない。

悩み悩んで、ようやく気がついた。

これこそがーー三谷恭司の本当なのだと。


(フフッ。昼休みのあの時から約20分って所か……。まずは現場だな)


恭司は瞬時にそう判断すると、目的地を学校の屋外トイレに定めた。

勿論まだそこにいるなどとは流石に思えないが、今は少しでも手掛かりが必要だ。

今まで政府から散々逃げ延びてきたクレイアの足取りを追うのは難しいだろうが、だからといってこのまま引き下がるつもりもない。

恭司の足はすぐさま校門へと到着し、そこから瞬動で風の如く跳び回った。

あのトイレまでは校門からそれほど離れていない。

恭司の足ならほとんど時間はかからないはずだ。

そして、

校門に到着してから5秒。

恭司は既にトイレの前にいた。


(やはり人の気配はしない……か。とりあえず入ってみるしかないな)


恭司はトイレの前で周囲を素早く念入りにチェックすると、音もなく中に入っていった。

男女共同になっているこのトイレは、普段から人がほとんど立ち入らない。

授業中である今なら尚更だ。


「転校初日にもかかわらず、今日でここに3回目か……。どれだけ行動範囲狭いんだっての」


恭司はブツブツ言いながらも中を進みながら、警戒レベルを強めていった。

パッと見回しても、これといって異常は見当たらず、さっきと同じに見える。

だが……


(何か……おかしいな)
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