追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第七章】本性

【第十七話】クレイアの諜報⑤

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そこからはまるで夢でも見ているかのようだった。

10人のククルがそれぞれ独自に動き、様々な太刀筋を同時に浴びせてくる。

恭司は凌ぐことで精一杯だった。

10個の同時攻撃の内、本物は1つだけなのだ。

さらに、

ただ手数が多いだけでなく、1つ1つの動作や殺気に信じられないくらいのリアリティがある。

本物を見つけてそれだけを対処するのは不可能だろう。

そんなことを考えるほどの暇もない。

結局、10個全ての攻撃に対処するしかなかった。


「チッ!!厄介だな、三谷の技ってのは!!」

「貴方様がそれを仰いますか!?三谷の最高峰と謳われる三谷恭一郎の息子である貴方が!!」

「だから!!俺は三谷恭司じゃないと言っているだろう!!俺は恭四郎の孫だ!!三谷恭司なんかじゃない!!」

「いつまでそんなことを仰るのです!!そこまでの戦闘力を魅せられて、誰が納得するものですか!!」

「お前も互角だろう!!」


ククルの攻撃は激しくなる一方だった。

10人のククルはそれぞれで全く別のフォームで全く別の部位を狙って攻撃を仕掛けてくる。

本物がどれか分からないが故にカウンターを狙う訳にもいかず、このままだとジリ貧だった。

恭司は後ろへ下がりに下がり、ある一計を案じることにする。


「……何のつもりですか?」


あまりに後ろへ後ろへと下がり、必要以上に距離を取ってきた恭司に、ククルは思わず止まって尋ねかけた。

殺影による分身はその瞬間に消え、恭司もそこで止まる。

すぐには手の届かない距離で睨み合う中、恭司は刀を構え直した。


「1つ、面白いものを見せてやろうと思ってな」


トイレの建物の前に立った恭司は、前に立つククルに高圧的な言葉を浴びせかけた。

ククルは警戒体制を維持したまま、大仰な仕草で首を傾げる。


「はて……?貴方様の思い出された技は『瞬動』と『喰斬り』の2つだけではありませんでしたか?それとも、私の技を見て『大三日月』や『殺影』も“思い出された”とか……?」


ククルの返答に、恭司の眉がピクリと動いた。

面白いモノを見せる前に、聞き捨てならない言葉が聞こえてきたからだ。


「……『喰斬り』はまだ見せたことなかったと思うけどな」


恭司がククルの前で見せたのは瞬動だけだ。

それも実技の授業における一瞬のもので、技は1つも見せてはいない。


「私自身の前ではなくとも部下に使ったでしょう?いい子達でしたから、ちゃんと報告は入ってきてるんですよ?」

「…………」


コレで、希望の芽が1つ潰えた。

ククルはやはり、あの後クレイアに連絡を取っていたということだ。

他の者ならともかく、クレイア内部の人間に連絡している時点で、他のクレイアに伝わっている可能性は高いだろう。

もう情報の拡散状況を正確に把握することはできない。

『クレイア内部』という、曖昧な把握しかできないことになる。

恭司は対処があまりに遅れてしまったことを改めて悔いた。

失態だ。

もう取り返しはつかない。


「ふふふ。私が部下に……、いえ、クレイアに連絡を取っていたことがそんなにショックですか?だから言ったでしょう。私は『諜報』だと。得た情報を本部に流すのは当然のことです」


そんなことは分かっている。

だから急いでいた。

だからユウカのフォローもおざなりにした。

それなのにーー。


「さあ、まだ戦いを続けられますか?もう貴方様の目的を達成なさることは不可能でしょう。そうとなれば、そろそろ大人しくーー」

「黙れよ」


空気が張り付いた。

まるで時間が止まったかのように、嫌な静寂が場を包み込む。

ククルは思わず呼吸を止め、目の前のソレから目が離せなかった。

恭司の周りから黒い風が吹き荒れ、冷えるような殺気が体を貫く。
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