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【第八章】協定
【第十八話】協定④
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「…………それで、何で『協定』なんですか?」
恭司は率直に思ったことを口にした。
話を聞く限り、現状クレイアが酷く有利だ。
それこそ、『協定』などではなく『脅迫』して一方的に要求できる立場だろう。
恭司だって、この状況でクレイアから要求を突きつけられれば、嫌々ながらも受けるしかない状況だ。
どういう内容かはまだ聞いていないが、普通に考えて違和感だった。
「それについては私がお答えしましょう。これでも一応、クレイアの幹部の1人ですので」
そう言ったのはククルだった。
ククルはさっきと変わって緊張した表情を浮かべながら、無感情に淡々と話す。
「我々の目的は既にお伝えした通り、三谷恭司様と『共に歩む』ことです。貴方様をお慕いし、貴方様の望む世界を実現することこそ、我々の悲願であり、使命です」
「…………」
「だからこそ、その貴方様を脅迫することなど有り得ないのです。我々の目的は常に貴方様自身の、貴方様が真に望む世界にこそ向けられています。これまで様々なご無礼を働きましたが、今後はどうか貴方様と共に歩んでいきたいと……」
「いや、待て。そう言うには流石に疑問点が多すぎるぞ。そもそも何故そこまで俺を……」
「それについてはまだ私の口から話すことを許されてはおりません。申し訳ございませんが、御容赦願います」
食い気味に即答してくるあたり、ククルの意思は固そうだった。
だが、
ここは恭司も引けない所だ。
「俺自身が望んでいることだぞ?お前の言うことをそのまま受け入れるとすれば、俺が望んでいる時点で話さなきゃいけないんじゃないのか?」
「いえ……今の貴方様は、まだ三谷恭司様の、『半分』でいらっしゃいますから」
「半分……?」
恭司がそう尋ねると、ククルは素早く立ち上がり、床に膝をついて頭を下げた。
急な展開に恭司の表情は訝しむ一方だったが、ククルはその体制のまま続ける。
「そう、『半分』でございます、我が主人様。貴方様はまだ本当の何もかもをお忘れでございます。技も、経験も、思い出も、悲劇も、そして……『憎しみ』も……」
「…………」
「今の貴方様はまだ体だけで、そこに宿っている本来の貴方様にあるはずのものが欠けた状態です。だからこそ、我々はまず、貴方様を本来の御姿に戻して差し上げることが重要だと考えています。何も思い出していない今の貴方様はまだ半分であるが故に、我々も今しばらくは動き出せない状態なのです」
「…………」
「お分かり頂けましたか?」
ククルは膝をつきながら、探るようにそう問いかけてきた。
だが、
当然ながら、分かるはずなどない。
さっきから展開があまりに一方的なのだ。
勝手に崇拝しておきながら家に刺客を放ち、さらには盗聴機まで用意して無理矢理従わざるを得ない状況に追い込まれた挙句、崇拝しているという割にはこちらの要求には一切答えない。
そして、
その理由は、恭司に恭司の記憶が無いからだという……。
そんな状況下で頼んでもいないのに記憶を取り戻す手伝いをするなど、あまりに手前勝手な言い分だ。
しかし……
(向こうには俺の正体を知られていて、情報は既にクレイア全体に行き渡っている……。何が協定だ。やっぱり脅迫じゃないか)
もうこの期に及んで恭司の正体を知る全ての人間を抹殺するなど不可能だ。
世間に公表されて死刑という結果を逃れるためには、もう頷く以外に選択肢などない。
そもそもアベルトも協定と言っている時点で、断ることなどできないのだ。
恭司は歯軋りする想いを胸に抱きながら、ゆっくりと首を縦に振った。
恭司は率直に思ったことを口にした。
話を聞く限り、現状クレイアが酷く有利だ。
それこそ、『協定』などではなく『脅迫』して一方的に要求できる立場だろう。
恭司だって、この状況でクレイアから要求を突きつけられれば、嫌々ながらも受けるしかない状況だ。
どういう内容かはまだ聞いていないが、普通に考えて違和感だった。
「それについては私がお答えしましょう。これでも一応、クレイアの幹部の1人ですので」
そう言ったのはククルだった。
ククルはさっきと変わって緊張した表情を浮かべながら、無感情に淡々と話す。
「我々の目的は既にお伝えした通り、三谷恭司様と『共に歩む』ことです。貴方様をお慕いし、貴方様の望む世界を実現することこそ、我々の悲願であり、使命です」
「…………」
「だからこそ、その貴方様を脅迫することなど有り得ないのです。我々の目的は常に貴方様自身の、貴方様が真に望む世界にこそ向けられています。これまで様々なご無礼を働きましたが、今後はどうか貴方様と共に歩んでいきたいと……」
「いや、待て。そう言うには流石に疑問点が多すぎるぞ。そもそも何故そこまで俺を……」
「それについてはまだ私の口から話すことを許されてはおりません。申し訳ございませんが、御容赦願います」
食い気味に即答してくるあたり、ククルの意思は固そうだった。
だが、
ここは恭司も引けない所だ。
「俺自身が望んでいることだぞ?お前の言うことをそのまま受け入れるとすれば、俺が望んでいる時点で話さなきゃいけないんじゃないのか?」
「いえ……今の貴方様は、まだ三谷恭司様の、『半分』でいらっしゃいますから」
「半分……?」
恭司がそう尋ねると、ククルは素早く立ち上がり、床に膝をついて頭を下げた。
急な展開に恭司の表情は訝しむ一方だったが、ククルはその体制のまま続ける。
「そう、『半分』でございます、我が主人様。貴方様はまだ本当の何もかもをお忘れでございます。技も、経験も、思い出も、悲劇も、そして……『憎しみ』も……」
「…………」
「今の貴方様はまだ体だけで、そこに宿っている本来の貴方様にあるはずのものが欠けた状態です。だからこそ、我々はまず、貴方様を本来の御姿に戻して差し上げることが重要だと考えています。何も思い出していない今の貴方様はまだ半分であるが故に、我々も今しばらくは動き出せない状態なのです」
「…………」
「お分かり頂けましたか?」
ククルは膝をつきながら、探るようにそう問いかけてきた。
だが、
当然ながら、分かるはずなどない。
さっきから展開があまりに一方的なのだ。
勝手に崇拝しておきながら家に刺客を放ち、さらには盗聴機まで用意して無理矢理従わざるを得ない状況に追い込まれた挙句、崇拝しているという割にはこちらの要求には一切答えない。
そして、
その理由は、恭司に恭司の記憶が無いからだという……。
そんな状況下で頼んでもいないのに記憶を取り戻す手伝いをするなど、あまりに手前勝手な言い分だ。
しかし……
(向こうには俺の正体を知られていて、情報は既にクレイア全体に行き渡っている……。何が協定だ。やっぱり脅迫じゃないか)
もうこの期に及んで恭司の正体を知る全ての人間を抹殺するなど不可能だ。
世間に公表されて死刑という結果を逃れるためには、もう頷く以外に選択肢などない。
そもそもアベルトも協定と言っている時点で、断ることなどできないのだ。
恭司は歯軋りする想いを胸に抱きながら、ゆっくりと首を縦に振った。
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