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ヌルッとスタート編

第32話 おヌル様基金

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「その前にちょっといいかな。
あー近い。狭い。
魅力的な男性たちからの友情エキス、お陰様で両側より充分吸収して癒されました。満腹デス。これ以上はもういっかな。ご馳走様でしたーっと」

 お腹をさすりながら、私はあっちのソファーに移動した。

「コニー、それ面白くて面白くない冗談だね」

 クレール、それは一体どっちなんじゃい?

「コニーもクレールもオモロいな、ウケる。
さてと今度は俺からの説明か……。
俺の所属もクレール同様虹の院だ。トップクラスは王族と元王族だが、それだけじゃ回るわけないだろう?
俺の役割は2つ。1つはクレールの護衛。
俺らの母親達の仲はさっき聞いたろ? 物心つかない頃から、やつの遊び相手でご学友で今は護衛ってわけだ。王族からの抜けたとはいえ、な。ぶっちゃけ仕事って感じはしねーけど。
 もう1つは光の湖での魔石の管理。これについては風呂から上がってからもっと詳しく話そう。簡単に言えば、公共性の高い、もの凄く重要な国家事業で、適性がないとここでの仕事には携われない」

 おお、選ばれし者って感じだな。

「さあこっからがおヌル様、コニー個人に関わる話だ。
クレールとも話し合ったんだが、俺らに世話になること、迷惑かけて悪いとか、物凄い気にしてるだろう?」

「まあね。実際頼んなきゃやってけないし、2人のそばにいると優しさが心地くてつい甘えてしまうけど。
ずるい気持ちは持ってても、いけ図々しい人間になるのは自分の美学に反すると思ってる」

「成程。よく分かった。
よし。コニー聞いてくれ。
おヌル様に対して、虹の院には正規の支援制度が数々ある。蛍様しかり、代々皆様この制度を利用されてきた。
まずはおヌル様基金。
コニーが一生働かずに暮らせるほどある。住まいを買って毎月のかかりに使うもよし。事業を起こしたり研究開発費に使うもよし。この世界を隅々すみずみまで旅することもできる。
金の出所でどころは国民の税金じゃねえ。虹の院からと歴代様からの寄附だ。
100年ごとの前例を破っての登場だが金のことは全く気にしないでいい。おヌル様達はみんな優秀で、そんなに長くかからず自立していくから、予算が余りまくってる。
やりたい事の初期投資にガツンと金がかかる場合もあるが、この世界に大きく変革をもたらす投資だ。回収してもなお釣りが来るなんてもんじゃない」

「ひええええ。私の居候代がエタンとクレールの自腹じゃない事は分かったけど……。
ふう~。『私なんか』って言葉は好きじゃないからほぼ使わないんだけど、これは言いたくなる。
具体的に歴代の皆様の功績は存じ上げなくても、『この世界に大きな変革』を自分がもたらせるなんて、これっぽっちも思わないよ……」

「そう言わないで、誘拐された迷惑料だと思って気楽に楽しんで使いなよ。普通にコニーがコニーらしく。何をしても何もしなくても別に良いんだ。気負う必要は無いんだ」

「うん……」

「そう気にすんな。次のおヌル様の為に私も使い潰さないで頑張るぞーぐらいの励みになるだろ。
出世しても出世しなくても『出世払い』って事にして使えよ」

「これは歴代のおヌル様達の好意なんだよ。次代の地球人も幸せに生きて欲しい、そう託された遺産の一つなんだ。その思いを知ってみて、どうだろうか?」

「ふーむ、そう言われたらそっかって気になるかも……。
下心無き好意は笑顔で気持ちよく受けるべきだと思う。規模がとんでもなく違うけど、それはお店経験で染みてるよ」

 うん。
 いつか御礼返おれいがえししちゃる!
 これは私の生きる目標にもなるんだ。
 帰還の道が閉ざされた今こそ、そう心に刻む。
 歴代のおヌル様たち、本当にありがとうございます。

 先人せんじんに手を合わせ感謝と黙祷もくとを捧げていると、エタンが少し遠慮がちに声をかけて来た。




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説明回が長いと、読む方はちょっと疲れてしまいますよね。なので今回はエタンの説明回あえて分けてみました。次回に続きます。次話そんなに間をあけず投稿予定です。(少し重要回。お楽しみに)
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