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羽馬渓谷編
第128話 名前の由来
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「ふふ、クレールとエタンが揶揄うなんて思ってないよ~。
紫色の紫だよ。フランス語のヴィヨレとプープルの区別なくね。
そんで、男の子が揶揄ってつけたあだ名は『しょうゆ』。紫って名前に隠された意味は『醤油』だって発表したから。
日本では『し』の音は『死ぬのし』を連想させるって言われてね。昔の人はわざと言い換えたりしたんだ。例えば……。
料理屋さんで『おはし』をお客様の手元に置くから『おてもと』とか。
『なし』を有る無しに引っ掛けて『ありのみ』とか。
面白いよねえ?
そんで『醤油』は『むらさき|《紫》』。由来は諸説あるよ」
「せっかくだから、諸説とやら聞きてえな」
「そお? う~んとねえ。
一つはお皿にちょろっと垂らしたのが紫色だから説。と言ってもその時代は、赤褐色を『むらさき』って言ったみたい。
二つ目は、値段が高いもんだから、武士の間で高貴な色とされる『むらさき』って呼んだとか。
三つ目は、黒豆で作った醤油は紫色になったから、とか。
ウチはさ。父方の家業、揚げ菓子で塩を使うからね。長男たる兄の名前は、塩を別の漢字と発音で表して「志緒」。
そんで私のときは、母方の実家の家業にちなんだもの、煎餅で使う醤油にしたいってなって。
言い方変えて『紫』になったのよ。
塩もね、『し』がつくから、言い換え言葉があるんだよ。『波の花』。私としては女の子らしくて可愛い『波花』とか塩二人目のほうがよかったのにな~なんてね」
「『むらさき』はとびきり洒落た名前じゃねえか。似合ってるぜ」
「僕もとても素敵な名前だと思うよ。それに日本文化やご先祖様や、家族の愛を背負ってる立派な名前だ。
ねえ、さっきの話にはまだ『コニー』のあだ名は出てこなかったけど。
そ、それと……こ、恋人達は君をなんて呼んでたの?」
くすっ、クレールは恋バナほんと好きだね~、はいはい。
「高等部の馬術部時代に習ったんだよね。147センチ以下の馬を『ポニー』と呼んでいいって。
私の身長がぴったり147センチだって自己申告したら、『コニちゃんはギリギリポニーだから、ポニーふうにコニーて呼ぼう』って先輩が言い出して。
純日本人にしては私の顔がちょっぴり外国人っぽいのもあって、そっからコニー呼びが定着したの。
最初っから『むー』って呼んでた、中等部からの親友二人と、部活でもとりわけ仲良しの子二人は『むー』のままで。
ああ、そんでクレールの質問の答えね。
『コニー』『むーちゃん』『むらさき』だよ」
「(三人以上ってことか……)」
「俺らはコニーをこれからはなんて呼ぼう?」
「うん、別にコニーのまんまでいいんじゃない?」
クレールが小声でぶつぶつ『三人じょー?』とか言ってたのは、よく聞き取れなかったけど、ま、いっか。
「王都での名乗りもあるから、名前の件は追々ね。
ねえ、そろそろ練習再開しない?
ギャロ爺っちゃ、これをタマ子にあげたらいいの?」
ニャンスキー・ポシェットから、ハンカチに包まれた魔石を二種取り出した。
虹色の魔石を見て驚く爺っちゃに、えっへへ~っと、誇らしい気分の私。
だがそれも束の間。
お膝で丸くなってたポンポネットが、むにゅ~んと体の一部を二本の手を伸ばしてきたかと思ったら……。
サッと魔石を掴み、一瞬のうちにビー玉魔石のほうをポイっと口に入れた!
えっ???
「むんにゅあ」
そう言いながら、ぷくっとビー玉みたくまん丸くなったのち、もう一個続けざまにヨコジ魔石もポイッ。
「むんにゅあぁ~」
今度はニョロっと棒状に変化して、もっと満足そうな鳴き声をあげた。
「「おまえなあ!」」
エタンとクレールが手を伸ばそうとすると、シュパッと私の背に移動して、甘えた声で「むむぬぅ」とすりすりしてきた。
「こおら。ポンポ、勝手にはダメだよ。大丈夫、怒ってないから出ておいで。お話しよう。
ちゃんと『ちょうだい』したらあげるからね、勝手に奪って食べちゃダメなの。ちゃんと私に伝えて。黙ってやったら次からはメッするよ、分かった?」
「むぬ~。むむぬぅむむぬぅ」
「よしよし。怒るのと叱るのは違うんだからね。もういいよ、よしよしいい子」
「はぁん。こんただ魔石にまなぐがねんなら、やっぱし魔生物なんだべなあ。しかも羽馬だぢよりも格上の……不思議な生ぎ物だなや。
んだども、タマ子さあげる分はどうするべが」
羽馬と魔石の関係をギャロ爺っちゃが教えてくれた。
羽馬は背中のちょっとポコッとなった部分から、自分の意思で翼を出し入れし。
翼を出した状態の羽馬には、空を飛ぶ際に空気の抵抗や温度の変化を受けづらいよう、見えないバリアが身体を覆うように張られるとのこと。
騎手が自分で作った魔石を食べさせてやると、翼がその魔石の色と同じになるのは馬場で聞いたが……。
なんとその魔石の作り手である乗り手本人も、バリアに包まれるんだって!
それこそがエタンが言ってた、空飛ぶ羽馬から落ちない秘訣だった。
それと、魔石の作り手がどこにいるのか、食べた羽馬は分かるってのも良いね。
だったら、クレールやエタンや爺っちゃの乗る羽馬にも、私の魔石を食べさせたら、はぐれたときに便利じゃない?
質問したところ、大人の羽馬なら一度に三~四個程度なら重ね食べしても大丈夫みたい。
「爺っちゃ。それなら多分大丈夫。今ここで魔石作ってみるね」
【次回予告 第129話 空を見よ!】
𓃗 ポニーとは𓃗
肩までの高さが147センチメートル以下の馬の総称。品種ではなく馬のタイプの一つ。
◯。ポンポの鳴き声翻訳 ◯。
[むぅ~むぅ~] 普通の鳴き声
[むぶぁ~] 挨拶? 注意ひきたい
[むむぬぅ] コニーに甘える。コニーのこと。
[むぬ] 返事「はい」
[むぬぬ] 「いいえ」
[むんにゅあ] 美味しい
[むぐぁ!] 怒ってる
[むぐあぁ!!] すっごく怒ってる
[むあむあむあ] ちょうだいな
紫色の紫だよ。フランス語のヴィヨレとプープルの区別なくね。
そんで、男の子が揶揄ってつけたあだ名は『しょうゆ』。紫って名前に隠された意味は『醤油』だって発表したから。
日本では『し』の音は『死ぬのし』を連想させるって言われてね。昔の人はわざと言い換えたりしたんだ。例えば……。
料理屋さんで『おはし』をお客様の手元に置くから『おてもと』とか。
『なし』を有る無しに引っ掛けて『ありのみ』とか。
面白いよねえ?
そんで『醤油』は『むらさき|《紫》』。由来は諸説あるよ」
「せっかくだから、諸説とやら聞きてえな」
「そお? う~んとねえ。
一つはお皿にちょろっと垂らしたのが紫色だから説。と言ってもその時代は、赤褐色を『むらさき』って言ったみたい。
二つ目は、値段が高いもんだから、武士の間で高貴な色とされる『むらさき』って呼んだとか。
三つ目は、黒豆で作った醤油は紫色になったから、とか。
ウチはさ。父方の家業、揚げ菓子で塩を使うからね。長男たる兄の名前は、塩を別の漢字と発音で表して「志緒」。
そんで私のときは、母方の実家の家業にちなんだもの、煎餅で使う醤油にしたいってなって。
言い方変えて『紫』になったのよ。
塩もね、『し』がつくから、言い換え言葉があるんだよ。『波の花』。私としては女の子らしくて可愛い『波花』とか塩二人目のほうがよかったのにな~なんてね」
「『むらさき』はとびきり洒落た名前じゃねえか。似合ってるぜ」
「僕もとても素敵な名前だと思うよ。それに日本文化やご先祖様や、家族の愛を背負ってる立派な名前だ。
ねえ、さっきの話にはまだ『コニー』のあだ名は出てこなかったけど。
そ、それと……こ、恋人達は君をなんて呼んでたの?」
くすっ、クレールは恋バナほんと好きだね~、はいはい。
「高等部の馬術部時代に習ったんだよね。147センチ以下の馬を『ポニー』と呼んでいいって。
私の身長がぴったり147センチだって自己申告したら、『コニちゃんはギリギリポニーだから、ポニーふうにコニーて呼ぼう』って先輩が言い出して。
純日本人にしては私の顔がちょっぴり外国人っぽいのもあって、そっからコニー呼びが定着したの。
最初っから『むー』って呼んでた、中等部からの親友二人と、部活でもとりわけ仲良しの子二人は『むー』のままで。
ああ、そんでクレールの質問の答えね。
『コニー』『むーちゃん』『むらさき』だよ」
「(三人以上ってことか……)」
「俺らはコニーをこれからはなんて呼ぼう?」
「うん、別にコニーのまんまでいいんじゃない?」
クレールが小声でぶつぶつ『三人じょー?』とか言ってたのは、よく聞き取れなかったけど、ま、いっか。
「王都での名乗りもあるから、名前の件は追々ね。
ねえ、そろそろ練習再開しない?
ギャロ爺っちゃ、これをタマ子にあげたらいいの?」
ニャンスキー・ポシェットから、ハンカチに包まれた魔石を二種取り出した。
虹色の魔石を見て驚く爺っちゃに、えっへへ~っと、誇らしい気分の私。
だがそれも束の間。
お膝で丸くなってたポンポネットが、むにゅ~んと体の一部を二本の手を伸ばしてきたかと思ったら……。
サッと魔石を掴み、一瞬のうちにビー玉魔石のほうをポイっと口に入れた!
えっ???
「むんにゅあ」
そう言いながら、ぷくっとビー玉みたくまん丸くなったのち、もう一個続けざまにヨコジ魔石もポイッ。
「むんにゅあぁ~」
今度はニョロっと棒状に変化して、もっと満足そうな鳴き声をあげた。
「「おまえなあ!」」
エタンとクレールが手を伸ばそうとすると、シュパッと私の背に移動して、甘えた声で「むむぬぅ」とすりすりしてきた。
「こおら。ポンポ、勝手にはダメだよ。大丈夫、怒ってないから出ておいで。お話しよう。
ちゃんと『ちょうだい』したらあげるからね、勝手に奪って食べちゃダメなの。ちゃんと私に伝えて。黙ってやったら次からはメッするよ、分かった?」
「むぬ~。むむぬぅむむぬぅ」
「よしよし。怒るのと叱るのは違うんだからね。もういいよ、よしよしいい子」
「はぁん。こんただ魔石にまなぐがねんなら、やっぱし魔生物なんだべなあ。しかも羽馬だぢよりも格上の……不思議な生ぎ物だなや。
んだども、タマ子さあげる分はどうするべが」
羽馬と魔石の関係をギャロ爺っちゃが教えてくれた。
羽馬は背中のちょっとポコッとなった部分から、自分の意思で翼を出し入れし。
翼を出した状態の羽馬には、空を飛ぶ際に空気の抵抗や温度の変化を受けづらいよう、見えないバリアが身体を覆うように張られるとのこと。
騎手が自分で作った魔石を食べさせてやると、翼がその魔石の色と同じになるのは馬場で聞いたが……。
なんとその魔石の作り手である乗り手本人も、バリアに包まれるんだって!
それこそがエタンが言ってた、空飛ぶ羽馬から落ちない秘訣だった。
それと、魔石の作り手がどこにいるのか、食べた羽馬は分かるってのも良いね。
だったら、クレールやエタンや爺っちゃの乗る羽馬にも、私の魔石を食べさせたら、はぐれたときに便利じゃない?
質問したところ、大人の羽馬なら一度に三~四個程度なら重ね食べしても大丈夫みたい。
「爺っちゃ。それなら多分大丈夫。今ここで魔石作ってみるね」
【次回予告 第129話 空を見よ!】
𓃗 ポニーとは𓃗
肩までの高さが147センチメートル以下の馬の総称。品種ではなく馬のタイプの一つ。
◯。ポンポの鳴き声翻訳 ◯。
[むぅ~むぅ~] 普通の鳴き声
[むぶぁ~] 挨拶? 注意ひきたい
[むむぬぅ] コニーに甘える。コニーのこと。
[むぬ] 返事「はい」
[むぬぬ] 「いいえ」
[むんにゅあ] 美味しい
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[むぐあぁ!!] すっごく怒ってる
[むあむあむあ] ちょうだいな
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