舌先三寸覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

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羽馬渓谷編

第129話 空を見よ!

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 ポンポが私の膝に移り、細長いフォルムに変化して、お手手でなにか食べるジェスチャーをしだした。
 それから、「むあむあむあむあ」と鳴きながら両手を揃えて私へ差し出し、ちょいちょい上下に振った。

「『むあむあ』は食べたいよぉかな? そんで細長い形になってるってことは……ヨコジ魔石をご所望。で合ってる?」

「むぬ!!」
 嬉しそうにぽこぽこ飛び跳ねてる。

 さっきアレ食べたとき『むんにゅあ~』って鳴いてたもんね。

「むんにゅあ~は、美味しいって意味だよね?」
 ぽこん、と跳ねる。
 ふふ、当たりね。
「そっか~。ちょうだいできて偉かったね、ポンポ」

 今度はしゅんっと丸いフォルムになって、「むう~」と今度は湖のほうにいる羽馬たちを指差す。

「もしかするど、タマ子だぢには丸ぇほうの魔石さやれってごどでねが?」
 ポンポのジェスチャーを見て、ギャロ爺っちゃが思案顔で言った。

「両方食ってだがら、それ踏まえでの進言でわげが……タマ子らは自分より格下だんてなのがだからなのか、羽馬が食うには強すぎる石なのが分がらねげども」

 馬の世界は縦社会だ。
 さっきの羽馬たちの様子を見る限り、実際ポンポは生き物として格上なんだろう。

「ますますコニーの棒状魔石の効果が、気になるところだね。研究所で早々に解析しないと……」
 クレールがクレールらしいことを呟いた。

 昨夜と同じく十個のヨコジ魔石と、33個のビーダ魔石産みに成功し、食べ終えたサンドイッチ籠にそっと入れる。

 『ちょうだいなむあむあむあ』をちゃんと言えたご褒美あげた魔石を、私の肩で食べ終えたポンポ。
 不意に手を伸ばし、私の顔をクイっと自分のほうに向けさせたと思ったら、ぷぅっと口から魔素を吹き込んできた。

 くはっ! けほっけほっ?!

 ポンポぉ~もうなんでよぉ~?
 はあ、はあ、突然これやられるとむせるんだってば……
 
 その後のポンポのジェスチャー見るに、どうやら自分と同じ群青色の瞳と、オパールのボディと髪色で、私とお揃い色スタイルでいたかったみたい。

 ぷふ、いヤツめ。


「だあ~もう。驚ぎ過ぎで、おらの腰が抜げねがったごと褒めでぐれ」

 魔石生みや度重なる色変を見るたびに、なん度も驚き叫んでたギャロ爺っちゃだったけど。
 真顔で『褒めてくれ』だなんて。
 爺っちゃもなんか可愛くて、笑っちゃう。


 ひと心地つき、さあ飛行訓練するぞと、みんなで立ち上がったそのとき。

「む゙ぅゔ! ぶぁあ゙あ゙ああ~!!」

 ひゃっっ! びびった!

 突然のポンポの大きな叫び声。
 むい~んと伸ばした腕で空を指し、ちょっと怖い顔つきでぽんぽん飛び跳ねている。

 いったいなにごとかと、私たちは上空を注視する。
 ぅん? 青い空に三つの点々?
 眩しくてなんだかよく見えない。

 湖畔にいる四頭の羽馬たちも、一斉にいななき始めたので、ギャロ爺っちゃが慌てて駆け出した。

 再び空を見上げれば、あの点々の正体は三頭の羽馬で、こちらへ迫り来てることが分かった。

 勝手に牧場から来ちゃったのかしら?
 タマ子たち大騒ぎだから、爺っちゃも大変そうだ。

「翼が白い? コニー急いで僕らも行こう。危ないといけないから僕の後ろに。エタン、コニーの魔石を頼む」

「お、おう?!」

 湖畔の爺っちゃたちの元へ、三人で走る。

 ヒヒィィィィィン!!

 頭上から甲高い馬のいななきと共に、三頭の羽馬が猛スピードで急降下し。
 私たちの行く手を遮るように、間近に降り立った。

 それとほぼ同時に、キラッと、視界が光る。
 
 本当に一瞬だけなので、眩しさはどうってことはなかったんだけど……
 でも、すぐに自身の皮膚の違和感に気がついた。
 
 なんか、ぴとっとゴム手袋をつけたような?

 え、なに? これ……
 手どころか全身うっすら、私が微妙に艶々輝いてる?!
 自分の頬にそっと触れてみる……もちん。
 いつもにも増し増しな、ぷりっとした弾力。
 こりゃ絶対なんか私に起きてるわああ?!

「コニー!!」
 クレールが、私の手を繋ごうとしたら。

 バチン!!!

 強烈な音と共にクレールが、一メートルぐらいふっとばされた。
 ぎゃあ~! なんてこと!!

「クレエールうぅ!! だ、大丈夫?!」
 駆け寄りたくても、私は近寄るのはやめたほうがいいのでは、と咄嗟に迷い戸惑う。
 エタンがクレールを助け起こした。

 ほぅ~、大きな怪我はないみたいね、良かった。

 あ、そうだ、さっきの羽馬たち。

 降り立った三頭の羽馬は、キラキラ輝く白い羽を大きく広げて、デデーン! と神々しく決めポーズで立っていた。

 うわあ~、なんて立派で美しい羽馬たちなんだろう……

 美と風格を兼ね備えた、まばゆいばかりのたたずまい。
 それこそまさに羽馬界の女神様のよう。

 いや、優雅さの中にも、引き締まった躯体から溢れる躍動感と雄々しさ、さながら若き王様のよう。

 特に彼らの翼の綺麗なことと言ったら!
 光の湖産の魔石棒色によく似ている。
 まるで磨いた白蝶貝みたいだわ。
 
 見惚れていたのも束の間。
「む゙ぶあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」
 私の右肩から、ドスの効いたポンポの大きな威嚇声が上がる。

 慌てて自分の右肩を見ると……え? ポンポ?!
 電子レンジで加熱した餅みたいにぺしゃんこで、肩のとこにぷくり、ちょびっとだけ盛り上がって、そこには目も口もちび耳もちゃんとある。
 も、もしや、この状態って。

 シュポッっと音がして、ポンポが天高く跳ね飛んだ。
 同時に、私を覆うあの感覚が一瞬で消え去る。

 やっぱり!

 さっきの私の不可思議な状態は、膜みたいに伸びたポンポに全身を包まれてたんだ。

 先頭の羽馬の額に、ポンポが飛びつく。

 ヒヒイイイイイン! 
 前脚をあげ立ち上がっていななくも、もっと暴れるかと思いきや、瞬く間におとなしくなった。
 羽もシュッとしまわれ、視界から消える。

 シーンとした中、ポンポも羽馬も双方大きな動きは見せず。
 ただ羽馬が、耳を警戒するようにぴくぴく動かしたり、恐怖で尻尾を股に巻き込むようにしたり、少しづつ後退ったりはしてるけど。

 その間私たちは息を詰め、現れた三頭の羽馬をじっくり監察した。






【次回予告 第130話 三頭の羽馬】
 
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