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羽馬渓谷編
第131話 染まる翼
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白い翼が、付け根のところからじんわり。
虹が掛かるように、先に向けて染まり始めた。
上部が赤で、下部が紫。
見事な七色のグラデーション。
私は手のひらを羽馬の好きにフンスカさせたまま、目の前で起きているイリュージョンに心奪われる。
しばらくして、本人ならぬ本馬にも色変わりが終了した感覚があったようで。
翼の端まで完全に色が行き渡ると、ひときわ大きく翼を広げたのち、ふぁさり、虹の翼を閉じた。
ふわ~魅入っちゃった。
なんだかまだ夢見心地……
「空に舞い上がったら、天駆ける白い雲と虹みたいだろうなぁ、きっと」
優しく声をかけつつ、私が馬の部位において一番触るのが好きな箇所、アゴ下や鼻先をどさくさに紛れてむにむに弄り堪能する。
この馬、私にこれされても嫌いじゃないみたい。
柔らかでなんとも言えない感触、あ~気持ちいい~癒される~。
「うっひょえぇ! おら、こんただ美しぇ翼の色変化、見だごどがねぇど!
どでんし過ぎで、しょんべん漏らさねがったごど、褒めでぐれ」
「感動で未だ鳥肌が……。それにしても羨ましい。僕も翼が生えてたら、コニーの虹色に染まりたい」
「間近でド迫力、マジか。すげえ」
ふふ、それにしてもみんな、三者三様自分らしい驚きの表現ねえ。
『間近、マジか』、エタンったら気づかずに、ラップみたくナチュラルに韻を踏んでるし。
「野生の羽馬がこんたふうに人間さ懐ぐなんて。マウラナ様とガスパール様の言い伝えの中だげだど、おらは思ってだ。
なあ、クレ坊。あんとき、おら。九代目の蛍様さ関われねがったごど、悔しくねぇっつったら嘘になるんだども。
こうしておヌル様の歴史的瞬間さ、おらが立ぢ会えるどは、まったぐ夢みでゃだ。
コニー嬢っちゃ……ありがでぇ。ありがどなぁ。クレ坊。おら、いつ死んでも悔いはねえ」
ギャロ爺っちゃが、クレールの背にしがみついて、おいおいと泣きだした。
爺っちゃ……私、特になんにもしてないけど。
なんだかもらい泣けてくるよお。
「ギャロ爺さん。死ぬだなんて縁起の悪いこと言わないでくれ。僕たちと一緒にコニーの羽馬伝説を作っていこう。頼りにしてる、大先輩」
「そ、そいだば、おら。長生ぎせんとな、クレ坊。
しぇば、この羽馬に名前さつけでやんねぇど。
どりゃ。
ほうほう。
こりゃぁ、しったげ立派なお宝ぶら下げでらぞ。べっぴんな二頭の雌引ぎ連れでらばりある。
コニー嬢っちゃ。名前付げんなら、こいづ雄だんてな」
……ギャロ爺っちゃ。
名付けるのに性別知りたいと思ったよ?
オス馬がね、ハレムを作るのも部活で勉強したから知ってる。
でも……
股間を思いっきり覗いたあとに、下品なこと付け加えないでよろしい!
まったく感動が台無しだよ。
名前、うーん、どうしよう?
ポンポネットと同じく、お菓子関連の名前にしようかなあ。
ホワイトチョコみたいな色だから……。
象牙色って意味で、ホワイトチョコの商品名によく使われている『イボワール』はどうかしら?
ん~でも、フランス語知らない人に「いぼ」、しかも「悪くなったいぼ」みたいって思われそうで却下。
あらあら、この羽馬。
まだ私の手にふんすかしてる、可愛い。
お口に入れて味わってた魔石は、もう飲み込んだようだね。
甘えてるのかな? もっと欲しいのかな?
うふふ、キミはお鼻の柔らかいとこを、ふにふに触らせてくれるイイこですね~。
気持ち~。
あっ、そうだ!
「ロクム。ねえ、ロクムはどうかな?」
「おう、良いんじゃねえか?」
「あは、ロクム……可愛いね」
「ええ? ほんと? そっか~カッコいいオスだから可愛ならちょっと……」
「いや、尖らせてロクムっ言うコニーの口が可愛いって意味だよ。ロクム、いい名前だと思う。僕も大賛成だ」
慌てて口を抑える私。
「もうクレールからかわないで! ちゃんと理由があるんだから真面目に聞いてよぉ。
私ね、日本から遠くに離れた〈トルコ〉って国に旅したことがあるんだけど。
そこで食べたロクムっていう名前のお菓子が、とっても美味しかったんだ~。そんでそれが私の大好きな馬の鼻の柔らかいとこの、むにむにした感触によく似てるの」
「さっきっから嬉しそうに馬の顎やら鼻っ面を熱心に触ってんなあ、と思ってたが。ははは、楽しんでたのか、コニー。」
えへへ、にやけ顔バレてた? と、うなづく。
「その国にはさ、さっきお着替えしたニョキニョキ岩みたいなのがいっぱいある場所があってね。くり抜いて部屋に改造してある宿にも泊まったんだよ。馬に乗って村やら渓谷を巡る、現地旅にも参加したり、馬との思い出もある地なの。
それとね。
とある有名な児童文学の中で、魔女が誘惑に使うお菓子として、ロクムが描かれてるんだ。
爺っちゃの言うとおり、お嫁さん二頭もいるオス馬なら、蠱惑的なこのお菓子の名前が、ぴったりかなと思って」
「んだなや。高嶺の男前が二ひき、揃いも揃ってしっぽ振って付き従っちまうほど、柔っこぐで甘ぇ魅惑の主が乗る羽馬にゃ、ぴったりの名だぁ。
んだば。
額と額さ合わせで、三度名前言い聞がせでがら。
『名どおいどご背さ載せるごど受げ入れるだば魔石け』そんただ言ってがら、魔石ばかへるどえよ」
え? ふぇ? 爺っちゃ~、なんて言ってんのか、ちっとも分かんないよお~
【次回予告 第132話 名付けと呼び石】
𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣
マウラナ様……インドネシア出身、二代目おヌル様。
ガスパール様……フランス出身、六代目おヌル様
虹が掛かるように、先に向けて染まり始めた。
上部が赤で、下部が紫。
見事な七色のグラデーション。
私は手のひらを羽馬の好きにフンスカさせたまま、目の前で起きているイリュージョンに心奪われる。
しばらくして、本人ならぬ本馬にも色変わりが終了した感覚があったようで。
翼の端まで完全に色が行き渡ると、ひときわ大きく翼を広げたのち、ふぁさり、虹の翼を閉じた。
ふわ~魅入っちゃった。
なんだかまだ夢見心地……
「空に舞い上がったら、天駆ける白い雲と虹みたいだろうなぁ、きっと」
優しく声をかけつつ、私が馬の部位において一番触るのが好きな箇所、アゴ下や鼻先をどさくさに紛れてむにむに弄り堪能する。
この馬、私にこれされても嫌いじゃないみたい。
柔らかでなんとも言えない感触、あ~気持ちいい~癒される~。
「うっひょえぇ! おら、こんただ美しぇ翼の色変化、見だごどがねぇど!
どでんし過ぎで、しょんべん漏らさねがったごど、褒めでぐれ」
「感動で未だ鳥肌が……。それにしても羨ましい。僕も翼が生えてたら、コニーの虹色に染まりたい」
「間近でド迫力、マジか。すげえ」
ふふ、それにしてもみんな、三者三様自分らしい驚きの表現ねえ。
『間近、マジか』、エタンったら気づかずに、ラップみたくナチュラルに韻を踏んでるし。
「野生の羽馬がこんたふうに人間さ懐ぐなんて。マウラナ様とガスパール様の言い伝えの中だげだど、おらは思ってだ。
なあ、クレ坊。あんとき、おら。九代目の蛍様さ関われねがったごど、悔しくねぇっつったら嘘になるんだども。
こうしておヌル様の歴史的瞬間さ、おらが立ぢ会えるどは、まったぐ夢みでゃだ。
コニー嬢っちゃ……ありがでぇ。ありがどなぁ。クレ坊。おら、いつ死んでも悔いはねえ」
ギャロ爺っちゃが、クレールの背にしがみついて、おいおいと泣きだした。
爺っちゃ……私、特になんにもしてないけど。
なんだかもらい泣けてくるよお。
「ギャロ爺さん。死ぬだなんて縁起の悪いこと言わないでくれ。僕たちと一緒にコニーの羽馬伝説を作っていこう。頼りにしてる、大先輩」
「そ、そいだば、おら。長生ぎせんとな、クレ坊。
しぇば、この羽馬に名前さつけでやんねぇど。
どりゃ。
ほうほう。
こりゃぁ、しったげ立派なお宝ぶら下げでらぞ。べっぴんな二頭の雌引ぎ連れでらばりある。
コニー嬢っちゃ。名前付げんなら、こいづ雄だんてな」
……ギャロ爺っちゃ。
名付けるのに性別知りたいと思ったよ?
オス馬がね、ハレムを作るのも部活で勉強したから知ってる。
でも……
股間を思いっきり覗いたあとに、下品なこと付け加えないでよろしい!
まったく感動が台無しだよ。
名前、うーん、どうしよう?
ポンポネットと同じく、お菓子関連の名前にしようかなあ。
ホワイトチョコみたいな色だから……。
象牙色って意味で、ホワイトチョコの商品名によく使われている『イボワール』はどうかしら?
ん~でも、フランス語知らない人に「いぼ」、しかも「悪くなったいぼ」みたいって思われそうで却下。
あらあら、この羽馬。
まだ私の手にふんすかしてる、可愛い。
お口に入れて味わってた魔石は、もう飲み込んだようだね。
甘えてるのかな? もっと欲しいのかな?
うふふ、キミはお鼻の柔らかいとこを、ふにふに触らせてくれるイイこですね~。
気持ち~。
あっ、そうだ!
「ロクム。ねえ、ロクムはどうかな?」
「おう、良いんじゃねえか?」
「あは、ロクム……可愛いね」
「ええ? ほんと? そっか~カッコいいオスだから可愛ならちょっと……」
「いや、尖らせてロクムっ言うコニーの口が可愛いって意味だよ。ロクム、いい名前だと思う。僕も大賛成だ」
慌てて口を抑える私。
「もうクレールからかわないで! ちゃんと理由があるんだから真面目に聞いてよぉ。
私ね、日本から遠くに離れた〈トルコ〉って国に旅したことがあるんだけど。
そこで食べたロクムっていう名前のお菓子が、とっても美味しかったんだ~。そんでそれが私の大好きな馬の鼻の柔らかいとこの、むにむにした感触によく似てるの」
「さっきっから嬉しそうに馬の顎やら鼻っ面を熱心に触ってんなあ、と思ってたが。ははは、楽しんでたのか、コニー。」
えへへ、にやけ顔バレてた? と、うなづく。
「その国にはさ、さっきお着替えしたニョキニョキ岩みたいなのがいっぱいある場所があってね。くり抜いて部屋に改造してある宿にも泊まったんだよ。馬に乗って村やら渓谷を巡る、現地旅にも参加したり、馬との思い出もある地なの。
それとね。
とある有名な児童文学の中で、魔女が誘惑に使うお菓子として、ロクムが描かれてるんだ。
爺っちゃの言うとおり、お嫁さん二頭もいるオス馬なら、蠱惑的なこのお菓子の名前が、ぴったりかなと思って」
「んだなや。高嶺の男前が二ひき、揃いも揃ってしっぽ振って付き従っちまうほど、柔っこぐで甘ぇ魅惑の主が乗る羽馬にゃ、ぴったりの名だぁ。
んだば。
額と額さ合わせで、三度名前言い聞がせでがら。
『名どおいどご背さ載せるごど受げ入れるだば魔石け』そんただ言ってがら、魔石ばかへるどえよ」
え? ふぇ? 爺っちゃ~、なんて言ってんのか、ちっとも分かんないよお~
【次回予告 第132話 名付けと呼び石】
𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣
マウラナ様……インドネシア出身、二代目おヌル様。
ガスパール様……フランス出身、六代目おヌル様
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