キスから始まる

sakaki

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キスから始まる

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俺:和久井翼(わくい つばさ)は飲み会が嫌いだ。
普段は真面目でしっかりしてる人なのに、酒に酔った途端にだらしなくなったりノリが軽くなったり、そんな姿見たくない。
中でも特に嫌なのは、まさにこんな時だ。
「キース、キース!」
大合唱のキスコールが俺を包む。
「和久井、もう観念するしかないって・・」
俺の前には困り顔した親友:玉木千尋(たまき ちひろ)がいる。
ゲームで負けた二人は罰ゲームでキスー!とか言いやがった馬鹿を心から恨む。そして皆それを受け入れて、俺がどんなに抵抗してもキスしなきゃ納まらなくなってるこの場のノリが最悪だ。
「ほら、もうパッとして終わるから」
俺と違ってすっかり諦めてる玉木が俺の頭をがっしり掴む。止めろ!止めろ!止めろってば!!
「っん!」
バタバタ暴れてみるが、抵抗の甲斐なくあっさり唇を奪われた。しかも、
「んんーーー!?」
舌まで入れて来やがった、この馬鹿!!
「んっ! んん! っ・・んー!!」
バシバシ叩いてやっても、ちっとも離さねぇし! 酒臭い玉木の舌が絡んで来て、嫌らしい感触で口の中を蹂躙してる。ふざけんなよ、酔っ払い! 周りは引くどころか大盛り上がりだし!
「はい、罰ゲーム終了ー!」
ようやく解放してくれた玉木がにやりと笑い、周りの酔っ払いどもからは拍手喝采を浴びている。
俺は荒い息をつきながら思いっきり口を拭いた。そして、
「帰る!」
財布から自分の支払い分を出してテーブルに叩きつけ、ダッシュで店を飛び出した。



「あー、最悪」
家に着くと、俺は鞄を床に放り投げてベッドに倒れ込んだ。酒が入ってる状態で走ったりした所為でちょっと気分が悪い。頭もぐるぐるするし。
水でも飲みたいけど、動く気力がなかった。
「あんの馬鹿野郎ぉ・・・」
キスの感触が蘇って来るから、布団に顔を埋めて悶える。目にはちょっと涙も滲んでる。泣きそうなんだ。
「人の気も知らないで、玉木の馬鹿野郎が」
玉木の代わりに布団を殴る。
たかがキスで、しかも酔っ払いの席のキスで、こんなにウダウダいうのは可笑しいかもしれない。けど、仕方ないじゃないか。俺は玉木にずっと片思いしてるんだから。
玉木はヘテロだし、親友のポジションで十分満足してて、俺が勝手に好きってだけで・・・・・なのに、あんな風にノリでキスされるなんて最悪だ。
「あんなキスしやがって・・・」
指先で唇に触れて、玉木のキスの感触を思い返す。初めて触れた玉木の舌の熱さと柔らかさ・・・。
最悪だと思ってるのに、布団を挟んでる足の間が自然と熱くなってることに気付いて、またちょっと凹む。けど、仕方ないよな。好きな奴にあんな風にされたら、誰だって・・。
多少の罪悪感はありつつも、俺はズボンのベルトを外した。ボタンを外して、ジッパーを下げて、まずは下着越しに俺自身に触れてみる。少し固くなってる。
「・・・玉木・・」
息を飲んで、下着の中に手を入れる。直に握って、欲望のままに手を動かそうとした瞬間だった。
ーーーピーンポーン。
無情に響く、インターフォン。しかも、
ーーードンドンドン。
「和久井ー、起きてるかー? 入れてくれー」
ドアを叩く音と共に、俺を呼ぶのは玉木の声だ。あいつ何やってんだ!? 何しに来やがった!?
俺は慌ててパンツとズボンを上げて玄関に向かった。
「なんの用だよ?」
不機嫌そうに出迎えてやる。ついさっきオカズにしようとした玉木の顔がマトモに見れる訳もないので視線はもっぱら下の方だ。
「終電逃したから泊めてもらおうと思ってな」
「は?」
玉木は俺の返事も待たずにずかずかと上がり込む。ちょっと待てー!
「ネカフェとかカラオケとか行けばいいだろ!」
「だってお前ん家なら宿泊代タダじゃん。あ、お泊まりグッズなら買ってきたからご心配なく」
俺の抗議なんか全く気にせず、コンビニ袋から玉木の言う"お泊まりグッズ”を出してテーブルの上に並べていく。
「それに、なんかお前、すげー怒ってたから気になってたし」
玉木がばつの悪そうに言った。
「和久井、ああいうノリ嫌いだもんな。悪かった」
素直に謝って、冗談混じりに「反省してます」なんて頭を下げる。
そんな風に謝られると調子が狂うというか、俺もばつが悪いというか・・・。
「いや、あの時はキ・・ああしなきゃ納まんなかったわけだし、別にお前が謝らなくても・・」
俺の方こそ、怒りに任せて途中で帰ったりして悪かった・・・って一応謝ってみる。せっかく皆楽しそうだったのに、あの後シラケちゃったんなら俺の所為だし・・・。
って思ったのに、
「っつーことで、気を取り直して、もう一回しようぜ」
「は?」
玉木が俺の頭をガシッと掴んできたので、俺は愕然とした。
「お前とのキス、結構良かったから、もう一回」
「いやいやいや、お前何言ってんだ!?」
玉木の頭を押さえつけて必死に抵抗。顔に出ないし普通に喋ってると思ってたけど、こいつ実は相当酔ってる!?
「キスっつーか、いっそヤりたい。ゴムも買ってきたし」
「お前馬鹿だろ!?」
並べられた"お泊まりグッズ”の中には確かに玉木の言うとおりのものも含まれていた。
「馬鹿で良いから、ヤらして」
「ちょっ・・」
玉木に指を舐められてギョッとする。その隙をつかれ、床に押し倒されてしまった。
「玉木! 酔い過ぎだって! お前、俺が男だって知ってるだろ?」
シャレにならない状況なのだと分かり、俺は必死に玉木を正気に戻そうとする。
「うん、和久井は男だな」
捲り上げたTシャツを一気に脱がし、ぺったんこの胸を無遠慮に撫で回しながら玉木が言った。
「なぁ玉木、ちょっと落ち着・・」
今度は顔が近付いてきた。整ってて、同性から見ても格好いいって思える玉木の顔。見慣れた顔のはずなのに、なんかいつもとは違う色気がある。
「ん・・っ・・」
うっかり見惚れてたらキスをされた。皆の前でされたのと同じような・・いや、もっとずっと濃いキスだ。
「・ぅ・・んっ・・ぁ、やめっ」
玉木が不意に俺の下肢に触れたため、慌てて唇を離した。
ただでさえ、ついさっき自分で弄ろうとしてたんだ。そこはもうすっかり立ち上がってて、隠しきれない状態になってる。
「和久井もちゃんとその気じゃん」
「違っ・・あっ・・」
玉木が揶揄するように言って、俺のズボンを下着ごと脱がした。
「・・ぁん、あっ・・・」
否定したいのに、玉木の大きな手に包まれて刺激されると気持ちよすぎて変な声しか出ない。
「和久井、すげーエロい顔」
玉木は俺への愛撫を続けながら、片手だけで器用にTシャツを脱いだ。上半身の裸なんて、水着とか着替えの時とかで結構見慣れてるはずなのに、こういう状況だからか妙にドキドキしてしまう。
「ごめん、こっちもヤバい」
ベルトを外してジーパンのボタンを外すと、納まり切らなくなってる玉木のものでジッパーが押し下げられた。
「なぁ和久井・・・」
俺のを弄っていた手を離し、今度は胸に触れる。そうしながら、ガチガチになってる自分のを俺の太股に摺り付けてくる。
「したい。しよ?」
玉木の荒い息が俺の唇にかかる。酒の匂いがきつくて俺まで酔いそうだ。
初めて見る、玉木の欲情した顔。擦り付けられる玉木の熱の固まりが、俺から冷静さをはぎ取っていった。
「玉木」
玉木が酔っててもいいや。明日になって忘れられててもいい。好きだから、抱いて欲しい。
「来て・・」
今度は俺から玉木にキスをした。




翌朝。
目が覚めた瞬間に怒濤のように訪れる、冷静さと後悔の波。
何やってんだ、数時間前の俺ー!!!
玉木はまだ寝ている。裸のままで。ベッドの脇にはティッシュの山、使用済みのゴム。
どうしよう・・・ここは証拠隠滅をしておくべきなのか? って、なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだ? 玉木が覚えてたら意味ないし。いや、でも玉木が忘れてくれてたとしたら、綺麗さっぱり無かったことにしてしまって、俺の中での思い出として残しておくこともできるわけで。じゃあやっぱり証拠隠滅か。玉木のでかい図体動かして服着せるのは無理だろうから、とりあえずゴミ片して俺だけでもシャワーを・・・
「んー・・・和久井?」
「ひぃぃっ!」
起き抜けの脳味噌をせっかくフル回転して頑張ってたのに、なんと玉木が起きてしまった。
「あ、あの・・・玉木、これは・・その・・・」
何一つとして誤魔化せない状況だ。玉木が覚えていようが覚えて無かろうが、これじゃあどうしようもない・・・。
「あ゛ー・・・頭痛ぇ・・・二日酔いぃ・・・」
玉木は寝ぼけているのか二日酔いの所為なのか、ちっとも慌てる様子も驚く様子もない。
もしかしてまだ誤魔化せるか? 玉木がボケッとしてる間にせめてゴミを片付けて・・・
「片付け、俺やろうか? 和久井、体ツラくね?」
「え゛」
寝ぼけ口調で気遣われ、俺は硬直した。
「体っつーか、腰? 尻? 無理させただろ~」
玉木はベッドから抜け出ると、固まっている俺を抱き寄せて、パンツ越しに尻を撫でてきた。
「お、お前、昨日のこと・・おぼ、おぼ、覚え・・・?」
ガクガクと震えながら玉木を見上げる。
「そりゃ覚えてるだろ。お付き合い記念日になる訳だし?」
玉木はニヤリと笑い、俺の頭を掴んで乱暴なキスをした。
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