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番外編:逆転
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珍しく一緒に風呂に入り、リギィはしみじみと思った。
「なぁ、どうやったらブラムみたいにデカくなれんの?」
素直に疑問を口にすると、髪を洗い流していた最中だったブラムはひどく怪訝な顔をした。
「はぁ? どこ見てんだよ、お前」
「そっちじゃねぇよ! 背だよ、背!!」
リギィがムキになって怒鳴ると、ブラムはケラケラと声を上げて笑う。
どうやらまたからかわれてしまったようだ。
「別に何かやってデカくなったってわけじゃねーからなぁ・・・とりあえず牛乳でも飲んどけよ」
風呂を出てリギィの頭を粗雑に拭いた後で、ブラムが牛乳瓶を差し出す。
取り合えず受け取りつつも、リギィは口を尖らせた。
「オレはもっとすぐデカくなりたいんだよ・・・」
腑に落ちないという風に呟く。
リギィが自分の低身長を気にし始めたのは、言わずもがなユアンの存在だ。
ブラムがいつもいつもしているように、ユアンを後ろから抱きしめてみたいのだ。あの至近距離で上目使いで微笑んでほしい。
今のリギィでは、“抱きしめる”というよりも“しがみ付く”になってしまう。
「俺はお前が羨ましいけどな」
コーヒー牛乳を飲みつつブラムが言った。
「なんで?」
リギィはこれでもかと言う程身を乗り出して尋ねる。
ブラムは含みを持たせた笑みを浮かべ、リギィにそっと耳打ちをした。
「俺がお前なら、小虎の姿を存分に利用してユアンに甘えるけどな。色んなトコ舐めたりして」
「なっ・・・」
ブラムが言うと酷く卑猥な感じがして、リギィは一瞬で真っ赤になる。
途端にデコピンを食らわされた。
「って、お前そんなこと絶対すんなよ?」
自分で言っておきながら、ブラムが怪訝な顔をして釘を刺す。
「しねぇよ!!」
リギィはまたムキになって怒鳴った。
翌朝。
ソファの上で丸まって眠っていたはずのリギィは、ベッドの上で目を覚ました。
また寝惚けてブラムかユアンどちらかのベッドに入ってしまったのかと、恐る恐る体を起こしたがベッドに寝ていたのは自分だけだった。
「・・・あれ?」
ふと、かき上げた髪にあるはずのふわふわの耳がない。
視線の高さが心なしかいつもと違う。
そして、今自分の口から発せられたはずの声が妙に低かったような気がする。
「な、なんで!? 何だよこれ!?」
改めて自分の身体を見て困惑。
窓に映ったその姿は紛れもなくブラムだった。
「あ、ブラム。今日は随分ゆっくりでしたね」
部屋に入って来たユアンが微笑む。
“ブラム”と呼びかけられたのは勿論自分のことだ。
「あ・・ゆ、ユアン・・・・お、おはよう・・・」
しどろもどろに返事をする。
ユアンは少しばかりキョトンとした顔をした。
「何だか今日のブラム変ですね。まだ寝ぼけてるんですか?」
「・・え・・・」
傍らに腰掛け、上目使いで顔を覗き込まれる。
普段とは違った角度が妙に新鮮でドキドキさせられた。
(はっ! そうだ、今なら・・・)
思い立ち、勇気を振り絞ってユアンの肩に手を伸ばす。
いつものブラムとは程遠い、かなりぎこちない動作でユアンの身体を抱きすくめた。
(めちゃくちゃいい匂いがする・・・)
たったこれだけのことでリギィの心臓は破裂寸前だ。
「ブラム? 急にどうしたんですか?」
ユアンが首を傾げる。
「ぃ、いや、あの、な、なんとなく・・・」
これまたブラムとは程遠い挙動不審さ。
こんなに間近にユアンの顔を見ることなど初めてで、緊張度はマックスだ。
「ホントに今日のブラムは変ですね」
クスクスと笑いながら、ユアンがふわりと身を寄せる。
あまりのことにリギィは硬直した。
(ブラム・・・普段こんないい思いしてんのかよ・・・)
目前の幸せと、益々膨らんだブラムへの羨望と、何よりとにかくの緊張に、もはやパニックになるリギィだった。
一方、ブラムは・・・
「すげぇ・・ホントに自由自在に虎になれるな」
獣人族の変身能力を繰り返し楽しんでいた。
なぜ朝起きたらリギィの姿になっているのか・・・そんな疑問はとっくに失せた。
なってしまったものは仕方ないし、そのうち元に戻るだろうと高を括っていた。
「リギィ、何してるんですか?」
ひょっこりとユアンが顔を出す。
ブラム・・・基、ブラムの身体になっているリギィを起こしに行っていたはずだ。
「んー・・まぁ、ちょっとな。ブラム起きてた?」
リギィがどんなリアクションをしたのかが気になり、尋ねてみる。
ユアンは少し首を傾げた。
「起きてましたけど、何だかいつもと違うんですよね・・・どうしたのかな」
心配そうにため息。
テンパっているリギィを想像し、ブラムはほくそ笑んだ。
「あ、そうだ。リギィ、お耳掃除しましょうか?」
思い立ったようにユアンが言う。
荷物から耳かきを取り出し、ソファにちょこんと腰掛けて自分の膝をトントンと叩いた。
「・・・・ひざ・・まくらで?」
恐る恐るブラムが尋ねる。
「いつもそうしてるでしょう?」
当然、と言う風にユアンは答えた。
(アイツ、普段こんないい思いしてんのか・・・)
柔らかな太腿の感触を堪能しつつ、思いがけない悔しさを味わうブラムだった。
とはいえ、
(ま、元の身体に戻ったら俺もやってもらえばいいか・・・)
すぐにこう思い直すのはリギィとは違うところ。
ちなみに、翌朝には二人とも無事に元の身体に戻っていた。
わりとよくある、とある日の事件だった。
「なぁ、どうやったらブラムみたいにデカくなれんの?」
素直に疑問を口にすると、髪を洗い流していた最中だったブラムはひどく怪訝な顔をした。
「はぁ? どこ見てんだよ、お前」
「そっちじゃねぇよ! 背だよ、背!!」
リギィがムキになって怒鳴ると、ブラムはケラケラと声を上げて笑う。
どうやらまたからかわれてしまったようだ。
「別に何かやってデカくなったってわけじゃねーからなぁ・・・とりあえず牛乳でも飲んどけよ」
風呂を出てリギィの頭を粗雑に拭いた後で、ブラムが牛乳瓶を差し出す。
取り合えず受け取りつつも、リギィは口を尖らせた。
「オレはもっとすぐデカくなりたいんだよ・・・」
腑に落ちないという風に呟く。
リギィが自分の低身長を気にし始めたのは、言わずもがなユアンの存在だ。
ブラムがいつもいつもしているように、ユアンを後ろから抱きしめてみたいのだ。あの至近距離で上目使いで微笑んでほしい。
今のリギィでは、“抱きしめる”というよりも“しがみ付く”になってしまう。
「俺はお前が羨ましいけどな」
コーヒー牛乳を飲みつつブラムが言った。
「なんで?」
リギィはこれでもかと言う程身を乗り出して尋ねる。
ブラムは含みを持たせた笑みを浮かべ、リギィにそっと耳打ちをした。
「俺がお前なら、小虎の姿を存分に利用してユアンに甘えるけどな。色んなトコ舐めたりして」
「なっ・・・」
ブラムが言うと酷く卑猥な感じがして、リギィは一瞬で真っ赤になる。
途端にデコピンを食らわされた。
「って、お前そんなこと絶対すんなよ?」
自分で言っておきながら、ブラムが怪訝な顔をして釘を刺す。
「しねぇよ!!」
リギィはまたムキになって怒鳴った。
翌朝。
ソファの上で丸まって眠っていたはずのリギィは、ベッドの上で目を覚ました。
また寝惚けてブラムかユアンどちらかのベッドに入ってしまったのかと、恐る恐る体を起こしたがベッドに寝ていたのは自分だけだった。
「・・・あれ?」
ふと、かき上げた髪にあるはずのふわふわの耳がない。
視線の高さが心なしかいつもと違う。
そして、今自分の口から発せられたはずの声が妙に低かったような気がする。
「な、なんで!? 何だよこれ!?」
改めて自分の身体を見て困惑。
窓に映ったその姿は紛れもなくブラムだった。
「あ、ブラム。今日は随分ゆっくりでしたね」
部屋に入って来たユアンが微笑む。
“ブラム”と呼びかけられたのは勿論自分のことだ。
「あ・・ゆ、ユアン・・・・お、おはよう・・・」
しどろもどろに返事をする。
ユアンは少しばかりキョトンとした顔をした。
「何だか今日のブラム変ですね。まだ寝ぼけてるんですか?」
「・・え・・・」
傍らに腰掛け、上目使いで顔を覗き込まれる。
普段とは違った角度が妙に新鮮でドキドキさせられた。
(はっ! そうだ、今なら・・・)
思い立ち、勇気を振り絞ってユアンの肩に手を伸ばす。
いつものブラムとは程遠い、かなりぎこちない動作でユアンの身体を抱きすくめた。
(めちゃくちゃいい匂いがする・・・)
たったこれだけのことでリギィの心臓は破裂寸前だ。
「ブラム? 急にどうしたんですか?」
ユアンが首を傾げる。
「ぃ、いや、あの、な、なんとなく・・・」
これまたブラムとは程遠い挙動不審さ。
こんなに間近にユアンの顔を見ることなど初めてで、緊張度はマックスだ。
「ホントに今日のブラムは変ですね」
クスクスと笑いながら、ユアンがふわりと身を寄せる。
あまりのことにリギィは硬直した。
(ブラム・・・普段こんないい思いしてんのかよ・・・)
目前の幸せと、益々膨らんだブラムへの羨望と、何よりとにかくの緊張に、もはやパニックになるリギィだった。
一方、ブラムは・・・
「すげぇ・・ホントに自由自在に虎になれるな」
獣人族の変身能力を繰り返し楽しんでいた。
なぜ朝起きたらリギィの姿になっているのか・・・そんな疑問はとっくに失せた。
なってしまったものは仕方ないし、そのうち元に戻るだろうと高を括っていた。
「リギィ、何してるんですか?」
ひょっこりとユアンが顔を出す。
ブラム・・・基、ブラムの身体になっているリギィを起こしに行っていたはずだ。
「んー・・まぁ、ちょっとな。ブラム起きてた?」
リギィがどんなリアクションをしたのかが気になり、尋ねてみる。
ユアンは少し首を傾げた。
「起きてましたけど、何だかいつもと違うんですよね・・・どうしたのかな」
心配そうにため息。
テンパっているリギィを想像し、ブラムはほくそ笑んだ。
「あ、そうだ。リギィ、お耳掃除しましょうか?」
思い立ったようにユアンが言う。
荷物から耳かきを取り出し、ソファにちょこんと腰掛けて自分の膝をトントンと叩いた。
「・・・・ひざ・・まくらで?」
恐る恐るブラムが尋ねる。
「いつもそうしてるでしょう?」
当然、と言う風にユアンは答えた。
(アイツ、普段こんないい思いしてんのか・・・)
柔らかな太腿の感触を堪能しつつ、思いがけない悔しさを味わうブラムだった。
とはいえ、
(ま、元の身体に戻ったら俺もやってもらえばいいか・・・)
すぐにこう思い直すのはリギィとは違うところ。
ちなみに、翌朝には二人とも無事に元の身体に戻っていた。
わりとよくある、とある日の事件だった。
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