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四話後編
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***
「おい、リギィ。ユアン知らねぇ?」
ブラムはユアンを探していた。
ジョニスの衣装整理の手伝いで精神的疲労が募ったため癒しを求めているのだ。
キッチンには残念ながらアンジェしかおらずら寧ろ余計な疲労を被ったので部屋に来てみたのだが、
「知らないぞ。こっち戻ってきてから見てないし」
レナ&ラウルと遊んでいたリギィの返事は期待外れのものだった。
(一体どこ行ったんだ?)
途方に暮れつつ廊下を歩く。こんな時には煙草を吸いたくなるが、ゲストルームの窓際以外では禁煙だと団長に忠告されている。
「飼い主捜しか?番犬君」
ゴードーの部屋の前には団長がいた。人には禁止しておいて葉巻を吸っている。
「飼い主様ならここだぞ」
団長は部屋の中を指差す。
「なにやってんだ・・」
中を覗いたブラムはギョッとした。
ユアンがゴードーに寄り添い、膝の上には赤ちゃん虎たちを乗せて、すやすやと眠っている。
「おい、小屋の中に入ったら危険だってのは嘘かよ」
大声にならないように気を付けながら団長に問う。
「嘘じゃないさ。ゴードーはあたし以外の人間が小屋に入れば襲い掛かるし、小虎に触ろうとすりゃこのあたしにすら牙をむく」
答えるついでに葉巻の煙を吹きかけらた。
「ありゃまるでおとぎ話のワンシーンだね。不思議な子だ」
揶揄するような言い方だが、ブラムも以前同じ感想を抱いたことがある。
「アンタもあの不思議な力に惹かれたクチかい、近衛騎士団長さんよ」
「っ!?」
確信的な呼び掛けに、ブラムは思わず息を飲んだ。
「心配しなくても、城の連中に付き出そうなんざ思っちゃいないさ。他の連中は気付いてないようだしね」
団長は長い髪を弄びながら、またふっと紫煙を吹きかける。
「失踪中の近衛騎士団長に流浪の民と獣人族、見付けて欲しいのかってくらい目立つ組み合わせだね」
「色々と事情があんだよ」
ブラムはぼやくように言った。
「ここに来たのもその事情ってやつか?」
「まぁな」
団長の問いに頷き、リギィの兄を探していること、トイパル座の噂を聞いてやって来たことを話した。
「見当違いだったけどな」
ブラムはバツの悪そうに口許を掻く。
団長は少し考え込むような顔をした。
「そういうことなら、キヨイの街に行ってみたらどうだ?ゴードーの種付けもそこでしたんだ」
発せられたのは突然の提案。
そこは人と獣が共存する、獣人族の隠れ家のような場所らしい。その街なら或いは虎の獣人族にも会えるのではないか、と団長は言った。
「キヨイの街か。なるほどな」
思わぬ有力情報を得て、ブラムは深く頷いた。
「さぁ、そろそろ夕食だ。眠り姫を起こすぞ、番犬」
腕時計に目をやり、団長が伸びをする。
ゴードーを刺激しないようにゆっくりと扉を開けて中に入った。勿論ブラムは廊下で待機だ。
「なんでこんなとこで寝てたんだか」
ユアンの寝顔を改めて見て呟く。
「昨夜寝付けなかったんじゃないか。大事な番犬が泥棒猫に取られるんじゃないかと心配で」
団長はニヤニヤしながらブラムを見やった。
「誰が、」
「ブラム見っけー!」
反論しようとしたブラムに、背後からガバッとアンジェが抱きついてきた。
「ほらな」
団長はしたり顔だ。
(結局ユアンと話せてねぇし)
ブラムはがっくりと肩を落とした。
***
食卓にて、席の並びは昨日と同じだ。つまりユアンとは最も離れた席にいる。ユアンの手料理を食べられるのがせめてもの救いだと思っていたのに、それすら叶わず。ブラムの前にだけ置かれた料理が違うのだ。
「おや、スッポン鍋かい」
「うな丼だぁ」
「ニンニクの丸焼き」
「白子まであるな」
「これなぁに?」
「蛇のスープだねぃ」
ブラディにラウル、シルバに団長が目を丸くして、レナの質問にはジョニスが答えた。
「二人の熱ぅ~い夜のために精力付けて欲しいから」
アンジェが投げキスをしてくる。
「そんな夜は永久に来ねえけどな」
ブラムはきっぱりと否定するが、アンジェに堪える様子はない。
「コレはとっておきのスペシャルジュースね」
仕上げだとばかりに、ジョッキになみなみに注いだミックスジュースのようなものを置いた。
(フツーに食うけどさぁ)
アンジェの料理に箸を付けながらも、腑に落ちない心地になる。
(ユアン断ちさせられてる気分だぜ)
それは禁煙以上に辛いことだ。禁煙もしたことはないが。
ユアンは相変わらず団長やジョニスと談笑している。
(お・・)
じっと見つめていると、ユアンがこちらに気付いた。微笑んでくれる事を期待したのだが、残念ながらすぐに視線を逸らされてしまった。
(避けられた?)
思わぬ反応にショックを受ける。
(いや、まさか)
そんなはず無いと思い直し、食事を再開する。油断するとリギィにブラムの分まで食べられてしまいそうだ。
食事の後、ブラムは洗い物を任された。全員分の食器ともなれば相当な量だが、更にアンジェの調理後の片づけまで残っていた。
「作りながら片づけるって出来ないんだよねー」
アンジェがヘラヘラと笑う。
「ユアンみたいに手際良くはできないなぁ」
本気で褒めているのか、当て擦りなのかわからないことも言った。
「だったら手伝えよ」
眉を顰めてアンジェを見やる。ワイン片手に寛いでいる。良いご身分だ。
「ねぇ、ブラム。そろそろ、ムラムラ~っとしてこない?」
アンジェは瓶から直接ワインを含んだ後、淫猥な笑みで問いかける。
「別に」
ブラムは視線すら移さずに答え、鍋の焦げ付きを取ることに精を出した。
「おかしいなぁ」
アンジェは傍らにワイン瓶を置くと、ブラムの腕を思いきり引っ張った。
「んんっ!?」
一瞬の隙を突かれ、唇を奪われる。油断しきっていた所為で舌まで入れられ、じっとりと口の中を舐め回された。
「どう?その気になった?」
熱っぽい視線でアンジェが問う。
「いきなり何なんだよ」
ブラムはげんなりして袖口で自分の唇を拭った。そのまま鍋洗いの手を再開させると、アンジェは大きく首を捻った。
「アレ効かなかったのかな」
「なんだよ、アレって?」
嫌な予感がして追及すると、アンジェは誤魔化すようにと笑った。
「実はスペシャルジュースに、入れといたんだよね~。動物の繁殖のときに使う超強力精力剤」
「・・・」
ブラムは暫し絶句。そして項垂れた。
「何つーモンを飲ませようとしてんだよ」
ゾッとするとともに、飲まなくて助かったと安堵した。確かあのジュースは、餃子をのどに詰まらせそうになったリギィが一気に飲み干したのだ。
「あの小虎ちゃんが飲んじゃったんだ~」
アンジェは残念そうに肩を竦める。だがすぐにニヤリと笑い、ブラムの耳元で囁いた。
「じゃあ今頃大変かもね。虎の発情期ってすっごいから」
「なっ・・・」
アンジェの言葉に危機感が過る。リギィは今、ユアンと二人で部屋にいるのだ。
ブラムは洗い物を投げ出し、一目散に駆け出した。全速力で走り、二人の部屋に向かう。
「ユアン!大丈夫か!?」
蹴破らんばかりの勢いで扉を開けると、ユアンとリギィはベッドの上にいた。それも、リギィがユアンに覆い被さるような恰好だ。
「何やってんだテメェ!!」
凄みを聞かせた声で怒鳴り、リギィの首根っこを引き上げる。殴り付けようと拳を振り上げるが、
「待って!リギィは気絶してるんですよ!」
ユアンに制止されてハッとした。確かによく見てみれば、リギィは気を失って伸びている。鼻血を出して。
「部屋に戻ってからずっと具合が悪そうだったんです。ベッドに横にならせてあげようとしたら、突然僕の方に倒れてきて、鼻血がたくさん出て、そのまま気を失っちゃって・・・」
オロオロするユアン。
おそらくだが、具合が悪そうと言うのは発情していた状態で、倒れて来てというのはユアンを押し倒したのではないだろうか。だが結局興奮のあまり鼻血を吹いて失神してしまった、と。何とも情けない結果だ。
(リギィがガキで助かった)
ブラムは未だ掴んだままのリギィをまじまじと見つめた。
「ビビらせやがって」
リギィをベッドに寝かせてやりながら思わずぼやく。
「急にどうしちゃったんでしょう」
ユアンは心配そうにリギィの傍らに座った。鼻血を拭いてやる手つきがとても優しい。
ブラムが面白くない気持ちでそれを見守っていると、開け放したままだった扉の方からノック音が響いた。
「あ~あ、小虎ちゃんには刺激が強すぎたかぁ」
ブラムの後を追ってきたアンジェがケラケラと笑う。
「誰の所為だと思ってんだよ」
呑気な態度にブラムは舌打ち。
キッチンへ戻ろうと扉の方へ向かうと、アンジェはまるでそれが自然な流れとでもいうようにブラムの腕に絡みついた。
「早く戻ってさっきのキスの続きしようよ~」
わざとらしく声を張る。
「お、お前なぁ」
一体何を言い出すのかと、ブラムは咄嗟にユアンを振り返った。ユアンはリギィの看病に夢中で、こちらのことは気にもしていないようだ。
(良いんだか悪いんだか・・・)
ホッとしながらも、ここまで何とも思われないのも複雑だ。
ユアンが腕を組んで部屋を出ていく二人を揺れる瞳で見つめていたことに、ブラムは気づいていなかった。
「いい加減離れろっての」
部屋を出た後で、ブラムはアンジェの腕を引き剥がした。
***
キッチンの後片付けを終わらせてから、ブラムはまずアンジェを撒いた。そして風呂に入ってからユアンとリギィの部屋に行ったのだが、ユアンの代わりレナとラウルがいた。
ユアンは二人にリギィの看病を頼んで風呂に行ってしまったらしい。行き違いになったようだ。
二人の遊び相手になりながら忠犬の如くユアンの帰りを待ってはみるが、一向に戻ってくる気配はない。もしかしたら、昨日のブラムのように風呂を出たところで団長なり誰なりに捕まってしまったのかもしれない。
そうしているうちに、すっかり良い子は寝る時間。ブラムも忠犬を断念し、良い子のレナ&ラウルと共に自分の部屋に戻ることにした。
(大丈夫だよな)
念のため部屋を出る前にリギィの様子を伺う。リギィは大きなイビキをかいている。いつものような虎の姿にはなっていないが、ぐっすり眠れてはいるようだ。ブラムはリギィの額を撫で、布団をかけ直してやってから部屋を出た。
(これじゃマジでユアン断ちだな)
部屋に戻るなり、深い溜息と共にベッドに倒れ込む。
(禁断症状でも出そうだ)
ユアンの笑顔が見たい。ユアンに触れたい。ユアンの香りが恋しい。
(さっき抱きついときゃ良かった・・・)
そう思っても後悔先に立たずだ。
再び溜息を洩らし、せめてもの慰めにと煙草を吸うべく起き上った。
コンコン。
煙草に火をつけたところで、タイミングよく扉を叩く音がする。
(またアンジェか?)
警戒しつつ扉を見やる。確か昨日アンジェが訪ねて来たのも今頃だったはずだ。うんざりしながら、煙草を咥えたままで出迎えに行った。
「なんの用だよ、アンジェ」
ドアを開けてぞんざいに言う。そこにいたのはアンジェではなかった。
「ユアン・・・」
願って止まなかった、愛しのユアンが立っている。それもなぜか枕を抱いて。
「あの、今日はこっちで寝ても良いですか?」
恐る恐るという風に尋ねる。
「アンジェさんが、リギィの介抱は自分がやるからって。僕はブラムの部屋に泊れって言われて」
しょんぼりと肩を落とす。とどのつまり、ユアンは追い出されてしまったらしい。
アンジェなりに責任を感じたのか、それともユアンに意地悪をしたかったのかは不明だが、ブラムにとってはたなぼたラッキーだ。
「ベッドもデカいし、二人で寝るくらい余裕だろ」
ニッと笑って招き入れる。ユアンは安堵したように微笑んだ。
(あのジュース、俺が飲まなくて助かったな。リギィには悪いけど)
早速枕を並べているユアンをぼんやりと眺めて密かに思う。如何に薬を盛られたとしてもアンジェに欲情はしないが、相手がユアンなら話は別だ。お子様のリギィでさえあの様だったのだから、もしもブラムが飲んでいたとしたら、
(それこそ、発情期の獣状態ってな)
シャレにならないと苦笑しつつ、開けた窓に向かって煙を吐き出した。
「ホントに大きなベッドですね」
ユアンが感心したように言う。
「だよな。一人だと広すぎたくらいだ」
背を向けたままでブラムもしみじみと頷いた。
「昨夜は一人だったんですか?」
「そりゃそうだろ」
ユアンの声が思いがけず近いことに気付く。
そして次の瞬間、背中にふわりとした温もりを感じた。
「ゆ、ユアン?」
ユアンが寄り添っているのだと分かり、ブラムは戸惑う。いつもブラムからは抱きついているが、ユアンがこんな風に触れてくるのは珍しい事だ。
「部屋に来るの、アンジェさんの方が良かった?」
ポツリとユアンが問う。ブラムが扉を開けてすぐにアンジェの名前を呼んでしまった所為だろう。
「そんなわけないだろ」
きっぱりと言ってのける。ユアンはブラムの背に額をつけて、消え去りそうな声で言った。
「僕・・・アンジェさんに嫉妬しました」
それは確かにユアンの声で発せられた言葉。驚きのあまり、ブラムは咥えていた煙草を落とした。
「熱っ!!」
「えっ?」
ブラムの大声に驚いたユアンが慌てて離れる。煙草の火は手の甲にクリティカルヒット。おまけに反対側の手のひらまで火傷した。カーペットを焦がすわけにはいかないという咄嗟の判断の賜物だ。
「大丈夫ですか?」
ユアンがオロオロしながらブラムの顔を覗き込む。ブラムは灰皿に煙草を押し付け、手に付いた灰を払ってからユアンに向き直った。
「ビックリし過ぎた」
照れ隠しも相まってバツの悪そうに言う。ユアンはクスクスと笑った。
「僕もビックリしました。嫉妬なんて、生まれて初めてですから」
ブラムの手を取り、暖かい光を放って火傷を治す。火傷がきれいに治ったことを確かめてから、銀色の瞳は再びブラムを捉えた。
「ブラムといると、初めてのことばかりですね」
向けられたのは、蕩けるような極上の微笑み。引き寄せられずにはいられない、特別な甘さがそこにはあった。
「ブラム?」
ユアンの身体を思い切り抱きしめる。
「お前可愛過ぎ」
不思議そうにしているユアンの髪をゆっくりと撫で、よりいっそう抱く力を強めた。ユアンも少し躊躇うようにしながらブラムの背に腕を回す。
「ね・・ブラム」
暫しの間互いの体温を噛み締めた後で、不意にユアンが体を離す。少しばかり言い淀むような素振りを見せてから問いかけた。
「アンジェさんとキス、したの?」
「え゛」
責める訳ではないが、何処か拗ねているような面持ちだ。あの時のアンジェの言葉はやはり聞こえていたらしい。
(あの野郎・・・)
密かに頭を抱える。今更ながらにアンジェが恨みがましく思えた。
「不意打ち食らっただけだよ。あんなのしたうちに入らねーって」
「・・・・」
弁解するように言ってみるが、ユアンは黙ったままブラムを見つめるのみ。やましい気持ちがある訳でもないのに、何だか嫌な汗が滲んできた。
「油断してた俺も悪いけどな。ホントに別に・・・」
なんでもないのだと伝えようとするが、ユアンの顔が目前に迫ったため言葉を止めた。ほんの少し触れるだけですぐに離れて行ってしまったが、下唇に感じた柔らかい感触は紛れもなくユアンの唇だ。
「ホントに油断してますね」
少しばかり眉を顰め、わざと意地の悪い言い方をする。そしてブラムから背を向けて離れてしまった。
(今日のユアンは心臓に悪いな)
余韻の残る唇に触れ、ふっと笑みを漏らす。
アンジェにされたものと比べれば、子供の挨拶程度の軽い口付けだ。けれどブラムにとっては何より重い意味を持つ。
「コラ」
ユアンに歩み寄り、後ろからギュッと抱きすくめる。近づいて見れば、ユアンは耳まで赤く染まっていた。
「不意打ちじゃ、したうちに入らねーって言ってんだろ」
囁きながら、熱を帯びた耳元にキスを落とす。できる限りの穏やかな手つきでユアンの頬に触れてこちらを向かせ、徐々に顔を近付けた。今度は一瞬で離れてしまわないよう、ゆっくりと唇を重ねた。ユアンの長い睫が震えて、ブラムを擽る。
「こういうのも、初めてか?」
いったん唇を離し、再び正面から向き合って問いかける。
ユアンはそっと頷いた。高揚した白い肌が、潤んだ銀色の瞳が可愛らしくてたまらない。
ブラムは吸い寄せられるように再びユアンの唇を塞いだ。
「・・っ・・ん・・」
ゆっくりと舌を差し入れ、怯えたように震えるユアンの舌に絡める。ユアンは戸惑いながら、それでも懸命にブラムを受け入れていた。キスを交わしながらも徐々にベッドへと誘う。
このまま押し倒してしまおうというブラムの思惑は、残念ながら叶わなかった。
コンコン、コンコン。
ノックする音が虚しく響く。
(ウソだろ)
硬直するブラム。
しかも、
「ブラム~、一緒に寝よ~」
「ユアン~、一緒に寝よ~」
聞こえてきたのはレナとラウルの無邪気な呼び声。これは流石に無視できない。
「あのね、アンジェが教えてくれたんだよ」
「ブラムとね、ユアンが一緒に寝るから、レナとラウルも一緒に寝たらって言ったの」
部屋に招き入れると、レナとラウルは口々に言った。色違いのパジャマと、にぱっと笑顔が実に無垢で可愛らしい。
だがブラムは、
(あいつの差し金か)
アンジェが意図的に邪魔をしたのだと分かり、密かに歯ぎしりをした。
なまじ良い雰囲気だったために悔しさもひとしお、欲求不満もひとしおというものだ。
「それじゃあ皆で並んで寝ましょうね」
「「うん!」」
すっかりいつも通りのユアンに戻ってしまったようだ。レナとラウルが持参してきた枕を並べ、いそいそと寝床の準備をしている。
(ま、いいか。今はこれで)
楽しそうな三人にブラムは苦笑。そっと息をつき、ようやく並び順の決まったらしいベッドに入ることにした。
***
翌朝。部屋の外が何やら騒がしく、ブラムは不本意ながらに起こされることとなった。
(一体何の騒ぎだよ?)
重たい瞼を渋々持ち上げると、ユアンの寝顔が思いがけないほどの至近距離にあった。
昨晩ブラムの両側にはレナとラウルがいたはずなのだが、早朝稽古をしていると言っていたし、既に起きて行ったのだろう。早起きで結構なことだ。
(なんか起きたくねぇな)
じっくりとユアンを見つめ、頬を緩ませる。表の様子は気になるのだが、この一時を終わらせるのは惜しい。
(昨日のあれは夢でも妄想でもねぇ・・・よな?)
朝日に照らされて輝く銀色の髪をそっと撫でる。ユアンの薄く開かれた唇を見れば、昨夜の甘やかな感触が蘇ってくるようだった。
「・・ブラム?」
長い睫が揺れ、ゆっくりと瞳が開かれる。ぼんやりとした表情でブラムを見つめ、徐々に蕩けるような笑顔に変わっていった。
「悪い。起こしたか?」
髪に触れていた手を放し、バツの悪そうに尋ねる。ユアンは首を振り、ふわりとブラムに身を寄せた。
「ちょっとだけ、寝坊したい気分です」
頬が仄かに赤く染まり、それを隠すようにブラムの胸元へと顔を埋める。なんとも幸せな瞬間だ。
けれど残念な事に、廊下から聞こえる足音が徐々に近づいて来ていた。
「あの足音は、リギィだな」
名残惜しい心地がしながらも渋々起き上り、溜息と共に呟く。
「何かあったんでしょうか?」
ユアンも表の騒がしさには気づいていたらしい。
ブラムが朝の一服を使用と立ち上がると、案の定のリギィが部屋の中へ飛び込んできた。
「ブラム、大変だ!」
血相を変えてブラムに駆け寄る。朝っぱらから元気の良いことだ。すっかり具合も良くなったらしい。
「一体何事だよ?」
ブラムはげんなりしつつ煙草を咥える。
「ユアンがいねぇんだ!!」
リギィは叫んだ。朝起きて、隣のベッドにユアンがいないことに驚いたのだろう。
「僕ここにいますよ」
「えっ!?」
ユアンがひらひらと手を振って見せれば、大きな目を殊更見開く。耳としっぽもピーンと立った。
「なんだよ、そんなことで騒いでんのか?」
呆れ返るブラム。リギィは慌ててかぶりを振った。
「それもだけど、それだけじゃないんだよ! 警邏隊が来るんだ!」
バタバタを手を振りまわして必死に危機感を伝える。
警邏隊は教会と城の双方の統治下にある地方機関。つまりはユアンとブラム、二人ともにとっての大ピンチではないか。
「なんでそんなもんが来るんだよ?」
流石のブラムも些か焦る。
「団長がやらかしたんだよ。昨日の大食い対決で、客に賭けさせてたらしい」
アンジェがひょっこり顔を出し、頭を抱えながら答えた。その手にはリギィとユアンの荷物が持たれている。
「ブラム達は裏口から逃げて。団長が、客人のアンタたちを巻き込むわけにはいかないってさ」
リギィとユアンに荷物を手渡し、テキパキとした口調で言う。
「とんでもねぇ団長さんだな」
「返す言葉もないよ」
荷物を受け取りながらブラムがぼやく。アンジェもため息を漏らした。
大急ぎで旅支度を終えて裏口に行くと、ジョニスが待ち構えていた。
「バタバタとした別れになって残念だねぃ。ユアンちゃん、これ選別だよ」
嘆くように言いながら、ユアンに風呂敷包みを渡す。
「毎晩これを着てボクのことを思い出しておくれよぉ~」
包みの中身はジョニスお手製の寝巻だという。芝居がかった仕草で別れを惜しみ、ユアンの手を握ったり肩を抱いたりと好き放題だ。
「あ、ありがとうございます」
苦笑するユアン。
「よーし、急ぐぞ」
ブラムはジョニスから引き剥がすようにユアンの手を引くが、一難去ってはまた一難。今度はアンジェがブラムに抱きついた。
先ほどまでの真剣な表情が嘘のように、しなを作って猫なで声を出す。
「次会ったときは熱い夜を過ごそうね」
迫ってくる唇。ブラムがそれを押し返す前に、ユアンがブラムの袖を引っ張った。
「・・・」
「・・・」
引き離されたアンジェはユアンをギロリと睨む。ユアンは困惑したような表情を浮かべて、それでもじっとアンジェを見返した。
二人の間には小さな火花が散っている。
「も、もう!さっさと行こうってば!!」
二人の間に割って入ったのはリギィだ。
その勇気ある行動にブラムは内心拍手を送った。
「あ~あ、行っちゃった」
三人の姿が見えなくなり、アンジェが残念そうに言う。
「寂しくなるねぃ」
ジョニスもやれやれと肩を竦めた。
「さーて団長の尻拭いだ」
ぼやきながら警邏隊の来ている表玄関へと向かうアンジェ。
それを見送った後で、ジョニスはジャケットの内ポケットから懐中時計を取り出した。
スイッチを押すと、時計の文字盤だったものがぐにゃりと歪む。
「どーも、ボクです」
渦を巻く文字盤に向かって呟くと、ザザザッという音の後で相手からの応答があった。
『・・・ザザ・・・どう・・も・・ザザザ』
通信の初めはいつも雑音がひどい。
「今こちらを出て行かれましたよ。やはりロザリア様は近衛騎士団長と共にいらっしゃる。おまけに獣人族の少年も一緒ね」
聊か早口で必要な情報を一気に伝える。
『・・やはり・・・・彼らが・・ザザ・・・騎士団長殿は・・本物に間違い・・・ない・・か? 』
徐々に雑音が晴れて相手の声がはっきりと聞こえ始める。
「間違いないね。ちゃんと風呂場で確認した。リングファット王家の紋章がくっきりあったよぉ」
男の風呂を覗くのは二度と嫌だと軽口を付け加えれば、相手は少し笑ったようだ。
『報告・・感謝しますよ。ジョニス司祭・・・ザザザ・・』
ブツンという音とともに通信が切れる。文字盤の歪みが直り、元通りのただの時計に戻った。
「感謝されても嬉しくないねぃ」
ふーっと溜息を洩らす。
「ごめんねぃ、ユアンちゃん」
もはや届かない相手へと呟いた。
「すべてはロザリア様のために」
遠い目をして、懐中時計を懐へと仕舞い込む。時計の裏側には薔薇の紋章が象られていた。
「おい、リギィ。ユアン知らねぇ?」
ブラムはユアンを探していた。
ジョニスの衣装整理の手伝いで精神的疲労が募ったため癒しを求めているのだ。
キッチンには残念ながらアンジェしかおらずら寧ろ余計な疲労を被ったので部屋に来てみたのだが、
「知らないぞ。こっち戻ってきてから見てないし」
レナ&ラウルと遊んでいたリギィの返事は期待外れのものだった。
(一体どこ行ったんだ?)
途方に暮れつつ廊下を歩く。こんな時には煙草を吸いたくなるが、ゲストルームの窓際以外では禁煙だと団長に忠告されている。
「飼い主捜しか?番犬君」
ゴードーの部屋の前には団長がいた。人には禁止しておいて葉巻を吸っている。
「飼い主様ならここだぞ」
団長は部屋の中を指差す。
「なにやってんだ・・」
中を覗いたブラムはギョッとした。
ユアンがゴードーに寄り添い、膝の上には赤ちゃん虎たちを乗せて、すやすやと眠っている。
「おい、小屋の中に入ったら危険だってのは嘘かよ」
大声にならないように気を付けながら団長に問う。
「嘘じゃないさ。ゴードーはあたし以外の人間が小屋に入れば襲い掛かるし、小虎に触ろうとすりゃこのあたしにすら牙をむく」
答えるついでに葉巻の煙を吹きかけらた。
「ありゃまるでおとぎ話のワンシーンだね。不思議な子だ」
揶揄するような言い方だが、ブラムも以前同じ感想を抱いたことがある。
「アンタもあの不思議な力に惹かれたクチかい、近衛騎士団長さんよ」
「っ!?」
確信的な呼び掛けに、ブラムは思わず息を飲んだ。
「心配しなくても、城の連中に付き出そうなんざ思っちゃいないさ。他の連中は気付いてないようだしね」
団長は長い髪を弄びながら、またふっと紫煙を吹きかける。
「失踪中の近衛騎士団長に流浪の民と獣人族、見付けて欲しいのかってくらい目立つ組み合わせだね」
「色々と事情があんだよ」
ブラムはぼやくように言った。
「ここに来たのもその事情ってやつか?」
「まぁな」
団長の問いに頷き、リギィの兄を探していること、トイパル座の噂を聞いてやって来たことを話した。
「見当違いだったけどな」
ブラムはバツの悪そうに口許を掻く。
団長は少し考え込むような顔をした。
「そういうことなら、キヨイの街に行ってみたらどうだ?ゴードーの種付けもそこでしたんだ」
発せられたのは突然の提案。
そこは人と獣が共存する、獣人族の隠れ家のような場所らしい。その街なら或いは虎の獣人族にも会えるのではないか、と団長は言った。
「キヨイの街か。なるほどな」
思わぬ有力情報を得て、ブラムは深く頷いた。
「さぁ、そろそろ夕食だ。眠り姫を起こすぞ、番犬」
腕時計に目をやり、団長が伸びをする。
ゴードーを刺激しないようにゆっくりと扉を開けて中に入った。勿論ブラムは廊下で待機だ。
「なんでこんなとこで寝てたんだか」
ユアンの寝顔を改めて見て呟く。
「昨夜寝付けなかったんじゃないか。大事な番犬が泥棒猫に取られるんじゃないかと心配で」
団長はニヤニヤしながらブラムを見やった。
「誰が、」
「ブラム見っけー!」
反論しようとしたブラムに、背後からガバッとアンジェが抱きついてきた。
「ほらな」
団長はしたり顔だ。
(結局ユアンと話せてねぇし)
ブラムはがっくりと肩を落とした。
***
食卓にて、席の並びは昨日と同じだ。つまりユアンとは最も離れた席にいる。ユアンの手料理を食べられるのがせめてもの救いだと思っていたのに、それすら叶わず。ブラムの前にだけ置かれた料理が違うのだ。
「おや、スッポン鍋かい」
「うな丼だぁ」
「ニンニクの丸焼き」
「白子まであるな」
「これなぁに?」
「蛇のスープだねぃ」
ブラディにラウル、シルバに団長が目を丸くして、レナの質問にはジョニスが答えた。
「二人の熱ぅ~い夜のために精力付けて欲しいから」
アンジェが投げキスをしてくる。
「そんな夜は永久に来ねえけどな」
ブラムはきっぱりと否定するが、アンジェに堪える様子はない。
「コレはとっておきのスペシャルジュースね」
仕上げだとばかりに、ジョッキになみなみに注いだミックスジュースのようなものを置いた。
(フツーに食うけどさぁ)
アンジェの料理に箸を付けながらも、腑に落ちない心地になる。
(ユアン断ちさせられてる気分だぜ)
それは禁煙以上に辛いことだ。禁煙もしたことはないが。
ユアンは相変わらず団長やジョニスと談笑している。
(お・・)
じっと見つめていると、ユアンがこちらに気付いた。微笑んでくれる事を期待したのだが、残念ながらすぐに視線を逸らされてしまった。
(避けられた?)
思わぬ反応にショックを受ける。
(いや、まさか)
そんなはず無いと思い直し、食事を再開する。油断するとリギィにブラムの分まで食べられてしまいそうだ。
食事の後、ブラムは洗い物を任された。全員分の食器ともなれば相当な量だが、更にアンジェの調理後の片づけまで残っていた。
「作りながら片づけるって出来ないんだよねー」
アンジェがヘラヘラと笑う。
「ユアンみたいに手際良くはできないなぁ」
本気で褒めているのか、当て擦りなのかわからないことも言った。
「だったら手伝えよ」
眉を顰めてアンジェを見やる。ワイン片手に寛いでいる。良いご身分だ。
「ねぇ、ブラム。そろそろ、ムラムラ~っとしてこない?」
アンジェは瓶から直接ワインを含んだ後、淫猥な笑みで問いかける。
「別に」
ブラムは視線すら移さずに答え、鍋の焦げ付きを取ることに精を出した。
「おかしいなぁ」
アンジェは傍らにワイン瓶を置くと、ブラムの腕を思いきり引っ張った。
「んんっ!?」
一瞬の隙を突かれ、唇を奪われる。油断しきっていた所為で舌まで入れられ、じっとりと口の中を舐め回された。
「どう?その気になった?」
熱っぽい視線でアンジェが問う。
「いきなり何なんだよ」
ブラムはげんなりして袖口で自分の唇を拭った。そのまま鍋洗いの手を再開させると、アンジェは大きく首を捻った。
「アレ効かなかったのかな」
「なんだよ、アレって?」
嫌な予感がして追及すると、アンジェは誤魔化すようにと笑った。
「実はスペシャルジュースに、入れといたんだよね~。動物の繁殖のときに使う超強力精力剤」
「・・・」
ブラムは暫し絶句。そして項垂れた。
「何つーモンを飲ませようとしてんだよ」
ゾッとするとともに、飲まなくて助かったと安堵した。確かあのジュースは、餃子をのどに詰まらせそうになったリギィが一気に飲み干したのだ。
「あの小虎ちゃんが飲んじゃったんだ~」
アンジェは残念そうに肩を竦める。だがすぐにニヤリと笑い、ブラムの耳元で囁いた。
「じゃあ今頃大変かもね。虎の発情期ってすっごいから」
「なっ・・・」
アンジェの言葉に危機感が過る。リギィは今、ユアンと二人で部屋にいるのだ。
ブラムは洗い物を投げ出し、一目散に駆け出した。全速力で走り、二人の部屋に向かう。
「ユアン!大丈夫か!?」
蹴破らんばかりの勢いで扉を開けると、ユアンとリギィはベッドの上にいた。それも、リギィがユアンに覆い被さるような恰好だ。
「何やってんだテメェ!!」
凄みを聞かせた声で怒鳴り、リギィの首根っこを引き上げる。殴り付けようと拳を振り上げるが、
「待って!リギィは気絶してるんですよ!」
ユアンに制止されてハッとした。確かによく見てみれば、リギィは気を失って伸びている。鼻血を出して。
「部屋に戻ってからずっと具合が悪そうだったんです。ベッドに横にならせてあげようとしたら、突然僕の方に倒れてきて、鼻血がたくさん出て、そのまま気を失っちゃって・・・」
オロオロするユアン。
おそらくだが、具合が悪そうと言うのは発情していた状態で、倒れて来てというのはユアンを押し倒したのではないだろうか。だが結局興奮のあまり鼻血を吹いて失神してしまった、と。何とも情けない結果だ。
(リギィがガキで助かった)
ブラムは未だ掴んだままのリギィをまじまじと見つめた。
「ビビらせやがって」
リギィをベッドに寝かせてやりながら思わずぼやく。
「急にどうしちゃったんでしょう」
ユアンは心配そうにリギィの傍らに座った。鼻血を拭いてやる手つきがとても優しい。
ブラムが面白くない気持ちでそれを見守っていると、開け放したままだった扉の方からノック音が響いた。
「あ~あ、小虎ちゃんには刺激が強すぎたかぁ」
ブラムの後を追ってきたアンジェがケラケラと笑う。
「誰の所為だと思ってんだよ」
呑気な態度にブラムは舌打ち。
キッチンへ戻ろうと扉の方へ向かうと、アンジェはまるでそれが自然な流れとでもいうようにブラムの腕に絡みついた。
「早く戻ってさっきのキスの続きしようよ~」
わざとらしく声を張る。
「お、お前なぁ」
一体何を言い出すのかと、ブラムは咄嗟にユアンを振り返った。ユアンはリギィの看病に夢中で、こちらのことは気にもしていないようだ。
(良いんだか悪いんだか・・・)
ホッとしながらも、ここまで何とも思われないのも複雑だ。
ユアンが腕を組んで部屋を出ていく二人を揺れる瞳で見つめていたことに、ブラムは気づいていなかった。
「いい加減離れろっての」
部屋を出た後で、ブラムはアンジェの腕を引き剥がした。
***
キッチンの後片付けを終わらせてから、ブラムはまずアンジェを撒いた。そして風呂に入ってからユアンとリギィの部屋に行ったのだが、ユアンの代わりレナとラウルがいた。
ユアンは二人にリギィの看病を頼んで風呂に行ってしまったらしい。行き違いになったようだ。
二人の遊び相手になりながら忠犬の如くユアンの帰りを待ってはみるが、一向に戻ってくる気配はない。もしかしたら、昨日のブラムのように風呂を出たところで団長なり誰なりに捕まってしまったのかもしれない。
そうしているうちに、すっかり良い子は寝る時間。ブラムも忠犬を断念し、良い子のレナ&ラウルと共に自分の部屋に戻ることにした。
(大丈夫だよな)
念のため部屋を出る前にリギィの様子を伺う。リギィは大きなイビキをかいている。いつものような虎の姿にはなっていないが、ぐっすり眠れてはいるようだ。ブラムはリギィの額を撫で、布団をかけ直してやってから部屋を出た。
(これじゃマジでユアン断ちだな)
部屋に戻るなり、深い溜息と共にベッドに倒れ込む。
(禁断症状でも出そうだ)
ユアンの笑顔が見たい。ユアンに触れたい。ユアンの香りが恋しい。
(さっき抱きついときゃ良かった・・・)
そう思っても後悔先に立たずだ。
再び溜息を洩らし、せめてもの慰めにと煙草を吸うべく起き上った。
コンコン。
煙草に火をつけたところで、タイミングよく扉を叩く音がする。
(またアンジェか?)
警戒しつつ扉を見やる。確か昨日アンジェが訪ねて来たのも今頃だったはずだ。うんざりしながら、煙草を咥えたままで出迎えに行った。
「なんの用だよ、アンジェ」
ドアを開けてぞんざいに言う。そこにいたのはアンジェではなかった。
「ユアン・・・」
願って止まなかった、愛しのユアンが立っている。それもなぜか枕を抱いて。
「あの、今日はこっちで寝ても良いですか?」
恐る恐るという風に尋ねる。
「アンジェさんが、リギィの介抱は自分がやるからって。僕はブラムの部屋に泊れって言われて」
しょんぼりと肩を落とす。とどのつまり、ユアンは追い出されてしまったらしい。
アンジェなりに責任を感じたのか、それともユアンに意地悪をしたかったのかは不明だが、ブラムにとってはたなぼたラッキーだ。
「ベッドもデカいし、二人で寝るくらい余裕だろ」
ニッと笑って招き入れる。ユアンは安堵したように微笑んだ。
(あのジュース、俺が飲まなくて助かったな。リギィには悪いけど)
早速枕を並べているユアンをぼんやりと眺めて密かに思う。如何に薬を盛られたとしてもアンジェに欲情はしないが、相手がユアンなら話は別だ。お子様のリギィでさえあの様だったのだから、もしもブラムが飲んでいたとしたら、
(それこそ、発情期の獣状態ってな)
シャレにならないと苦笑しつつ、開けた窓に向かって煙を吐き出した。
「ホントに大きなベッドですね」
ユアンが感心したように言う。
「だよな。一人だと広すぎたくらいだ」
背を向けたままでブラムもしみじみと頷いた。
「昨夜は一人だったんですか?」
「そりゃそうだろ」
ユアンの声が思いがけず近いことに気付く。
そして次の瞬間、背中にふわりとした温もりを感じた。
「ゆ、ユアン?」
ユアンが寄り添っているのだと分かり、ブラムは戸惑う。いつもブラムからは抱きついているが、ユアンがこんな風に触れてくるのは珍しい事だ。
「部屋に来るの、アンジェさんの方が良かった?」
ポツリとユアンが問う。ブラムが扉を開けてすぐにアンジェの名前を呼んでしまった所為だろう。
「そんなわけないだろ」
きっぱりと言ってのける。ユアンはブラムの背に額をつけて、消え去りそうな声で言った。
「僕・・・アンジェさんに嫉妬しました」
それは確かにユアンの声で発せられた言葉。驚きのあまり、ブラムは咥えていた煙草を落とした。
「熱っ!!」
「えっ?」
ブラムの大声に驚いたユアンが慌てて離れる。煙草の火は手の甲にクリティカルヒット。おまけに反対側の手のひらまで火傷した。カーペットを焦がすわけにはいかないという咄嗟の判断の賜物だ。
「大丈夫ですか?」
ユアンがオロオロしながらブラムの顔を覗き込む。ブラムは灰皿に煙草を押し付け、手に付いた灰を払ってからユアンに向き直った。
「ビックリし過ぎた」
照れ隠しも相まってバツの悪そうに言う。ユアンはクスクスと笑った。
「僕もビックリしました。嫉妬なんて、生まれて初めてですから」
ブラムの手を取り、暖かい光を放って火傷を治す。火傷がきれいに治ったことを確かめてから、銀色の瞳は再びブラムを捉えた。
「ブラムといると、初めてのことばかりですね」
向けられたのは、蕩けるような極上の微笑み。引き寄せられずにはいられない、特別な甘さがそこにはあった。
「ブラム?」
ユアンの身体を思い切り抱きしめる。
「お前可愛過ぎ」
不思議そうにしているユアンの髪をゆっくりと撫で、よりいっそう抱く力を強めた。ユアンも少し躊躇うようにしながらブラムの背に腕を回す。
「ね・・ブラム」
暫しの間互いの体温を噛み締めた後で、不意にユアンが体を離す。少しばかり言い淀むような素振りを見せてから問いかけた。
「アンジェさんとキス、したの?」
「え゛」
責める訳ではないが、何処か拗ねているような面持ちだ。あの時のアンジェの言葉はやはり聞こえていたらしい。
(あの野郎・・・)
密かに頭を抱える。今更ながらにアンジェが恨みがましく思えた。
「不意打ち食らっただけだよ。あんなのしたうちに入らねーって」
「・・・・」
弁解するように言ってみるが、ユアンは黙ったままブラムを見つめるのみ。やましい気持ちがある訳でもないのに、何だか嫌な汗が滲んできた。
「油断してた俺も悪いけどな。ホントに別に・・・」
なんでもないのだと伝えようとするが、ユアンの顔が目前に迫ったため言葉を止めた。ほんの少し触れるだけですぐに離れて行ってしまったが、下唇に感じた柔らかい感触は紛れもなくユアンの唇だ。
「ホントに油断してますね」
少しばかり眉を顰め、わざと意地の悪い言い方をする。そしてブラムから背を向けて離れてしまった。
(今日のユアンは心臓に悪いな)
余韻の残る唇に触れ、ふっと笑みを漏らす。
アンジェにされたものと比べれば、子供の挨拶程度の軽い口付けだ。けれどブラムにとっては何より重い意味を持つ。
「コラ」
ユアンに歩み寄り、後ろからギュッと抱きすくめる。近づいて見れば、ユアンは耳まで赤く染まっていた。
「不意打ちじゃ、したうちに入らねーって言ってんだろ」
囁きながら、熱を帯びた耳元にキスを落とす。できる限りの穏やかな手つきでユアンの頬に触れてこちらを向かせ、徐々に顔を近付けた。今度は一瞬で離れてしまわないよう、ゆっくりと唇を重ねた。ユアンの長い睫が震えて、ブラムを擽る。
「こういうのも、初めてか?」
いったん唇を離し、再び正面から向き合って問いかける。
ユアンはそっと頷いた。高揚した白い肌が、潤んだ銀色の瞳が可愛らしくてたまらない。
ブラムは吸い寄せられるように再びユアンの唇を塞いだ。
「・・っ・・ん・・」
ゆっくりと舌を差し入れ、怯えたように震えるユアンの舌に絡める。ユアンは戸惑いながら、それでも懸命にブラムを受け入れていた。キスを交わしながらも徐々にベッドへと誘う。
このまま押し倒してしまおうというブラムの思惑は、残念ながら叶わなかった。
コンコン、コンコン。
ノックする音が虚しく響く。
(ウソだろ)
硬直するブラム。
しかも、
「ブラム~、一緒に寝よ~」
「ユアン~、一緒に寝よ~」
聞こえてきたのはレナとラウルの無邪気な呼び声。これは流石に無視できない。
「あのね、アンジェが教えてくれたんだよ」
「ブラムとね、ユアンが一緒に寝るから、レナとラウルも一緒に寝たらって言ったの」
部屋に招き入れると、レナとラウルは口々に言った。色違いのパジャマと、にぱっと笑顔が実に無垢で可愛らしい。
だがブラムは、
(あいつの差し金か)
アンジェが意図的に邪魔をしたのだと分かり、密かに歯ぎしりをした。
なまじ良い雰囲気だったために悔しさもひとしお、欲求不満もひとしおというものだ。
「それじゃあ皆で並んで寝ましょうね」
「「うん!」」
すっかりいつも通りのユアンに戻ってしまったようだ。レナとラウルが持参してきた枕を並べ、いそいそと寝床の準備をしている。
(ま、いいか。今はこれで)
楽しそうな三人にブラムは苦笑。そっと息をつき、ようやく並び順の決まったらしいベッドに入ることにした。
***
翌朝。部屋の外が何やら騒がしく、ブラムは不本意ながらに起こされることとなった。
(一体何の騒ぎだよ?)
重たい瞼を渋々持ち上げると、ユアンの寝顔が思いがけないほどの至近距離にあった。
昨晩ブラムの両側にはレナとラウルがいたはずなのだが、早朝稽古をしていると言っていたし、既に起きて行ったのだろう。早起きで結構なことだ。
(なんか起きたくねぇな)
じっくりとユアンを見つめ、頬を緩ませる。表の様子は気になるのだが、この一時を終わらせるのは惜しい。
(昨日のあれは夢でも妄想でもねぇ・・・よな?)
朝日に照らされて輝く銀色の髪をそっと撫でる。ユアンの薄く開かれた唇を見れば、昨夜の甘やかな感触が蘇ってくるようだった。
「・・ブラム?」
長い睫が揺れ、ゆっくりと瞳が開かれる。ぼんやりとした表情でブラムを見つめ、徐々に蕩けるような笑顔に変わっていった。
「悪い。起こしたか?」
髪に触れていた手を放し、バツの悪そうに尋ねる。ユアンは首を振り、ふわりとブラムに身を寄せた。
「ちょっとだけ、寝坊したい気分です」
頬が仄かに赤く染まり、それを隠すようにブラムの胸元へと顔を埋める。なんとも幸せな瞬間だ。
けれど残念な事に、廊下から聞こえる足音が徐々に近づいて来ていた。
「あの足音は、リギィだな」
名残惜しい心地がしながらも渋々起き上り、溜息と共に呟く。
「何かあったんでしょうか?」
ユアンも表の騒がしさには気づいていたらしい。
ブラムが朝の一服を使用と立ち上がると、案の定のリギィが部屋の中へ飛び込んできた。
「ブラム、大変だ!」
血相を変えてブラムに駆け寄る。朝っぱらから元気の良いことだ。すっかり具合も良くなったらしい。
「一体何事だよ?」
ブラムはげんなりしつつ煙草を咥える。
「ユアンがいねぇんだ!!」
リギィは叫んだ。朝起きて、隣のベッドにユアンがいないことに驚いたのだろう。
「僕ここにいますよ」
「えっ!?」
ユアンがひらひらと手を振って見せれば、大きな目を殊更見開く。耳としっぽもピーンと立った。
「なんだよ、そんなことで騒いでんのか?」
呆れ返るブラム。リギィは慌ててかぶりを振った。
「それもだけど、それだけじゃないんだよ! 警邏隊が来るんだ!」
バタバタを手を振りまわして必死に危機感を伝える。
警邏隊は教会と城の双方の統治下にある地方機関。つまりはユアンとブラム、二人ともにとっての大ピンチではないか。
「なんでそんなもんが来るんだよ?」
流石のブラムも些か焦る。
「団長がやらかしたんだよ。昨日の大食い対決で、客に賭けさせてたらしい」
アンジェがひょっこり顔を出し、頭を抱えながら答えた。その手にはリギィとユアンの荷物が持たれている。
「ブラム達は裏口から逃げて。団長が、客人のアンタたちを巻き込むわけにはいかないってさ」
リギィとユアンに荷物を手渡し、テキパキとした口調で言う。
「とんでもねぇ団長さんだな」
「返す言葉もないよ」
荷物を受け取りながらブラムがぼやく。アンジェもため息を漏らした。
大急ぎで旅支度を終えて裏口に行くと、ジョニスが待ち構えていた。
「バタバタとした別れになって残念だねぃ。ユアンちゃん、これ選別だよ」
嘆くように言いながら、ユアンに風呂敷包みを渡す。
「毎晩これを着てボクのことを思い出しておくれよぉ~」
包みの中身はジョニスお手製の寝巻だという。芝居がかった仕草で別れを惜しみ、ユアンの手を握ったり肩を抱いたりと好き放題だ。
「あ、ありがとうございます」
苦笑するユアン。
「よーし、急ぐぞ」
ブラムはジョニスから引き剥がすようにユアンの手を引くが、一難去ってはまた一難。今度はアンジェがブラムに抱きついた。
先ほどまでの真剣な表情が嘘のように、しなを作って猫なで声を出す。
「次会ったときは熱い夜を過ごそうね」
迫ってくる唇。ブラムがそれを押し返す前に、ユアンがブラムの袖を引っ張った。
「・・・」
「・・・」
引き離されたアンジェはユアンをギロリと睨む。ユアンは困惑したような表情を浮かべて、それでもじっとアンジェを見返した。
二人の間には小さな火花が散っている。
「も、もう!さっさと行こうってば!!」
二人の間に割って入ったのはリギィだ。
その勇気ある行動にブラムは内心拍手を送った。
「あ~あ、行っちゃった」
三人の姿が見えなくなり、アンジェが残念そうに言う。
「寂しくなるねぃ」
ジョニスもやれやれと肩を竦めた。
「さーて団長の尻拭いだ」
ぼやきながら警邏隊の来ている表玄関へと向かうアンジェ。
それを見送った後で、ジョニスはジャケットの内ポケットから懐中時計を取り出した。
スイッチを押すと、時計の文字盤だったものがぐにゃりと歪む。
「どーも、ボクです」
渦を巻く文字盤に向かって呟くと、ザザザッという音の後で相手からの応答があった。
『・・・ザザ・・・どう・・も・・ザザザ』
通信の初めはいつも雑音がひどい。
「今こちらを出て行かれましたよ。やはりロザリア様は近衛騎士団長と共にいらっしゃる。おまけに獣人族の少年も一緒ね」
聊か早口で必要な情報を一気に伝える。
『・・やはり・・・・彼らが・・ザザ・・・騎士団長殿は・・本物に間違い・・・ない・・か? 』
徐々に雑音が晴れて相手の声がはっきりと聞こえ始める。
「間違いないね。ちゃんと風呂場で確認した。リングファット王家の紋章がくっきりあったよぉ」
男の風呂を覗くのは二度と嫌だと軽口を付け加えれば、相手は少し笑ったようだ。
『報告・・感謝しますよ。ジョニス司祭・・・ザザザ・・』
ブツンという音とともに通信が切れる。文字盤の歪みが直り、元通りのただの時計に戻った。
「感謝されても嬉しくないねぃ」
ふーっと溜息を洩らす。
「ごめんねぃ、ユアンちゃん」
もはや届かない相手へと呟いた。
「すべてはロザリア様のために」
遠い目をして、懐中時計を懐へと仕舞い込む。時計の裏側には薔薇の紋章が象られていた。
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