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旅と馴れ初め

馬車の一夜

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「誰ですか…」
「だれだろう。人じゃないと思う。」
実際、破壊と破滅とイナゴをもたらす大悪魔なので人ではないという彼女の目星は合っていた。
「その曖昧な返事は…」
疑問を更にぶつける。
「私は今産まれたのです。」
「はあ?」
「今そこで私という魔物が産まれたのです。多分。」
「兎に角魔物なら私を襲って魔王城にでも連れて行くのが筋では?」
少女はこの世界の常識であることを朧に問い詰める。
「魔王って誰?魔王が名前なの?〇〇魔王なの?そこはっきりしようぜ?」
という朧の気の抜けた返しに少女は不思議に思う。また、今更だが魔物に助けられたということを自覚したのか少女の心に怒りの火が灯り始めた。
「何なんですか…貴方のその自由な考え方は。貴方の仲間に殺された人が居るんですよ?関係無いなんて顔はさせませんッ!どうせなら魔物として私を殺してくれたほうが……」
「駄目だよ。殺してくれなんて言ったら親が悲しむぞ?」
なるべく優しく説教するくらいの気持ちで言ったその一言は
「私の親は魔物に殺されたのよ…」
地雷でした。
朧は自責の念で下を噛んだ。
「取り敢えずさ、目隠しと手錠は外させてよ。」
と、椅子にの転んでいる少女にツッこむ。
「どうせ、」
と、少女が言い切る前に朧は爪で手錠と目隠しの布を切る。晴れて少女は開放されたわけである。
「は、はあ?」
意味がわからないという様子ではじめて見る朧の顔を確認する。朧も少女の顔をのぞき込む。お互いに見合う体制となり、朧が先に口を開いた。
「はじめまして。名前は?」
朧が見た少女の感想は、くっそかーわいーー!であった。幼い美少女は可愛いマーン!
「教えるわけ無いでしょう?襲われるかもしれない者に。」
舌っ足らずな口早で拒否をする少女。
そんな少女に朧はある提案をする。
「明日の朝まで君が生きてたら名前教えてよ。家なんてこの近くに無いだろうし、この馬車で車中泊でしょ?」
そんな彼女はの提案にどうせ死ぬならという気持ちで少女は言う。
「いいですよ?私の全財産かけます。貴女は私を殺します。」
「私は賭けるものがないんでね、ゴミンゴミン。」
「はぁ…」
と少女は諦めの溜め息をつき、もう寝ようと再び椅子の上で目を閉じる。
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