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ニコライの独り言
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フィオラはごろごろとベッドに転がっていた。
ニコライの言質は取った。
朝食を終えた後、何か言いたそうなヒューゴが何か言い出す前に自室に戻って来たのである。
そして今、我が物顔でベッドに転がり二度寝を試みようとしているところだった。
「……だって、何もしなくていいみたいだし……」
何となく言い訳がましい独り言を呟くのは、レイが恨みがましい表情でフィオラを見ているからだ。
『それにしては、不貞腐れているように見えますが?』
「何だよ、それ?そんなわけないじゃん。何もしなくていいんだぞ?嬉しいよ」
そうは言ってみたが、もやっとしたものが胸に残っているのは事実。食べられない草を食べた時の様な気持ち悪さがあった。
『まあ、そうですよね。でも、これで、私のお願いも叶え易くなりましたね』
「あ!そうだった」
『……忘れてましたね?』
レイが、すっと目を細めた。
そうだ。自分には、何やらよく分からないものを探す。という使命があった。
いつもなら、張り切って外に出て行こうとするフィオラだったが、今日はどうにも気分が乗らない。
そして、それはレイにも伝わったようだ。
『そんなに気落ちするなら、なぜ嘘などついたのです?』
「……嘘?」
『彼と口論になってしまったから落ち込んでいるのではないのですか?最初から赤の魔女は自分だと伝えていれば、こんなややこしい事にはならなかったのでは?』
……ややこしい事。
フィオラは、むぅ。と、下顎を突き出す。
確かにそうなのだが、フィオラにも言いたくなかった理由はある。
結婚したくないという事はもちろんだが、何よりも、相手が求めているのは自分ではない。
「だって、ライが結婚したいのは魔女だろ?正体を知って、がっかりされたら……それはそれで、ムカつくし……」
だから、言わなかっただけ。嘘はついてない、はず……多分。
『……彼がいつ、そう言ったのでしょうねぇ……まあ、おかしなところで頑固なのは、お互い様のようですから、私は何も言いませんよ』
「……何の話?」
『素直にならないと、取り返しがつかなくなる事もある。と、いう話です』
「そんな話だったっけ?……って、いうか、落ち込んでなんかないぞっ?!」
勝手に落ち込んでいることにされている。
フィオラとしては、外に出る事に乗り気になれないだけで、落ち込んでいるわけではない。レイは何を勘違いしているのだろう。
そんな言われ方をしたら、まるでニコライに突き放されて落ち込んでいるみたいではないか。
と、ここまで考えて、フィオラは頭を叩かれた様な衝撃を受ける。
「ち、違うっ!別にライにどう思われてたって、どうでもいいし!」
『……そんなにムキにならなくても、分かりましたよ』
「何だよっ!本当だぞっ?!」
『はい、はい』
「『はい』は、一回だって、自分でいつも言ってんじゃん!」
によによしているレイに腹が立ち、フィオラの顔はますます赤くなっていった。
部屋のドアがノックされ、腹立ち紛れに返事をする。
「……失礼するぞ」
バツの悪そうな顔で部屋に入って来たのは、噂のニコライだった。
ノックしたのがミーシャかヒューゴだと思っていたフィオラは、慌ててベッドから飛び起きる。
「な、なに……?」
「いや……話し声がしたような気がしたから、誰かいるのかと思ってな」
ニコライは部屋に入るなり中を窺う様にきょろきょろと見渡した。
「あー……、独り言!私、独り言が多いんだよ!ほら、独りでいた時間が長かっただろ?!」
間違ってはいない。
ニコライは訝しげな様子だったが、部屋にフィオラが一人なのを確認すると納得したのか、小さく頷いた。
「で、何?今更、やっぱりマナーを学べって言われても、やんないぞ?」
「いや、その話ではなく……俺は暫く仕事でここを離れる。一応、言っておこうと思ってな」
「あ……そうなんだ」
椅子に座る事なく、フィオラと目を合わせる事もなく、ニコライが言う。
喧嘩したわけでもないのに、フィオラも何となく気不味い。
「一ヶ月くらいで戻る予定だが、俺の不在中に何かあればヒューゴに言ってくれ」
出来ればヒューゴも連れて行って欲しい。と思ったが、そうはいかないのだろう。大人しくフィオラは頷いた。
「それと、赤の魔女の事なんだが……」
「赤って言うな!」
思わずカッとなって言ってしまってから「ごめん」と、慌てて口を噤んだが、もう遅い。 驚いたニコライが目を見開いている。
「そう、だな……赤の魔女も、そう呼ばれる事を嫌っていたな……」
ニコライは、フィオラには聞こえない程の声でもごもごと言うと、気を取り直してフィオラと目を合わせた。
「ご、ごめん……あの、特に、深い意味はなくて……」
怒らせたと思って謝るフィオラに、ニコライは首を横に振る。
「いや、大丈夫。それより……もし、俺の不在中に屋敷の外に出るような時は……ウチの団員を護衛として連れて行ってくれ」
「ウチの……団員?」
「ああ、ここには、魔法騎士団の精鋭を連れて来ている」
「ここに?……えぇと、そういえば、公爵の仕事って……?」
「王宮魔法騎士団の団長だ」
「え?」
ニコライに全く興味がなかったと言っているようなものだが、ニコライはそれにも特に怒る様子はなかった。
もしかして、ライって、偉い人―――――?
「いいか、絶対に一人で外に出るなよ?」
それどころか、本当にフィオラを心配しているようにも見える。
あれ?でも、それって、職権乱用じゃ―――――?
フィオラも、おかしいと思っていた。
使用人は少ないと聞いていたのに、門には怖そうな騎士が立っていたし、玄関にもいた気がする。 きっとあの人達が、ニコライの言う団員なのだろう。
「それと、もし……疾風の魔女に会うことがあったら……姿を隠すように伝えてくれ」
「え?かく、す……?何で?」
突拍子もない伝言に問い返した。
誰から?
何で隠れなくちゃいけないんだ??
じわじわとニコライの目の下が赤みを帯びていく。
聞きたい事は色々あったが、ニコライのその真剣な眼差しに、フィオラは思わず頷いていた。
「それと、マナーを学んでもらうのは、結婚してからでもいい……」
ニコライのもごもごとした最後の呟きは、フィオラの耳には届いていなかった。
ニコライの言質は取った。
朝食を終えた後、何か言いたそうなヒューゴが何か言い出す前に自室に戻って来たのである。
そして今、我が物顔でベッドに転がり二度寝を試みようとしているところだった。
「……だって、何もしなくていいみたいだし……」
何となく言い訳がましい独り言を呟くのは、レイが恨みがましい表情でフィオラを見ているからだ。
『それにしては、不貞腐れているように見えますが?』
「何だよ、それ?そんなわけないじゃん。何もしなくていいんだぞ?嬉しいよ」
そうは言ってみたが、もやっとしたものが胸に残っているのは事実。食べられない草を食べた時の様な気持ち悪さがあった。
『まあ、そうですよね。でも、これで、私のお願いも叶え易くなりましたね』
「あ!そうだった」
『……忘れてましたね?』
レイが、すっと目を細めた。
そうだ。自分には、何やらよく分からないものを探す。という使命があった。
いつもなら、張り切って外に出て行こうとするフィオラだったが、今日はどうにも気分が乗らない。
そして、それはレイにも伝わったようだ。
『そんなに気落ちするなら、なぜ嘘などついたのです?』
「……嘘?」
『彼と口論になってしまったから落ち込んでいるのではないのですか?最初から赤の魔女は自分だと伝えていれば、こんなややこしい事にはならなかったのでは?』
……ややこしい事。
フィオラは、むぅ。と、下顎を突き出す。
確かにそうなのだが、フィオラにも言いたくなかった理由はある。
結婚したくないという事はもちろんだが、何よりも、相手が求めているのは自分ではない。
「だって、ライが結婚したいのは魔女だろ?正体を知って、がっかりされたら……それはそれで、ムカつくし……」
だから、言わなかっただけ。嘘はついてない、はず……多分。
『……彼がいつ、そう言ったのでしょうねぇ……まあ、おかしなところで頑固なのは、お互い様のようですから、私は何も言いませんよ』
「……何の話?」
『素直にならないと、取り返しがつかなくなる事もある。と、いう話です』
「そんな話だったっけ?……って、いうか、落ち込んでなんかないぞっ?!」
勝手に落ち込んでいることにされている。
フィオラとしては、外に出る事に乗り気になれないだけで、落ち込んでいるわけではない。レイは何を勘違いしているのだろう。
そんな言われ方をしたら、まるでニコライに突き放されて落ち込んでいるみたいではないか。
と、ここまで考えて、フィオラは頭を叩かれた様な衝撃を受ける。
「ち、違うっ!別にライにどう思われてたって、どうでもいいし!」
『……そんなにムキにならなくても、分かりましたよ』
「何だよっ!本当だぞっ?!」
『はい、はい』
「『はい』は、一回だって、自分でいつも言ってんじゃん!」
によによしているレイに腹が立ち、フィオラの顔はますます赤くなっていった。
部屋のドアがノックされ、腹立ち紛れに返事をする。
「……失礼するぞ」
バツの悪そうな顔で部屋に入って来たのは、噂のニコライだった。
ノックしたのがミーシャかヒューゴだと思っていたフィオラは、慌ててベッドから飛び起きる。
「な、なに……?」
「いや……話し声がしたような気がしたから、誰かいるのかと思ってな」
ニコライは部屋に入るなり中を窺う様にきょろきょろと見渡した。
「あー……、独り言!私、独り言が多いんだよ!ほら、独りでいた時間が長かっただろ?!」
間違ってはいない。
ニコライは訝しげな様子だったが、部屋にフィオラが一人なのを確認すると納得したのか、小さく頷いた。
「で、何?今更、やっぱりマナーを学べって言われても、やんないぞ?」
「いや、その話ではなく……俺は暫く仕事でここを離れる。一応、言っておこうと思ってな」
「あ……そうなんだ」
椅子に座る事なく、フィオラと目を合わせる事もなく、ニコライが言う。
喧嘩したわけでもないのに、フィオラも何となく気不味い。
「一ヶ月くらいで戻る予定だが、俺の不在中に何かあればヒューゴに言ってくれ」
出来ればヒューゴも連れて行って欲しい。と思ったが、そうはいかないのだろう。大人しくフィオラは頷いた。
「それと、赤の魔女の事なんだが……」
「赤って言うな!」
思わずカッとなって言ってしまってから「ごめん」と、慌てて口を噤んだが、もう遅い。 驚いたニコライが目を見開いている。
「そう、だな……赤の魔女も、そう呼ばれる事を嫌っていたな……」
ニコライは、フィオラには聞こえない程の声でもごもごと言うと、気を取り直してフィオラと目を合わせた。
「ご、ごめん……あの、特に、深い意味はなくて……」
怒らせたと思って謝るフィオラに、ニコライは首を横に振る。
「いや、大丈夫。それより……もし、俺の不在中に屋敷の外に出るような時は……ウチの団員を護衛として連れて行ってくれ」
「ウチの……団員?」
「ああ、ここには、魔法騎士団の精鋭を連れて来ている」
「ここに?……えぇと、そういえば、公爵の仕事って……?」
「王宮魔法騎士団の団長だ」
「え?」
ニコライに全く興味がなかったと言っているようなものだが、ニコライはそれにも特に怒る様子はなかった。
もしかして、ライって、偉い人―――――?
「いいか、絶対に一人で外に出るなよ?」
それどころか、本当にフィオラを心配しているようにも見える。
あれ?でも、それって、職権乱用じゃ―――――?
フィオラも、おかしいと思っていた。
使用人は少ないと聞いていたのに、門には怖そうな騎士が立っていたし、玄関にもいた気がする。 きっとあの人達が、ニコライの言う団員なのだろう。
「それと、もし……疾風の魔女に会うことがあったら……姿を隠すように伝えてくれ」
「え?かく、す……?何で?」
突拍子もない伝言に問い返した。
誰から?
何で隠れなくちゃいけないんだ??
じわじわとニコライの目の下が赤みを帯びていく。
聞きたい事は色々あったが、ニコライのその真剣な眼差しに、フィオラは思わず頷いていた。
「それと、マナーを学んでもらうのは、結婚してからでもいい……」
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