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契約書
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「今回の件ですが、双方の話を確認した結果。彼を無期限の謹慎とすることに決定いたしました」
何故か意気消沈しているニコライに代わり、ヒューゴが告げた。
「……謹慎?」
ほぇ?と、フィオラは、間の抜けた顔でヒューゴを見る。
婚約の契約を思い出したお陰で、今度は事件を忘れそうになっていたフィオラである。
しかし、嘘をついただけで謹慎とは、なんとも気の毒だ。しかも無期限とは。
「でも、私に直接なにかしたわけじゃないのに?」
「危険思考が認められましたので」
危険思考とは、なんぞや。
フィオラは解説を求めたが、ヒューゴはそれ以上は何も教えてくれなかった。
「ねぇ、私も、キンバリーに話を聞きたいんだけど……」
「必要ない!」
フィオラの言葉に被せるように、横からニコライが否定する。その勢いに、フィオラは目をぱちぱちとさせた。
気の毒だとは思うが、どうしてあんな言動を取ったのか。フィオラには、どうしても理解出来なかった。
人は悪意を持ちながら、その悪意を向ける相手に、あんなに好意的に接する事が出来るのか。
だから直接聞いてみたかったのだが、ニコライに強く言われて、口を閉じた。
ニコライを窺うと、目の下に出来たクマの下辺りが赤く染まっている。
えっ、そんなに怒るほど……?
フィオラと目が合うとニコライは、ふいっと横を向いてしまった。その時に見えた耳も赤くなっている。
もしかしたら、キンバリーがよほどニコライを怒らせることを言ったのかもしれない。
……こっそり、会いに行くか。
これ以上、この話題はしない方が良さそうだ。
無駄に怒らせても仕方ない。と、フィオラは表立っては動かないことに決めた。
「……それは、そうと」
こほん。と、ニコライが、ひとつ咳払いをした。
「フィオラ。君には一緒に王宮に行ってもらうから、そのつもりで」
「はい……はぁあっ?!何で、急に……王宮って……王宮って、王様のいるところ……だろ?!」
ニコライの唐突な話に、フィオラは当たり前の確認をしてしまうほど動揺を隠せなかった。
「何も、今すぐではない。二週間後だ」
「無茶言うな!」
二週間後とは今すぐと同義ではないか。フィオラは口をぱくぱくさせた。
ニコライは祈りのポーズのまま、当たり前の様にフィオラに命令を下す。その姿はどこかの司令官の様だった。
「王宮に、何しに行くんだよ!私はマナーとか出来ないぞ?!」
「国王が俺の婚約者に会いたいと言っている。マナーは……いや、寧ろ、今のままの方がいいだろう」
「はっ?婚約者に会いたい??何だそれ!そんな理由?……そ、そうだ!そんな契約は……していない!」
フィオラは、何か回避する方法はないかと願望を言ってみた。
マナーはいらない。みたいなことを言っているが、相手は国王である。そんな訳がないのだ。
もし仮に少しでも不敬なことをしてしまえば、すぐに死刑だ。そんな事にでもなったら、たまったもんではない。
「……公の場で、乙が婚約者を伴わなければならない場合、甲はその要求に応じなければならない」
ヒューゴが、徐ろに取り出した紙を読み上げる。
最初に話し合いが行われた後日に作成されたにもかかわらず、フィオラが適当に署名した契約書であった。
「国王からの召喚要請も、断れないものであり公の場に相当します。因みに、この書面上の乙は旦那様、甲はフィオラ嬢で作成しております」
ヒューゴは、そう付け加えると顔を上げた。
つまり、契約はしていたのだ。
フィオラは、そうだろうなと半ば諦めてはいたが、がっくりと肩を落とした。
何故か意気消沈しているニコライに代わり、ヒューゴが告げた。
「……謹慎?」
ほぇ?と、フィオラは、間の抜けた顔でヒューゴを見る。
婚約の契約を思い出したお陰で、今度は事件を忘れそうになっていたフィオラである。
しかし、嘘をついただけで謹慎とは、なんとも気の毒だ。しかも無期限とは。
「でも、私に直接なにかしたわけじゃないのに?」
「危険思考が認められましたので」
危険思考とは、なんぞや。
フィオラは解説を求めたが、ヒューゴはそれ以上は何も教えてくれなかった。
「ねぇ、私も、キンバリーに話を聞きたいんだけど……」
「必要ない!」
フィオラの言葉に被せるように、横からニコライが否定する。その勢いに、フィオラは目をぱちぱちとさせた。
気の毒だとは思うが、どうしてあんな言動を取ったのか。フィオラには、どうしても理解出来なかった。
人は悪意を持ちながら、その悪意を向ける相手に、あんなに好意的に接する事が出来るのか。
だから直接聞いてみたかったのだが、ニコライに強く言われて、口を閉じた。
ニコライを窺うと、目の下に出来たクマの下辺りが赤く染まっている。
えっ、そんなに怒るほど……?
フィオラと目が合うとニコライは、ふいっと横を向いてしまった。その時に見えた耳も赤くなっている。
もしかしたら、キンバリーがよほどニコライを怒らせることを言ったのかもしれない。
……こっそり、会いに行くか。
これ以上、この話題はしない方が良さそうだ。
無駄に怒らせても仕方ない。と、フィオラは表立っては動かないことに決めた。
「……それは、そうと」
こほん。と、ニコライが、ひとつ咳払いをした。
「フィオラ。君には一緒に王宮に行ってもらうから、そのつもりで」
「はい……はぁあっ?!何で、急に……王宮って……王宮って、王様のいるところ……だろ?!」
ニコライの唐突な話に、フィオラは当たり前の確認をしてしまうほど動揺を隠せなかった。
「何も、今すぐではない。二週間後だ」
「無茶言うな!」
二週間後とは今すぐと同義ではないか。フィオラは口をぱくぱくさせた。
ニコライは祈りのポーズのまま、当たり前の様にフィオラに命令を下す。その姿はどこかの司令官の様だった。
「王宮に、何しに行くんだよ!私はマナーとか出来ないぞ?!」
「国王が俺の婚約者に会いたいと言っている。マナーは……いや、寧ろ、今のままの方がいいだろう」
「はっ?婚約者に会いたい??何だそれ!そんな理由?……そ、そうだ!そんな契約は……していない!」
フィオラは、何か回避する方法はないかと願望を言ってみた。
マナーはいらない。みたいなことを言っているが、相手は国王である。そんな訳がないのだ。
もし仮に少しでも不敬なことをしてしまえば、すぐに死刑だ。そんな事にでもなったら、たまったもんではない。
「……公の場で、乙が婚約者を伴わなければならない場合、甲はその要求に応じなければならない」
ヒューゴが、徐ろに取り出した紙を読み上げる。
最初に話し合いが行われた後日に作成されたにもかかわらず、フィオラが適当に署名した契約書であった。
「国王からの召喚要請も、断れないものであり公の場に相当します。因みに、この書面上の乙は旦那様、甲はフィオラ嬢で作成しております」
ヒューゴは、そう付け加えると顔を上げた。
つまり、契約はしていたのだ。
フィオラは、そうだろうなと半ば諦めてはいたが、がっくりと肩を落とした。
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