奴隷落ちを免れた令嬢は生きるために奮闘する。~いつかまた、アネモネの咲く丘で会いましょう〜

珠音

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生誕祭とは

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「さーぁ、忙しくなりますよぉー!!」 

 フィオラがニコライから王宮への召喚を命じられた後、ミーシャは元気よく拳を天に向かって突き上げた。もちろん、フィオラの部屋でだが。 
 フィオラが部屋に戻った途端、ミーシャのテンションが爆上がりしたので少し驚く。 

「何で?」 

 王宮に行くのはフィオラであって、ミーシャではない。何故ミーシャが忙しくなるのか。 
 しかも、忙しくなると言っている割に、ミーシャは楽しそうだ。 

 まあ、ミーシャが行ってくれてもいいけど。 

 他人事の様な雰囲気で自分を見ているフィオラに、興奮気味のミーシャは信じられないものを見る目で見返した。 
 どうにも二人の間には温度差があるようだ。 

「な、何でって……そりゃ、お嬢様が旦那様のパートナーとして、生誕祭に出席されるからです」 

「せいたんさい?……ナニソレ、オイシイノ?」 

「あはっ。お嬢様ったら、面白いですね!」 

 ミーシャは冗談として受け取ったらしいが、フィオラとしては本気であった。何も面白くない。 
 王宮に呼ばれた事実はあるが、それが何かの祭りだなんて聞いていない。 
 黙りこくるフィオラに、ミーシャが恐る恐る尋ねる。 

「えっ……お嬢様、もしかしてですけど……生誕祭をご存知でない?」 

「んー……、行事の類は、ちょっと……」 

 何しろフィオラが人間らしい生活をしていたのは、物心がつくかつかないかくらいまで。 
 母親が亡くなってからは、何かを教えてくれる人間は皆無。その母親ですら、教えてくれたのは生きる為に必要ことだけだった。
 世間ではどんな楽しい事が行われているかなど、フィオラが知る由もない。 
 失言に気付いたミーシャの顔が、さぁーっと青くなって行く。フォローの言葉が見付からないのか「あ」とか「う」とか口をぱくぱくさせていた。 

 まあ、レイがいたけど、レイも知らなかったんじゃないかなぁ~。 

 まあ、どうでもいいけど。「ね」と、フィオラは近くにいるレイを見上げた。 
 レイは、金魚のように口を動かして、赤くなったり青くなったりしているミーシャを面白そうに見ていたが、フィオラの視線に気付くと『ん?』と、小首を傾げた。 

「お嬢様、あの……その……お嬢様には、私がおります!旦那様だっていますし……ですからこれからは、いっぱい、お出掛け出来ます!」 

『誕生祭は、デンドロンの誕生日を祝うお祭りだそうですよ。知っていると思って、敢えて言うこともなかったのですが……フィオラは、祝いたかったですか?』 

「まさかの、知ってた?!」 

「え?」 

「え?」 

『……ん?』 

 レイの姿が見えない弊害が、今ここに。 
 発言が渋滞している。正直、二人同時に喋られると何を言っているか把握仕切れない。それが証拠に、今のミーシャの話はフィオラの耳に殆ど入って来なかった。
 しかしそれを知らないミーシャからしたら、フィオラは会話の難しい奇矯な振る舞いをする不思議ちゃんであるに違いない。 
 暫し、不思議な空気が流れた。

「あー……と、こほん。で、それに出席すると、何でミーシャが忙しくなるの?」 

 フィオラは、ミーシャの「わたし今、けっこう良いこと言ったつもりですけど?」の表情には全く気付く事なく強引に話を戻した。








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