奴隷落ちを免れた令嬢は生きるために奮闘する。~いつかまた、アネモネの咲く丘で会いましょう〜

珠音

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地蔵は佇む

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 王都に到着してから二日後の登城の日。 
 フィオラは朝早くから準備を余儀なくされていた。 

「えー!お嬢様、断わってしまったんですか?旦那様からのデートのお誘いを??」 

「えっ、でぇと??」 

 ミーシャに髪を結ってもらいながら、何気なく先日の話をしたら、ミーシャが素っ頓狂な声を上げた。 

「はぁ……もう、お嬢様ったら。きっと旦那様は、お嬢様と街へお出かけデートしたかったのですよ」 

 フィオラとしては、ミノーとのやり取りをするニコライの照れぶりを話したかっただけなのだか、いつの間にか話は別の方向へと舵を切っていた。 

「いや。でも、坊ちゃまが悪いですね!か弱い乙女と、ご自分の体力とを一緒にしてしまうなんて……お誘いするにもタイミングというものがあります!」 

「まあ……確かに。昨日あたりに誘ってくれても良かったですよね」 

 ミーシャだけでなく、リーナも一緒にフィオラの支度を手伝っていた。 
 話を聞きつけたリーナが「ふん!」と、鼻から大きく息を吐く。それに合わせてミーシャも大きく頷いた。 

「おおかた、一度フラれたものだから誘うのが怖くなったのでしょう。情けない」 

「え~、旦那様が。ですか?」 

 当のフィオラを差し置いて、二人の話は盛り上がって行く。 

「あの……さ、多分そんなんじゃないと思う」 

 デートとは恋人とか夫婦とか愛し合う二人が、何処かに出かけたりすることだとレイから教わった。 

 それじゃ、まるでライが私のことを好きみたいじゃないか。 

 本当の婚約者ではないことは伝えられないが、そう思われたらニコライも困るだろう。 
 盛り上がっているところに水を差すようで申し訳ないが、ここで誤解されると後々面倒な事になりかねない。 

「デートって、好き同士がするもんなんだろ?だから、違う」 

「「………」」 

 ミーシャとリーナが言葉を失ったようにぽかんとしてから、お互いに顔を見合わせ再びフィオラに目を向けた。 

「な、なにっ??何か変なこと言ったかな??」 

「ぁ……い、いえ……あっ!でもデートとは、お互いを知る為にするものでもありますよ?」 

「そっ、そうですっ!旦那様はお嬢様のことを、もっと知りたかったのだと思います!!」 

 取り繕うようにミーシャとリーナがへらへらっと笑う。 

「へー、そういうことか」 

 なんだ。デートって、違う意図もあるんじゃないか。 

 だったら別に、ニコライがフィオラにデートに誘ったとしてもおかしいことはないのかもしれない。
 ちゃんと教えといてよね。と、レイを見ると、彼は地蔵のような顔で佇んでいた。 

 


 坊ちゃま頑張れ!! 

 この時、リーナは思わず拳を握っていたという。









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