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グレゴールのお願い
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こつこつと二人分の足音が廊下に響く。 かつては謁見の間として玉座が置かれていたという宮。今は使われていないとはいえ、隅々まで掃除が行き届いているのか保存状態はとても良かった。
グレゴールは腰が曲がった老人とは思えない動きであちらこちらとフィオラを連れ歩いていた。
「いやぁ。こんなに楽しいのは久方ぶりですな。ああ、あの柱に刻まれているのは……」
だがしかし、古代文字はおろか、建物などにも興味のないフィオラにとっては苦痛な時間でしかない。 上機嫌のグレゴールとは裏腹に、いつ終わるともしれなくなっていた現状に陥ったフィオラはげんなりしていた。
「……走って逃げるか」
「フィオラ嬢、何か言いましたかな?」
思わず心の声が漏れていたが、都合の悪い言葉は聞こえない性分なのか本当に聞こえていないのか、グレゴールはどこ吹く風で先を歩いて行く。
「別に、何も……」
「ここが玉座の間だった場所ですよ」
フィオラが何か言ったのかなど興味はないのだろう。フィオラが返事をする前にグレゴールは既に別の話をしていた。
「……へー」
やけに広い部屋だ。玉座はもうなかったが、確かにグレゴールの言う通り、部屋の奥の床が一段高くなっていた。そこに椅子が置かれていたのだろう。床には綺麗な赤い絨毯が敷かれていた。
「ふーん。ここに玉座があったのかぁ~」
フィオラは、さも興味がある素振りで絨毯の上を歩く。
これっぽっちも興味はないし早く戻りたい一心だったが、穏便に事を済ませるにはそれがせめてもの礼儀だろう。
「良いものを見せてもらったよ、ありがとう。じゃあ、私はそろそろ行くよ。人を待たせてるんだ」
「そうか……それは、残念だな」
心底残念そうな声に振り返ると、まだ話足りないのかグレゴールはしゅんとしていた。
しかしフィオラとて、ずっと老人の相手をしているわけにはいかない。 「じゃ」と、来た道を戻ろうとグレゴールの横を通り過ぎようとした時、フィオラの体が何かに引っ張られた。見れば、グレゴールが泣きそうな顔でフィオラの腕を掴んでいる。
「え、と……なに?」
「私の研究の手伝いをしてもらえないだろうか」
「……は?急すぎないか?何で、私?」
「今の若者は古代語の研究など「古い」と、皆、別の研究をしたがる。先人の知恵を学ぶことの重要さを分かっとらんのだ。……情けない話だが、今では私一人で助手もおらん。フィオラ嬢が駄目というなら、フィオラ嬢に古代語を教えた教師を紹介してくれないだろうか」
「え、ぇー……」
よっぽど切羽詰まっているのか、グレゴールは「逃がさん」とばかりに、フィオラの手を両手でがっちりと握り込んだ。
一人では大変なのだろうと思うが、助手なんてなんだか面倒臭そうだ。しかし、レイを紹介しようにも、姿が見えないのでは話にならない。フィオラは頭を抱えた。
何も言わないフィオラを都合よく是と捉えたのか、グレゴールは期待のこもった瞳で見つめて頷いた。
「ありがとう!!」
「いやいやいや!言ってないし!手伝わないし、紹介も出来ないしっ!!」
なんて図々しい老人なんだ。少しでも同情した時間を返せ。
フィオラは強引にグレゴールの手を引き剥がそうとするが、思いの外グレゴールの力が強い。
「そこを、なんとか……古文書を読み合わせてくれるだけで良いから……ボレアス公爵には話を通すから……」
「しつこいな」
なおもグレゴールは食い下がる。 魔法で吹き飛ばしてやろうかどうしようかと思い始めた頃。部屋の扉が勢いよく開いた。
「何をしているっ!!」
怒声が響く。その声にグレゴールはびくりと飛び上がり、さっとフィオラから手を離した。
グレゴールは腰が曲がった老人とは思えない動きであちらこちらとフィオラを連れ歩いていた。
「いやぁ。こんなに楽しいのは久方ぶりですな。ああ、あの柱に刻まれているのは……」
だがしかし、古代文字はおろか、建物などにも興味のないフィオラにとっては苦痛な時間でしかない。 上機嫌のグレゴールとは裏腹に、いつ終わるともしれなくなっていた現状に陥ったフィオラはげんなりしていた。
「……走って逃げるか」
「フィオラ嬢、何か言いましたかな?」
思わず心の声が漏れていたが、都合の悪い言葉は聞こえない性分なのか本当に聞こえていないのか、グレゴールはどこ吹く風で先を歩いて行く。
「別に、何も……」
「ここが玉座の間だった場所ですよ」
フィオラが何か言ったのかなど興味はないのだろう。フィオラが返事をする前にグレゴールは既に別の話をしていた。
「……へー」
やけに広い部屋だ。玉座はもうなかったが、確かにグレゴールの言う通り、部屋の奥の床が一段高くなっていた。そこに椅子が置かれていたのだろう。床には綺麗な赤い絨毯が敷かれていた。
「ふーん。ここに玉座があったのかぁ~」
フィオラは、さも興味がある素振りで絨毯の上を歩く。
これっぽっちも興味はないし早く戻りたい一心だったが、穏便に事を済ませるにはそれがせめてもの礼儀だろう。
「良いものを見せてもらったよ、ありがとう。じゃあ、私はそろそろ行くよ。人を待たせてるんだ」
「そうか……それは、残念だな」
心底残念そうな声に振り返ると、まだ話足りないのかグレゴールはしゅんとしていた。
しかしフィオラとて、ずっと老人の相手をしているわけにはいかない。 「じゃ」と、来た道を戻ろうとグレゴールの横を通り過ぎようとした時、フィオラの体が何かに引っ張られた。見れば、グレゴールが泣きそうな顔でフィオラの腕を掴んでいる。
「え、と……なに?」
「私の研究の手伝いをしてもらえないだろうか」
「……は?急すぎないか?何で、私?」
「今の若者は古代語の研究など「古い」と、皆、別の研究をしたがる。先人の知恵を学ぶことの重要さを分かっとらんのだ。……情けない話だが、今では私一人で助手もおらん。フィオラ嬢が駄目というなら、フィオラ嬢に古代語を教えた教師を紹介してくれないだろうか」
「え、ぇー……」
よっぽど切羽詰まっているのか、グレゴールは「逃がさん」とばかりに、フィオラの手を両手でがっちりと握り込んだ。
一人では大変なのだろうと思うが、助手なんてなんだか面倒臭そうだ。しかし、レイを紹介しようにも、姿が見えないのでは話にならない。フィオラは頭を抱えた。
何も言わないフィオラを都合よく是と捉えたのか、グレゴールは期待のこもった瞳で見つめて頷いた。
「ありがとう!!」
「いやいやいや!言ってないし!手伝わないし、紹介も出来ないしっ!!」
なんて図々しい老人なんだ。少しでも同情した時間を返せ。
フィオラは強引にグレゴールの手を引き剥がそうとするが、思いの外グレゴールの力が強い。
「そこを、なんとか……古文書を読み合わせてくれるだけで良いから……ボレアス公爵には話を通すから……」
「しつこいな」
なおもグレゴールは食い下がる。 魔法で吹き飛ばしてやろうかどうしようかと思い始めた頃。部屋の扉が勢いよく開いた。
「何をしているっ!!」
怒声が響く。その声にグレゴールはびくりと飛び上がり、さっとフィオラから手を離した。
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