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Ⅹ 集まる想い
【閑話】私と妹君と その1
しおりを挟む裁判前の、とある一日のお話です。
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「久しぶりね、マリ。お帰りなさい」
客間に呼ばれて顔を出せば、そこには見知らぬ美女がいた。
「わからないかしら。ヘレンよ」
「え、あ……ヘレン、様!? あ、も、申しわけありません」
「謝らなくていいわ。それよりも落ち着いてちょうだい」
とてもではないが落ち着けない。ミュリエル様よりも少し凛とした極上の美女。あの小さくてかわいらしかったヘレンではないのだ。
あれから数年、ヘレン様は十三歳になられていた。
日本人の十三歳を思い浮かべてはいけない。欧米人の十三歳だ。それはもう大人っぽく、けれどまだ穢れていない初々しさがあり――これで惚れない男がいたら見てみたい。
「マリ?」
「あ、ご、も、申しわけ――」
「いいのよ。むしろ謝るのは私たちのほうだわ」
「え?」
「お母様かレイラ様から聞いていないかしら。あんなひどい裁判だと知ってたなら……ううん、裁判があると知っていたなら、絶対に止めたのに。言い訳にしかならないのはわかってるわ。でも、私たち、マリのクラスメイトを含めて、側にいた女性たちは誰一人として知らされなかったの。不甲斐ない私たちでごめんなさい。私、何もできなかったわ」
私は驚いた。てっきり、奥様はミュリエル様にかまっていて来なかったのだと思っていた。レイラ様たちにはそもそも愛想尽かされていると思っていたし。
「そう、だったんですね。でも、もとより裁判のことで皆さんを責めるつもりはありません。謝るなんてもってのほかです」
「でも、お父様も……」
侯爵様はあの場にいた。けれど、臣下である侯爵様にも止めることは叶わなかっただろう。諫言しようにも多くの貴族の目がある場所。不用意な発言は王族の権威を貶めたとして裁かれてしまう。
「お話くださりありがとうございます。私は気にしてませんから――」
とそのとき、部屋の外がバタバタと騒がしくなった。私もヘレン様も驚いてドアへと視線を向ける。
「ジャック、ジェームス! おバカなほうの私のミュリエルが帰ってきたって本当かい!? 今、どこだい!? ここか? いや、あっちの部屋か!?」
思わずヘレン様へと顔を向けると、ヘレン様は少し疲れた表情で額を押さえていた。
美人は困惑顔も美しい――なんて思うのは現実逃避が過ぎるだろうか。
「もしかして」
「ヴィンスお兄様、ね」
どうやら予想は間違っていないようだった。
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